・仏で報告書ー性的虐待聖職者は3000人前後、教会関係の被害者は推定33万人にー教皇が悲しみと祈り(VN)

Mr. Jean-Mark Sauvé, president of CIASEMr. Jean-Mark Sauvé, president of CIASE  (AFP or licensors)

(2021.10.5 Vatican News  By Lisa Zengarini)

 フランスの司教団、修道会の委託を受けた「聖職者による性的虐待に関する独立調査委員会(CIASE)」が5日、2500ページに上る最終報告書をまとめ、過去70年間にフランス国内で2900人から3200人の司祭、修道者が性的虐待を犯し、教会関係に一般信徒によるものも含めると犯行当時未成年だった被害者は推定33万人に上ることを明らかにした。

 

*聖職者による虐待は21万6000人、3割がレイプ

 報告書は、1950年から2020年の間にカトリック司祭と修道者から性的虐待を受けたフランスに住む被害者は21万6000人(許容誤差は5万人)で、うち3分の1はレイプされている。これに、とくに教会や修道会経営の学校などで一般信徒から性的に虐待された被害者を含めると33万に達する、としている。

 これに対し、バチカンのブルーニ広報局長が同日記者会見し、教皇フランシスコは先日、フランスの司教団とバチカンで謁見した際、報告書の概要について説明を受けていたことを明らかにした。

 そして「教皇は、この説明を苦しみと悲しみを持って受け止め、まず、思いと祈りを性的虐待の犠牲者にお向けになった」と強調。被害者たちに対して、「勇気をもって声を上げ、フランスの教会にこの恐ろしい現実を気付かせ、最も傷つきやすい子供たちへの主の苦しみに結ばれ、償いの道を歩めるようにしてくれたこと」に感謝されている、と説明した。

 さらに広報局長は、教皇が「フランスの神の民、とくに(聖職者による性的虐待の)被害者たちを主に委ね、主が彼らに、慰めと癒しの奇跡を正義をもって起こしてくださるように」と祈られている、と語った。

 

*「教会の”沈黙の文化”と”組織的機能不全”に”裏切られた”と感じた」

 CIASEは、フランスで聖職者から性的虐待を受けたとの被害申し立てがここ数年、増加していることに対応して、2018年、同国の司教協議会(CEF)と男女修道会協議会(CORREF)が委託する形で、児童保護専門家など21人の委員で発足。その目的は、1950年から2020年の間におけるカトリック教会での未成年性的虐待に関して、事実の確認、どうして虐待がなされたのか、加害者が所属する教区、教会や修道会の対応は適正であったのか、などを厳正に調査し、今後の対策などについて勧告することだった。

 最終報告書が5日朝、ジャン・マルク・ソーヴェ委員長から、エリック・ド・ムーランCEF会長(レンヌ大司教)とシスター・ベロニク・マーロン CORREF会長に提出された後、ソーヴェ委員長や被害者代表による共同記者会見が行われ、委員長は「報告書の策定作業は、時として、深刻な落胆に見舞われることもあったが、”新たなスタート”への希望につながるものでもあった」と述べ、メンバーの一人児童保護問題の専門家であるアリス・カサグランデ氏は、「私たちは”専門家”でなく、“聞き役”に徹した」と語った。

 被害者代表として発言した「ラ・パロール・リベレ」(「解放された言葉」)の共同創設者であるフランソワ・デヴォ氏は、過去20年間にわたって少年たちに性的虐待を繰り返した罪でリヨンの裁判所で昨年、懲役5年の実刑判決を受けた ベルナール・プレイナ元神父から性的虐待された一人だが、「私が苦悶している時に、(教会の)”沈黙の文化”そして”組織的な機能不全”を見せつけられ、『裏切られた』と強く感じた」と述べ、CIASEの貴重な働きに感謝するとともに、抜本的な改革に踏み切るよう、教会指導者たちに強く求めた。

*「”沈黙の法則”、司祭を“神聖化”する風土を改めよ」

 ソーヴェ委員長は、最終報告書が被害の実態を完全に網羅できていなことを認めつつ、「神学、医学、社会学、人類学、精神医学、民法および教会法を含むさまざまな分野にわたって収集し、正確なデータを提供することに努めた」としたうえ、「最も重要なことは、調査が何千人もの被害者との関係を確立するのに役立ったことだ」と指摘した。

 また委員長は、「フランスでは、教会外も含めて550万人(女性の14.5%、男性の6.4%)が18歳までに性的暴行を受けている、とし、「加害者は、家族や友人の割合が最も高いが、それに次ぐのが司祭や一般信徒などカトリック教会関係者で、被害者の8割が少年に集中している」と述べ、教会に対し、「”沈黙の法則”を含む過去の欠陥を認め、聖職者の育成と識別の仕方を改めるなど、前向きな対応に全力を挙げる」よう求め、司祭を過度に”神聖化”する”風土”が残っていると警告した。

 最終報告書は、具体的な勧告として、教会に強力な内部統制メカニズムを導入すること、公平な調査を確実にする司教の役割を明確に定めること、教会の統治への一般信徒の関与を強化すること、など45項目を挙げている。

 委員長は、教会に「真実、赦し、和解の働き」を求め、「カトリック教会は、社会の不可欠な構成要素であり、”同盟の再構築”に取り組む必要がある。損傷したものを回復し、壊れたものを再建するために、あらゆることをせねばならない」と強調した。

 

*「”おぞましい”実態を認め、来月の司教総会で対応を協議」

 委員長の発言を受けた、ムーランCEF会長は、報告書で明らかにされたフランスの教会における性的虐待の「おぞましい」実態を認めたうえで、「被害者たちと共に行動する」決意を表明するとともに、被害者たちが教会当局の姿勢を改めるのに貢献してくれたことに感謝を述べた。そして、司教団として、来月の総会で、この報告を子細に検討し、具体的な対応を協議することを約束した。

 また男女修道会を代表してシスター・マーロン CORREF会長は、「人道に対する罪」に直面して、「無限の悲しみ」と「絶対的な恥」を痛切に感じている、と述べ、「報告書の45項目の勧告は、他の機関と協力して実施せねばならない、教会の信頼回復への厳しいサインです」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年10月6日