・シノドス事務局長が会見「特別教会会議は、教会のシノダル(共働的)な歩みを助けるのが目的」

(2025.3.15  Vatican News   Andrea Tornielli

   シノドス事務局長のマリオ・グレック枢機卿が15日、バチカンの取材陣と会見し、「2028年の教会会議は(昨年10月に閉幕した)『シノダリティ(共働性)』をテーマとする世界代表司教会議(シノドス)第16回総会の期間中に熟した成果を集める機会となるだろう」とし、「シノドス事務局が世界各地の教会に提示するこの旅の目的は、仕事をさらに増やすことではなく、教会がシノダル(共働的)なスタイルで歩むのを助けることにある」と説明した。

 以下は、その会見での一問一答の一部。

グレック事務局長:多くの人々は、昨年10月のシノドス総会第二会期をもって”シノドスの旅”が終わったと考えていたでしょう。しかし、実際には、使徒憲章 Episcopalis Communioによって、”シノドスの旅”はイベントからプロセスへと変貌し、「準備」「祝典」「実践」という3つの段階に構造化されたのです「(EC4項)。

 この変貌には、真の「転換」、すなわち教会の実践に根付くまでに時間を要する考え方の変化が必要です。この構造は根本的なもの。単に「文書」を公表するだけでは、教会生活にシノドスの取り組みの2つの段階で浮上したものを実行に移すには不十分です。「文書」(第16回シノドス総会最終文書)は、教会の識別の成果として、また回心の地平として受け入れられる必要があります。

 そして、まさにそのことが起こっています。教会の一致の原理であり、シノドスの旅の保証人である教皇は、最終文書に対する補足文書の中で、各地方教会とそのグループに、その地方の文脈に合わせて総会の勧告を適用する任務を委ねられました。多くの教会がすでに前向きに応え、動き出しています。総会終了後も、歩みは止まることはなかったのです。

 

問:2028年までの間に何が起こるのか?

事務局長:今始まったのは、すでに進行中の実践段階の支援と評価のプロセスだ。教皇は、総会で選出されたメンバーが大半を占めるシノドス事務局の通常評議会の貢献により、この決定に達した。

 このプロセスは、各教会がシノドスの成果を独自の方法で受け入れ、適用する役割を減じるものではない。むしろ、むしろ、教会全体が責任を負うことを奨励するものであり、実際、大きな共同責任である。なぜなら、地元の教会を尊重することで、司教団も教皇の司牧活動と関連付けられるからだ。

問:では、このプロセスの正確な目標は何だろうか?

 それは、実施段階で得られた洞察について、教会間の対話を促進することを目的としたプロセスである。地域レベルでの作業期間(2026年まで)を経て、教会会議のスタイルで、教会間の対話と賜物の交換の場を創出することが目標である。

 これは、これまでのシノドス会議の旅から生まれた最も価値ある側面のひとつだ。目的は、各教区や教区が別個の存在であるかのように実践が孤立して行われることがないようにすることであり、国、地域、大陸レベルでの教会間の絆が強化されることだ。同時に、これらの対話は、真の歩み寄りを可能にし、共同責任の精神において、なされた選択を評価する機会を提供する。2027年と2028年初頭に予定されている会議は、当然ながら2028年10月の教会会議へとつながっていく。この最終の会議は、教皇がペトロの後継者としての識別を助けるために、教会全体に提案する見通しを立て、真の教会体験の成果である貴重な洞察を教皇に提供できる。実践と評価は、ダイナミックで共有されたプロセスの中で絡み合いながら同時に進められなければならない。これがまさに最終文書で呼び起こされた「説明責任の文化」だ。

問:2026年は、さまざまな教区の活動に専念する年となる。あなたは何を期待しているのか?

