・「教会での女性の役割を高めるために、一層の対話が必要」-シノドス総括のオロリッシュ枢機卿がCruxに語る

(2024.8.2 Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

 「教会における女性の役割」は、教皇が提起した”シノドスの道”が2021年に始まり、国、地域、大陸、そして世界レベルのシノドス総会へと歩みを進める中で、最も議論され、論争を呼んだ問題の1つになっている。昨年10月のシノドス総会第1会期の会議でも、女性の問題とLGBTQ+への対応が最も熱心に議論された。

 今年10月2日から27日まで開かれる総会第2会期の会議で、”シノドスの道”は当面の歩みが一段落するが、シノドス事務局は7月9日に発表した第2会期に向けた準備要綱で、これらの問題をほとんど取り上げず、さらなる掘り下げを複数の作業グループに委ねた。グループの1つは、バチカンの教理省とシノドス事務局のメンバーで構成されており、女性の特定の聖職に関する神学上および教会法上の問題を研究する任務を負う。

 バチカンは、この作業グループのメンバー構成や、具体的な検討内容を明らかにしていないが、教皇フランシスコが最近の米CBSとのインタビューで「女性は司祭職、助祭職どちらの役職にも就くことはできない」と語ったにもかかわらず、女性の助祭と司祭叙階についての検討が行われると広く信じられている。

 オロリッシュ枢機卿はCruxとのインタビューで、「自分はシノド事務局のメンバーではないため、検討作業には参加していない」とし、女性の役割に関する作業グループについての詳細を明らかにしなかったが、「女性の役割に関しては、すべての大陸で状況は同じではないため、誠実な対話に取り組まなければなりません」と述べた。

 そして「西欧全体では、女性が聖職に就くことを求める声が強いが、世界の他の地域ではそうではない。助祭職にも違いがある。助祭職は聖職ではないし、聖職にも就くことはできない」としてうえで、「これは教会が簡単にできる変更ではないし、世界の一部だけでできる変更でもない。(無理に強行すれば)教会を分裂させてしまうでしょう」と説明。

 そのうえで、「女性と教会生活および統治への女性の関与という問題に関して前進する唯一の道は、非常に誠実な対話だ。おそらくそうした対話の中で、女性たちは『ああ、でも、はい、分かりました。(教会の活動に)全面的に参加したいし、意思決定にも参加したいのですが、そのために司祭になる必要はないかも知れません』と言うでしょう。それでも、他の人々は依然として女性の司祭叙任を望むかもしれません」ない、と述べた。

 この問題に関する見解が大きく異なることを考えると、「開かれた対話」がこの問題に取り組む唯一の方法であり、それは「自分の立場を相手に納得させるための対話ではなく、聖霊の導きを求め、教会が将来どのように前進できるかを問う対話」だと枢機卿は強調。「今日の教会における論争の二極化にもかかわらず、このような対話は可能であり、”シノドスの道”の歩みの中でそれが行われている。もちろん右派、左派などさまざまな立場の人々がいますが、『霊における対話』という方法論を通じて真の対話に取り組む人々もいます」と述べ、「(注:自分たちの主張を一方的に押し付けるような)”ロビー活動”は教会文化にはありませんし、そうあるべきではありません。私たちには祈り、議論、お互いに耳を傾けるなど、他の手段があります」と主張した。

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 オロリッシュ枢機卿は現在、全欧州の祭壇奉仕者たちによる夏のローマ巡礼を主導した後もローマに滞在しているが、1日の記者会見で、同日までの巡礼中に女性の役割が話題になったか、との質問に、「女性の助祭と司祭の問題は取り上げられませんでしたが、自分が話をした若者の多くがこの問題を重視していることが分かりました。私にとって、皆の話を聞くことは重要です。司教として、枢機卿として、私は常に人々の話を聞いて意見を修正せねばならない。あらかじめ決まった答えを持ちたくはありません」とし、「常に耳を傾けること」の重要性を強調した。

 また、若い男女が共に祭壇奉仕者の務めを果たしているのは「まったく普通のことであり、そうあるべきです」と語り、「(祭壇奉仕者の子の巡礼に)若い女性がたくさんいたことをとても嬉しく思います。彼女たちはとても優秀で、自分自身を捧げる方法と教会を前進させる方法を知っています」と述べた。

 教皇フランシスコは、祭壇奉仕者を男子に限るという、数十年にわたり世界の多くの地域の教会で行われてきた慣習を改め、女子も祭壇奉仕者になることを明確に認めた。報道陣の取材に、巡礼に参加したミア・ロザーメルは、「個人的に祭壇奉仕で男女の違いはないと感じており、昔とは状況が変わりました」と語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月3日