改・3月5日は「性虐待被害者のための祈りと償いの日」

(2021.2.12 カトリック東京大司教区)

 カトリック東京大司教区の皆様へ 2021年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」について

 神を信じるわたしたちには、神の賜物である尊厳あるいのちを守るために最善を尽くす義務があります。残念ながら、その務めの模範たるべき聖職者が、とりわけ性虐待という人間の尊厳を辱め蹂躙する行為におよんだ事例が、世界各地で、過去にさかのぼって多数報告されています。なかでも保護を必要とする未成年者に対する性虐待という、卑劣な行為を行った聖職者の存在も明らかになっています。

 加えて司教をはじめとした教会の責任者が、聖職者の加害行為を隠蔽した事例も、少なくありません。日本の教会も例外ではありません。

 教皇フランシスコは、聖職者によるこのような問題に教会が全体として真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを願い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求めておられます。そして特別の祈りの日を設けるようにと指示されました。日本の司教団は、日本における「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を、四旬節・第二金曜日と定めました。

 2021年にあっては、来る3 月5日(金)がこの「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたります。

 東京教区の各小教区共同体にあっては、この日、またはその直後の日曜日に、教皇様の意向に従ってミサを捧げてくださるようにお願いいたします。そのミサにおいては、『ゆるしの奉献文』が使用されることといたします。またこの意向を持ってのミサが主日など他の日に捧げられる場合でも、3月5日当日には、祈りの時を持つことも勧められています。なお共に唱えるための祈りが新潟教区訳で準備されています。

 また東京カテドラル聖マリア大聖堂では、3月7日(日)午前10時の関口教会主日ミサをこの意向を持っての大司教ミサといたします。祈りを共にしてくださるように、お願いいたします。

 無関心や隠蔽という教会の罪を認めるとともに、被害を受けられた方々に心からお詫び申し上げます。同じようなことが繰り返されないように、信仰における決意を新たにし、愛のうちに祈り、行動したいと思います。

カトリック東京大司教区 大司教 菊地功

<参照>「性虐待被害者のための祈りと償いの日」共同祈願例文

 いつくしみの主である神よ、教会に集う私たちが、被害に遭われた方の痛みに寄り添い、共に癒しの道を歩めるよう導いてください。

 加害者が謙虚にその過ちを認め、被害に遭われた方とその家族に誠実に謝罪することができるよう、光と力をお与えください。

 仕えるために来られたキリストに従い、人々への奉仕の道を歩むことを選んだ聖職者たちが、その使命を全うすることができるよう導いてください。

 神の民である私たちが良心に目覚め、弱い立場におかれている子どもや大人を守り、連帯し、キリストの福音を告げる使命を全うすることができますように。

(カトリック中央協議会 子どもと女性の権利擁護のためのデスク 作成)

的虐待被害者のための祈り」

 天の父よ、あなたは、あなたのすべての子どもたち、特に最も小さく弱い子どもたちを愛し、心にかけておられます。性的虐待を受け、信頼と純真の心を傷つけられてしまった、自分を守ることのできない多くの子どもと大人たちをあなたに委ねます。

 私たちが彼ら、彼女らの苦しみの叫びに耳を傾け、損なわれた多くの人生に寄り添い、責任ある行動を取っていくことができますように。

 被害を受けた方々が、仲間や家族からの理解と支えを受け、あなたの恵みによって傷が癒やされ、平安に生きることができますように。

 聖霊の交わりの中で、あなたとともに世々に生き、罪を除いて私たちと同じ弱さを身にまとわれた御子、私たちの主、イエス・キリストによって。アーメン。

(教皇庁児童を守るための委員会作成 新潟教区訳)

 

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(2021.2.22 カトリック・あい)

 なお、日本の司教団は2016年に、以下のようなメッセージを出している。その後更新されてはいない。また、この後、現在までの動きを見ると、形式的、制度的な整備は進められたものの、それが本当に、意識の面も含めて、被害者の訴えを聴き、誠実に応えるような形になっているのかについては、疑問がある。最近の性的虐待に関する長崎教区などの具体的問題への対応を見る限り、目立った成果が出ているとは言い難いようだ。