事務局ちょう:傾聴の段階で行われた作業から再出発することが不可欠であるが、まったく同じことを繰り返さないことも同様に不可欠だ。この段階では、神の民の声を聞くことや、神の民の声を収集することだけが課題ではない。教会指導者やシノドスチームが、シノドス全体から浮かび上がった内容について、神の民の残りの人々と対話を続けることが重要だ。そうすることで、この旅が彼らの文化や伝統に適応されることになる。これはまた、キリストの預言的機能の共有者(LG 12参照)として、また信仰の意味の主体者として、神の民全体に訴えるもう一つの可能性でもある。教会内および教会間の循環性の原則が、教会の通常の実践において有効に機能することを願っている。

問:各現地教会はどのように活動すべきだろうか?

事務局長:私たちは、繰り返すだけでなく、神の民のすべての構成員を教会生活の能動的な主体とし、その認識された能力に基づいて各教会の道筋を定めるよう招かれている。この最初の1年半は、これまで”シノドスの旅”にあまり積極的に参加していなかった人々を関与させる機会にもなるだろう。世界代表司教会議(シノドス)総会の経験を持ち、私たちの共同体をこれほどまでに成長させてきた聖霊の対話を経験する。今、全体像がより明確になり、シノダリティ(共働性)についての理解がより共有されるようになったので、誰も排除することなく、私たちは新たな活力をもってこの旅を続けるための手段を見つけることができる。

問:神の民をより多く関与させるために、私たちは何ができるだろうか。シノドスが「専門家」や教会の構造にすでに関与している人々のための主題に限定されたままであるというリスクを避けるために。この新たな挑戦的な一歩が、他の事務的な仕事に追加されたもう一つの仕事として経験されないようにするにはどうすればよいだろうか。

事務局長:シノドス第16回総会の準備文書は、まさに「神の教会は、シノドスにおいて召集される」という文言から始まっている。シノドスの道ほど、教会全体と教会内のすべての人々を巻き込むものはない。それは、最初の段階で、地域教会における神の民の声を聞くことで明らかになった。今後の進め方も同じだ。この実践の取り組みは、特に叙階された、制度上の、あるいは事実上の司祭といった「牧者」の活動をさらに増やすことを求めるから困難なのではない。

 実践への参加とは、シノダル(共働的)な視野の中で、シノダルなメンタリティーをもって、各教会の教会的な旅路を生きること、そしてシノドス的な教会の形の前提条件であるシノドス的なスタイルを成熟させることだ。この問題がメンタリティーの問題であることを強調するために、形容詞を繰り返す。シノドス事務局が各教会に提案している”道”の意味は、外部や上層部からの要求に応じて仕事を増やすことではなく、教会がシノダルなスタイルで歩むのを助けること、ひと言で言えば、司祭団や奉仕グループの助けを借りて司教に司牧が委ねられた神の民のそれぞれの部分が、福音を体現し、その場において関係する主体としての教会となることだ。

問:シノドス総会の最終文書で詰めが残された課題を検討する10の研究グループの作業はいつ完了するのか?

事務局長:研究グループが作業を完了する時期については、まだ断言できない。グループが設立された1年前に示されたように、「2025年6月まで」に、教皇に結論を提出することが求められているが、一部のグループは、この期限を守ることができても、追加の時間が必要なグループもあるかもしれない。いずれにしても、6月末までに作業の中間報告を行うことになる。また、2023年に設立された教会法の側面からの検討委員会も同時に活動しており、その権限の範囲内で10の研究グループを支援する態勢にある。また、一夫多妻制で生活する人々のための司牧ケアを目的として、SECAM(アフリカおよびマダガスカルの司教協議会)内に設立されたグループもある。

 

問:2028年に開くことになった「教会会議」について説明が欲しい。事務局長が世界の司教などに送った書簡では、それは「新しいシノドスではない」と明確に述べているが。

事務局長:2021年から2024年の”シノドスの旅”は、多くの点で「初めて」のものだったと言えるだろう。(2018年に教皇フランシスコが出された、シノドスへの一般信徒の関与などについて定めた)使徒憲章Episcopalis Communioの規定が完全に適用されたのは初めてであり、教会全体、そしてそのすべての構成員がシノドスの道の歩みに参加する機会が初めて与えられた。司教以外のメンバーがシノドス総会に参加したのも初めてのことだった。シノドス総会の最終文書が即座に教皇によって承認され、教皇の通常の教導の一部となったのも初めてのことだった。

