・伊司教団も、性的虐待で独立調査委員会設置を検討-被害者は効果に懐疑的(Crux)

(2022.1.31 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

Italian bishops pondering national abuse inquiry

 独立調査委員会の設置は、3か月前の昨年11月に開かれたイタリア司教協議会(CEI)秋季総会で、未成年者保護を担当するラヴェンナ・セルビア教区長のロレンツォ・ギッツォーニ司教から提案された。

 だが、この提案は、独立委員会によるイタリアの全教会を対象にした調査とその結果が引き起こす事態に対処する用意があるか疑問視する司教たちの抵抗に遭い、結論は今年5月の春季総会まで延期された。

 CEIのスポークスマンは、Cruxの取材に対して、独立調査委員会の設置については「しばらくの間、検討を続ける、ということ。まだ『進行中』だ」とする一方、「イタリアの大多数の教区は、性的虐待に関する相談センターや委員会など、虐待被害者のための体制を作っている。227の教区、2万5000以上の小教区をもつイタリアの文化的、風土的、教会的特徴を考慮する必要がある」と述べた。

 聖職者による性的虐待の問題は、先週開かれたCEIの常任委員会の会議でも取り上げられた。

 会議後の記者会見でCEI事務局長のステファノ・ルッソ司教は「調査が行われる場合は、結果的に意味のあるものとなるように、慎重に対応する。私たちは(注:調査の)”量”にはさほどの関心はない。関心があるのは”質”。調査が行わる場合は、その結果が、可能な限り信頼のおけるものであることを希望する」と述べ、イタリアのカトリック教会は、虐待被害者を支援し、虐待の再発を防ぐためのネットワーク構築に「真剣に取り組んでいる」と強調。

  さらに、ルッソ事務局長は「被害者への配慮が優先される」とし、虐待を予防するための努力を強める、というCEIの方針を繰り返した。また、 「私たちはすべての被害者に寄り添いたい」としたうえで、「(注:独立委員会による)調査を行したいという”願望”を排除するものではない」と主張した。

 また、常任委員会の会議後に出された声明では、「(注:性的虐待から未成年たちを)守る措置を実施、強化する」ことが強調され、「真実の正義の探求は、未成年者の保護のための教区の担当部署のネットワークと増設中の相談センターが進める本当の変化を支持することで、促進される」とし、「教会は常に性的虐待の被害者の側にいて、彼らが味わった苦しみを決して忘れず、話を聴き、助け、いたわり続ける 」と言明した。

 司教団が前向きな取り組みを強調しているにもかかわらず、被害者たちは、司教団の姿勢に疑問を呈している。

 聖職者から性的虐待をを受けた犠牲者の一人で、被害者支援の会「Rete L’ABUSO」の会長であるフランシスコ・ザナルディ氏は、Cruxの取材に「私は、イタリアの教会指導者たちが(注:独立委員会の)調査を受ける用意が出来ているとは思わないし、教会から自分たちが調査を受けたいとも思わない」と述べ、「教会は”ランプの傘”の下で、ありきたりの対策を出している。前向きの兆候はまだあるが、残念ながら、彼らがそうすべき時に、対策を出さない」と批判。

 また、最近調査結果を発表したフランスやドイツの独立調査委員会のように、調査の独立性が保証され、真剣な取り組みがされれば「役に立つ可能性がある」が、「単なる”見世物”にするためだけなら、役に立たない」とし、「調査は、過去に何が起こったかを知るだけでなく、今の教会ではできない「虐待が今後繰り返されない」保証を目標とせねばなりません」と注文を付けた。

 さらに「イタリアでは、国も、教会も、(注:性的虐待について)話さない方に賭けている。ここ数年、被害者に本気で手を差し伸べようととしたことが無い」と批判。彼の会はイタリアの司教団と正式な接触をしていないが、2019年の2月に教皇フランシスコが召集して開かれた未成年者保護に関する世界司教協議会会長会議の出席者の高位聖職者の何人かとは、連絡を取り合っている、と述べた。

 聖職者による未成年者たちに対する性的虐待は、教会内部の精神的な問題ではなく、「犯罪であり、すべての国が法律に基づいてそれを処理しなければなりません。そして、教会はこれに協力し、怠慢な司教たちに辞任を求め、被害者に補償を提供する必要がある」とする一方で、独立委員会の調査が公正な形で行われた場合、多くの損害賠償訴訟が行われ、補償が求められた場合、教会には「今は、その準備が出来ていないし、対応する意思もないでしょう」と悲観的な見方をしている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年2月1日