  「性虐待被害者のための祈りと償いの日」設定にあたって   日本のカトリック信者の皆様へ

はじめに
教皇フランシスコは、全世界の司教団に向けて、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるように通達され、日本ではこの日を「四旬節・第二金曜日」にいたします。
第一回目は、2017年3月17日(金)になります。司教団としては、その直前の2017年2月の司教総会中に、性虐待被害者のいやしと償いの意向でミサをささげることにしています。
「祈りと償いの日」は、四旬節の金曜日という回心にふさわしい日としましたが、同時に象徴的な日でもあります。それぞれの教区司教の呼びかけに従って、四旬節の間、あるいは前後の日曜日などを使って、祈りと償い、被害者の痛みを学ぶ機会を作ってくださるようにお願いします。

教皇フランシスコの意向
2002年、米国のボストンで聖職者による子どもへの性虐待事件が報道され、世界各地で同様の事件が明るみに出ることになりました。
教皇フランシスコは、教皇庁に新しく「児童を守るための委員会」を設立し、教皇自らがこの問題に真剣に取り組む姿勢を示されると同時に、全世界の教会がこの問題に真摯に向き合うように促しておられます。そして全世界の司教協議会に対して、子どもに対する教会のメンバーの責任について明確に意識できるように、神により頼む日として、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設定するよう指示されました。

 教皇の意向は、以下の諸点に要約されます。
1. 教会のメンバーによって、また家庭や教育現場において行われた、子どもへの性虐待の罪について、神からのゆるしを願うこと。
2. これらの重大な犯罪が、教会のメンバーによって行われたことを公に認めること。
3. 教会の権威者たちが、虐待の加害者を秘匿し、被害者の痛みを無視した罪について、神のゆるしを願うこと。
4. 被害者のケアをする責任は、教会のメンバーとしてすべての人におよぶことを、皆が認識できるよう恵みを願うこと。
5. 被害者とその家族のために神のいやしと支えを願い、教会がその人々の内的いやしと和解の歩みに有効に寄り添うことができるよう祈ること。
6. 虐待の被害者から何らかの反応があった場合、特別な司牧的な配慮をもってすぐに応えるようにすること。

日本の司教団として
日本司教団は、2002年、聖職者による子どもへの性虐待の事例の調査を行いました。その結果、日本でも同様の事件は存在することが分かり、この事実を受けてメッセージを出すとともに取り組みを始めました。
2002年6月には、「子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ」を発表しました。そこでは、「性虐待は、無防備な子どものからだ、たましいに傷を負わせる恐ろしい犯罪であること、日本でも不幸にして聖職者、修道者による性虐待があったことが判明したこと、司教団として十分な責任を果たして来なかったことを反省し、被害者の方々には誠実に対応するとともに、加害者である聖職者、修道者には厳正に対処すること、子どもの人権擁護のための活動、またかれらの育成に携わる学校・施設で働く者、および聖職者、修道者の養成に力を注ぐこと、このような事件が起らないように自らを正し、教会の刷新に励んでいくこと」を表明しました。

 続けて、2003年2月に司教のための対応ガイドラインを発表するとともに、カトリック中央協議会に「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を設置し、具体的な取り組みと啓発活動を推進しました。また、2013年2月には司教のための対応ガイドラインの補足として、『教会が子どもの権利を守るために〜聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』も発表しました。

 今後も、被害者の方が声をあげたときに、各教区として問題解決をはかるための体制を整えるとともに、聖職者と神学生の意識を喚起するために養成を徹底し、教会のメンバーの意識化のために啓発を行っていきたいと思います。

終わりに
みなさん、すべてのキリスト者とともに、傷ついた被害者の方々の悲しみと苦しみを理解し、彼らのいやしと回復のために、いつくしみ深い神に祈り、また、全世界の教会がこの困難な状況を乗り越えるために、神からの恵みと力づけを祈りましょう。わたしたち日本の司教は、聖職者、修道者、信徒のみなさんとともに、日本においてこのようなことが起こらないよう、重ねて自らを正し、教会の刷新に励んでいきたいと思います。

2016年12月14日 日本カトリック司教団

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2021年2月13日