 そして今、シノドスの道の歩みの第三段階において、私たちはまた初めての経験をしている。それが「教会会議」だ。世界の教会全体のレベルでの教会会議が開かれるのは今回が初めてのため、まだ多くの詳細を詰める必要があるが、これまでのシノドスの道の歩みの大陸レベル会議の経験を参考にすることができる。

問:それはどのような特徴を持つのか。2023年と2024年の二会期にわたったシノドス第16回総会とどのように異なるのか。

事務局長:「教会会議」の目的は、”シノドスの道”の最終段階において、先のシノドス総会の最終文書が示しているように、教会間および教会全体における賜物の交換の見通しを具体化することにある(120-121項参照)。これまでの”シノドスの道”では教区、司教協議会、司教協議会連盟などさまざまなレベルで、それぞれの小教区で始められた歩みの成果を分かち合い、対峙することによって、賜物の交換を実現することが可能となったとすれば、「教会会議」は、成熟した成果を教会全体のレベルで集める機会となるだろう。

 この教会会議の可能性は、シノドス第16回総会の第二会期会合の閉会にあたって教皇がなさった挨拶にすべて含まれている。教皇は「文書で指摘された教会生活のいくつかの側面、および、私に提案を行うために、自由な立場で取り組むべき10の『研究グループ』に委ねられたテーマについて、教会全体に関わる選択を行うためには、時間が必要です。私は、引き続き司教たちや彼らにゆだねられた教会の声に耳を傾けていきます」と語られた。シノドスの道の歩みの第三段階は、先のシノドス総会の最終文書が教会活動の中でどのように機能しているかを聴く時期であり、最終の「教会会議」の総会は、聴くことで得た成果を集約、総合する場となる。

 このため、この総会は「教会的」なものとなる。これは、昨年10月まで開かれたシノドス総会とは異なる性質と機能を持つ。シノドス総会は本質的に「司教たちの総会」であり、今後もそうあり続ける。シノドス総会の成果は最終文書であり、すでに述べたように、それはペトロの後継者の通常の教導権に参画するものだ。この最終文書に照らして、教会全体、すなわち、各教会と、自らの教会の一致の原理としての各司教が、第三段階を生きることが求められている。この段階は、教会会議の総会で目的地に着くことになる。この総会は、シノドス第16回総会の準備文書の冒頭に掲げられた「神の教会は、シノドスにおいて召集される」という真理を可視的な形で示すものであり、教会の”シノドスの道”の歩みの成果を証しするものであるべきだ。

 

問:事務局長が世界の司教たちに送られた書簡で提案された日程には、来年の10月に予定されているシノド・スチームの新しい聖年について言及されている。これは一体どういう意味か?

事務局長:聖年は巡礼と密接に関連している。シノダル(共働的)教会は「巡礼の教会」であり、それは神の民が神の国の成就に向かって「共に歩む」ことによって明らかにされる。シノドス・チームや参加型組織(これらの組織は、地元の教会におけるシノドス生活の場も提供している)の聖年は、神の民がペトロの墓へと向かう旅の中で、教会のシノドス的側面が明らかにされる祝祭の時となる。同時に、洗礼を受けたすべての人々、すべての教会、すべての司教の交わりの原理であるペトロの後継者の周りに集まる。繰り返しになるが、教会全体が巡礼の旅に出るべきである。私たちは、シノドス・チームを召集することを考えた。彼らは時間を割き、エネルギーを注いでシノドスの道の歩みに奉仕してきた人々で構成されているからだ。私たちは彼らに再活性化を求めた。彼らはこの実践の道の歩みにおける「先鋒」となるからだ。

 

問:この「教会会議」に何を期待するのか?

事務局長:私たちは、「教会会議」を単なる祝賀の機会としてではなく、教会の構成要素としてのシノダリティ(共働性)を深める「好機」としたいと考えている。シノダル(共働的)改革を望む教会の歩みにとって、この改革が意味するものはすべて、私たちが今生きている四旬節にあたって、教皇が私たちに思い出させてくださったようにだ。 このシノダル(共働的)回心の動きが、教会の刷新と新たな宣教の推進に役立つことを考え、期待を裏切ることのない成果を生むことを希望している。

問:司教と神の民に託されたこの書簡は、今日発表されるが、他に”補助教材”は用意されるのだろうか?

