・「”シノドスの道”は、霊的識別の道でありたい」シノドス事務局主催の準備総会で

(2022.5.5 Crux Rome Bureau Chief   Inés San Martín)

 来年10月の世界代表司教会議(シノドス)の準備を担当するバチカンのシノドス事務局が先週、準備総会を開いたが、そのメンバーであるラテンアメリカ司教協議会(CELAM)の広報担当者、Oscar Elizalde 氏は「今回の”シノドス”は、来年10月に開かれる一回だけのものではない。これは、私たち信徒全員が参加することを前提に、既に始まっているのです」と強調した。

 先週の総会を主催した15人のメンバーで構成する事務局は、これまで教皇庁の組織の中で「Secretariat for the Synod of bishops(司教たちのシノドスのための事務局」とされてきたが、先に教皇フランシスコが公布されたバチカン改革の使徒憲章で、名称が「Secretariat for the Synod(シノドスのための事務局)」に改められた。

 この名称変更について、アルゼンチンの教皇庁立大学の神学部長で教皇の信任厚いカルロス・ガリ神父は、「事務局の使命が、教会のすべての有機的組織体のsynodality(共働性)を推進することにある、と明確にするのが狙い。来秋ローマで開かれる世界代表司教会議(シノドス)は、このsinodality(共働)の実践の一つだ、ということを示す者でもある」と説明する。

 ガリ神父によると、シノドスの道には 3つの段階がある。まず、準備の段階ー相談し、耳を傾け、すでになされたことを完全なものにすること。次に祭りごとの段階ー来秋バチカンでの世界代表司教会議の開催。そして仕上げの段階は、その会議で話し合われたことについての世界各地の現地教会の受け止め、だ。

 「ともに歩む教会ー交わり、参加、そして宣教:2021₋2023」と呼ばれる”シノドスの道”は教皇の手で昨年10月に開始された。

 マドリッドの教皇庁立アコミラ大学で教会法を教えるカルメン・ペーニャ・ガルシア教授は、「すべてのシノドスは教会に目を向けるが、これまでのところ、家庭・若者・アマゾンという具体的な現実に関する教会の対応に関心が向いています」としたうえで、「今回のシノドスの道は、ある意味で、教会自体と教会の理解への回帰であり、第二バチカン公会議を本当に実施したいと思っています」と指摘。この道には継続性と新奇性の両面があり、 「継続性とは、第二バチカン公会議を受容、進化させていること。新奇性は、教会の抱える課題をどう考えるかに重点が置かれていることです」と述べた。

 この”シノドスの道”の歩みー小教区、教区、国、そして大陸・地域のレベルの段階を踏む歩みー全体を通して「洗礼をめぐる全般的な状況」が中心に置かれており、「洗礼は、『私たちを結び付け、私たちを教会の構成員にし、神から授けられた様々な資質、様々な聖職と役割がある、という事実を除外することなしに、教会の活動への共同責任を負うこと』を意味する」が、「教会の位階制には、固有の役割があり、極めて重要なものですが、それが、洗礼を受けたすべての信徒の共同責任を減じるものではない、ということを指摘するのはとても重要です」とペーニャ教授は強調した。

 さらに、教会法の専門家としての立場から、教授は、「この歩みの全てに、すべての司祭、信徒が積極的に参加し、教会における責任と役割について認識するのに役立てること… そして、司教たちがそれを認めることを希望しています」と語った。

 また教授は、第二バチカン公会議で選択肢が示されながら、これまで40年以上も活用されていない、数多くの「参加の道」があることから、この歩みの中で教会法の規定が完全に適用されることに、希望を表明した。

 教皇フランシスコは、2013年に就任以来、それまで3年毎に招集して来た世界代表司教会議の定期総会に加え、臨時総会を2回召集された。高位聖職者の声だけでなく、世界の全ての教会の声を総会の議場に持ち込むために、事前の準備の集まりなどを開いてきたが、今回の”シノドスの道”では、参加を希望するすべての人の声が確実に聞かれるようにすることを、教皇は望んでおられる。

 シノドス事務局は、来年10月の世界代表司教会議総会の前に、「作業文書」を発出する予定だ。これは、総会の議論の全体的な指針となるものだが、情報筋によると、先週の事務局の総会で議論されたものの中に、「作業文書」という名称の変更があった、という。つまり、今回の世界代表司教会議総会の前に出される文書は、「総会で何を話し合うべきかについてのバチカンの考え」ではなく、「世界の7つの地域の会合で何が話し合われたかの要約」になるからだ。

 世界修道会総長連盟の事務局長、エミール・トゥル神父は、シノドスの霊性委員会の委員でもあるが、「そのような委員会が存在すること自体が、(今回の”シノドスの道”の)目新しさ、と言える」とし、「これを”新しい”というのは信じられないことのように思えます。ですが、私たちは、今回の”シノドスの道”が燃え立たせようとしている『識別』に注目してもらいたいのです。すでにある立場で“知的な議論”をするのが狙いではありません。共に霊的な識別の道を歩み始めよう、というのが狙いなのです。そのような狙いは、途方もないものかもしれませんが、その成否は、時が経てば分かるでしょう」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年5月6日