・シノドス総会の全体会議で、10の課題検討グループの代表が作業の現状と見通しを説明

(2024.10.3  Vatican News   Salvatore Cernuzio)

   2日に行われたシノドス総会第2会期の初の全体会議では、教皇フランシスコが2月にさまざまなテーマの神学的および教会法的な側面を探求するために設置した10の検討グループのメンバーが、他の3つの委員会の代表者とともに、これまでの作業状況と今後の見通しについて説明した。

 これらのグループのそれぞれの主要テーマは、「教会における女性の役割と女性の助祭の可能性」「戦争による東方教会の消滅の危険性」「アフリカの一夫多妻主義者に対する司牧的アプローチ」「デジタル時代における福音の宣教」「司教と司祭の関係、そして神の民との関係:司教候補者の選出基準」「各国での教皇大使の活動に関する『シノドス』的視点とエキュメニカルな対話」など。

 総会第2会期の初回の全体会議は2日午後、教皇の冒頭講話とシノドス事務局長のグレック枢機卿およびシノドス総会総報告者のジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿によるスピーチで始まり、教皇が昨年2月に神学および教会法のレベルで特定のトピックを探求するために設置した10の検討グループの各代表者に発言の機会が与えられた。

 各グループの代表者は、短いビデオで紹介され、最大3分間のプレゼンテーションを与えられ、これまで実施された作業と、シノドスの父と母と研究グループの間で継続的な対話(シノドスと「並行」する道を仮定した人々とは反対)を見据えた今後の計画について概説した。

 グループがまとめる「回答」は、今総会終了後の2025年に教皇に提出されるが、取りまとめに当たっては、総会の貢献と成果が考慮される。オロリッシュ枢機卿は、グループのメンバーたちを「旅の仲間」「対話者」と表現した。検討グループの代表による説明は次の通り。

*「一夫多妻制―最大10人の妻を持つ男性とどう関わるべきか自問中」

 

 アフリカのさまざまな国における「一夫多妻制」という複雑な問題を扱っているグループの検討状況は、アフリカ・マダガスカル司教協議会(SECAM)会長のコンゴのフリドリン・アンボンゴ枢機卿が報告した。検討は「一夫多妻制の状況にありながらキリスト教の信仰を受け入れた人々」あるいは「改宗後に一夫多妻制で暮らす洗礼を受けた人々」に教会が司牧面でどのように寄り添うことができるかという問題から始まった。

 数か月前、同性愛者への祝福の可能性(信任状宣言によって導入された)に反対を表明したアフリカの教会は、現在、子供の存在、経済的困難、感情的なつながりなどの問題を考慮し、最大10人の妻を持つ男性と、どのように関わるべきかを自問している。

 枢機卿は、「SECAMはこの現象のさまざまな形、関係者の動機、教会の教義を分析するつもりである」と説明した。カトリックの教義では、一夫多妻は「神が望んだ夫婦の理想ではない」とされているが、現状から、これだけでは十分ではない。「親密さ」「積極的な傾聴」「サポート」が必要だ。専門家によって進められている検討作業は、文書にまとめられる予定だ。。

*「教会における女性の役割と女性助祭」の問題は「縮小」と教理省長官

 

 バチカン教理省のビクター・マヌエル・フェルナンデス長官は、この問題を検討するグループを代表して「聖職者の形態」について発言。その中で、「教皇フランシスコの使徒的勧告「福音の喜び」、同「愛するアマゾン」、カテキスタの使命を定めた自発教令「アンティクム・ミニステリウム」などで示された見解の一部が復活する」ことを予想し(これらの文書は「あまり受け入れられなかった」)、長官は「教会の活動と指導への女性の参加という差し迫った課題」に焦点を当てた。

 この課題は、教皇が設置した2つの委員会が取り組んでいるテーマで、女性を助祭に迎え入れる可能性の問題も含まれている。だが長官は「教皇がこの問題はまだ成熟していない、と公に表明していることは承知している… 教皇の心の中には、一部の女性に助祭を与える可能性について急いで話し合う前に、まだ検討して解決すべき問題が他にもあるのです」と自己の見解を述べた。

 長官によると、助祭職が「一部の女性にとって一種の慰め」となり、「『教会への参加」という、より決定的な問題がなおざりにされるリスクがある」とも説明した。

 さらに長官は、この課題については信仰の教義と関連して「徹底的な研究」を続けており、教会史における「真の権威を行使した」女性たち(カノッサのマティルダ、ビンゲンのヒルデガルト、ジャンヌ・ダルク、アビラのテレサ、ママ・アントゥラ、ドロシー・デイ)の分析と、インドネシアやアフリカなど”遠隔地”においても教会で重要な役割を担う今日の女性たちの声に耳を傾けることとを合わせて検討している」としたうえで、女性助祭職の問題は「縮小」されており、「私たちは『より決定的な女性の存在のためのスペース』を広げようとしている」と述べた。

 

*「女性を含め最も貧しい人々の叫びに耳を傾けている」

 

 女性の役割は、地球と貧しい人々の叫びに「耳を傾ける」ことに専念するグループの検討の中心課題でもある。グループのコーディネーターのオーストラリア人、サンディー・コーニッシュ氏は、キリスト教コミュニティと慈善、正義、開発のために日々働く人々との絆をいかに強化するかを考察の中心に据え、「女性は世界のあらゆる場所で、最も貧しい人々の中の最貧困層に属している」と強調した。