事務局長:現時点では、私たちは、この書簡で語られている以上の資料やさらなる指針を提供することは考えていない。 すでに、実施に向けて取り組むために必要なものはすべて、すなわちシノドス総会の最終文書が提供されているからだ。 また、この書簡で提示されたさまざまな側面は、司教たちの協力と、もちろん私たちの事務局の通常会議によって、より明確になるだろう。近年、私たちは司教や教区長、司教協議会や東方カトリック教会の同等の機関、司教協議会の国際会議などと、さまざまなオンライン会議を行っており、非常に有益だった。したがって、この新しい段階においても、プロジェクトの進捗について合意するために、同様の会議を開催することを排除するものではない。私はこれまでに何度か、シノドス事務局の務めは、「上から下ろされた指示を遂行すること」ではなく、何よりもまず、現地の教会から寄せられる要望、洞察、提案に耳を傾ける姿勢だ、と述べてきた。5月に予定されているものに始まるこの旅の間に提供しようと考えている補助資料も、教会の傾聴の実践の成果となるだろう。

問:シノダル(共働的)教会のあり方をテーマにした2会期にわたる世界代表司教会議(シノドス)第16回総会のメッセージの核心を改めて説明してもらいたい。

事務局長:シノドス総会のメッセージの「核心」を簡潔に述べたいと思うが、2つの会期でのメッセージとなると、非常に単純化してしまう危険性がある。 その中であえて私は、そのプロセスのダイナミクスを強調したい。第1会期から第2会期への移行は、熟慮を促す長時間の傾聴を通じて、教会的な識別がどのように機能するかを示した。最終文書は、段階を踏んだ辛抱強いプロセスを経て成熟した成果であり、そのプロセスの中で私たちはシノダル(共働的)様式と方法を学んだ。シノドスの道の歩みは、シノダル(共働的)な歩みが可能であること、教会のシノダル(共働的)スタイルが可能であること、教会のシノダル形態が可能であることを、すべての人に伝えている。そして、教会を福音の喜びの新たな福音宣教の証しへと導く聖霊に従順に、それを可能にするよう、すべての人に促している。

 

問:シノドス第16回総会の最終文書は、どのような役割を果たすのだろうか?

事務局長:最終文書は、シノドスの道の歩みの成熟した成果だ。その内容は、教会会議的な意味での教会の回心と刷新のための指針となる。今後3年間にわたって待ち受けているすべての作業は、この文書の内容に触発されたものであり、教会生活の中でそれらを実現する可能性を検証するために、実験的に試みられねばならない。2つの点を指摘したい。

 第一に、最終文書は第二バチカン公会議の権威ある受容行為であり、「その霊感を延長し、その預言的な力を現代世界のために再起動する」(DF 5)ものである。実際、文書は「シノドスの旅は、福音に耳を傾けることから生じる絶え間ない回心を通して神聖さへと招かれる神の秘義と民としての教会について公会議が教えたことを実際に実行に移している」(DF 5)と述べている。

 第二に、この文書に織り込まれたテーマを探究する際に、その第1章で述べられた「シノドス」の基礎から、あるいは他のどの章から入ろうとも、この文書の深い統一性と調和を理解することができる。それは、教会の美しさと刷新の可能性を理解させてくれる文書だ。「刷新」とは、シノドス的あり方と行動様式として出発したときに、豊かな伝統の中で実現される。

 極端に要約して言えば、メッセージの核心は、「洗礼を受けた私たちは皆、弟子であり、宣教師であり、現代の男女とイエスとの出会いを容易にするために、人間関係の変革に真剣に取り組むべきである」ということだ。シノドスの道の歩みは、教皇フランシスコが教皇就任当初から私たちに呼びかけている司牧的・宣教的な変革に、足と視点を提示してきた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年3月16日