 グループの検討作業では「彼女たちの声」のほか、貧困や疎外を経験する人々と共に「歩む」ボランティアや専門家の声も取り入れる。また、「カースト差別の被害者など、長年排除されてきた集団」にも注目する。コーニッシュ氏は、「障害についてすでに話し合っている司教や教区指導者も参加するが、これらの障害は創造性と具体的な対応を刺激する可能性があります」と指摘した。

 

 

 

*「爆弾、戦車が、人々も、希望も破壊し、東方教会は『消滅の危機』に瀕している」

 

 バチカン東方教会省のクラウディオ・グジェロッティ長官は、最近の東方教会を取り巻く状況について、「爆弾、戦車が人々だけでなく希望も劇的に破壊している」、そして「戦争で荒廃した地域の小さく脆弱な東方カトリック教会を標的にしている」と説明。「彼らは消滅の危機に瀕しており、彼らの喪失は教会にとって取り返しのつかないものとなるだろう」と警告した。

 そして、東方教会省として、「より強く、より組織化されたラテン系の信者たちに、大量移住後の兄弟たちの暮らしを良くする手助けを依頼する」任務を引き受けたい、と述べた。また、「一部の教会の信者たちの大半が戦争で荒廃した自国ではなく、国外に出る」などの現状があり、実態などを把握するアンケート、東方教会省の下でシノドスの道”の枠組みを超えた旅を始めることも検討されている、と説明した。

 

 

*「デジタル社会の急激な進展に対応した福音宣教」

 

 現実世界からデジタル世界へ― アメリカ人専門家のキム・ダニエル氏は、仮想世界における福音宣教に関する検討グループの活動を説明。「教会活動における新しい福音宣教のページは、周縁部に到達できるようにし、主を知らない世界における最初の主の福音の宣教を表しています。もちろん、この『流動的な場』の機会と課題を見極める必要があり、それには、教会にとっての『文化融合の原動力』も含まれます」と述べた。

 グループには、教会と学界のさまざまな分野の専門家が参加しており、活動は、デジタル文化ネットワークに携わる若者を中心に、広範囲に傾聴することで特徴づけられている。プロジェクト「教会はあなたの声に耳を傾けます」、ソーシャルメディアに関するコミュニケーション部局の司牧的考察「完全な存在に向けて」などだ。

 

 

 

*信仰一致の枠組みにおけるペトロの首位権

 

 シノダリティ(共働性)と首位権の関係、聖餐における相互の友好的な歓迎、そしてキリスト教復興運動とのつながりが、マロン派のポール・ルーハナ司教が代表を務めるこの検討グループのポイントだ。

 作業内容には、「教会の実践における信仰一致の旅の受容の成果」の分析と、「新しい信仰一致の取り組みの枠組みにおける『ペトロの奉仕』の実践に関する実践的な提案」が含まれている。教皇文書「ローマの司教」は、会議や考察の基礎となり、宗派を超えた結婚、家族、運動の経験は、聖体でのもてなしについての考察を広げるのに役立つ。また、「賜物の交換の精神から何を学べるか」を理解するために、宗派に属さない運動を「前向きに」見ていく、という。

 

*「司教たちに求められる『透明性』の向上、地域の状況への配慮…」

 

 司教、司祭、助祭の奉仕と神の民との関係に関する検討グループの仕事は、より厳密に教会的なものだ。ミュンスターのフェリックス・ゲン司教は、「神の民の期待」である「透明性」の向上、地域の状況へのさらなる配慮、「陰謀の疑いを避けるために候補者の選出に地域教会がさらに関与すること」、そして「真にシノドス的な教会」のイメージを回復する必要性を考慮して、「司教と地方教会の関係を深める」必要性を強調した。

 

 

 

*「司教たちと奉献生活者の関係の生かし方における違いなどを検討」

 

「交わり」、「位階制」、「シノドス性」、そして「信頼」、「友愛」、「姉妹愛」は、司教と奉献生活の関係に関する検討グループを導くキーワードだ。そして、司教会議、上級司祭、教会の集合体、地方教会間の協力関係。

 奉献・使徒的生活会省の次官、シモーナ・ブランビッラ修道女は、特に「司教たちと奉献生活者の関係の生かし方における違いとニュアンスを検討している」と説明した。世界の一部の地域では「関係は効果的で実り多いが、他の地域では困難であり、奉献生活は機能主義的に捉えられている」とも。

 

*「司祭のための指針のシノダル(共働的)の見地からの見直し」

 ホセ・コボ・カノ枢機卿は、司祭の生活、養成、奉仕に関する1985年の文書である「司祭制度に関する根本指針」の見直しを担当するグループの作業状況についてビデオで説明。

「指針」は「まだ受け入れられている段階であり、明確な指針が必要である」とマドリード大司教は述べた。多くの「断片」の提案と洞察を通じて、神学校の養成、司祭の奉仕、召命の司牧、司教との関係、シノドス性に関する教育などの問題に関する指針の大きな「モザイク」が準備されるだろう、と述べた。

 

 

 

*教皇大使の新しい働き方

 

 最後に、シドニーのアンソニー・フィッシャー大司教は、最後のテーマの検討グループは、「教皇大使の現在の役割を再考する」という任務を負っており、これまで果たすことが求められてきた”外交機能”よりも、「司教間の一致、友愛、シノドス性」を促進する教皇大使としての責任に関するもの、と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2024年10月6日