・一審無罪だが原告が控訴中の性的虐待容疑のインドの司教の辞表、教皇が受理(Crux)

(2023.6.3  Crux   Contributor  Nirmala Carvalho)

ムンバイ発 – 教皇フランシスコは1日付けで、インド北部のジャランダル教区長、フランコ・ムラッカル司教の教区長辞任の届け出を受理した。ムラッカル司教は、2014年から2年間に修道女に対して13回にわたって性的暴行を働いたとして被害者から訴えられ、逮捕され、2022年にケララ州の地方裁判所で無罪判決となったものの、原告側が不服として高等裁判所に控訴中だ。

 教区長としての職務を解いたことについて、駐印バチカン大使館は声明で、解任は懲戒処分ではなく、教区の”治癒”を進めることを目的としていることを示唆し、「ムラッカル師は引き続き司教の座にとどまり、活動に教会法上の制限は課されない」と説明している。

 ムラッカル司教は2013年からジャランダル教区長を務めているが、現在59歳で、司教定年とされている75歳よりもはるかに若い。本人は、友人や関係者に送ったビデオメッセージで、「教皇は、私が上司との話し合いと祈りをもって書いた辞表を受理された。喜びと感謝の気持ちを込めてこのことをお知らせする」とし、「この機会に、私は直接的、間接的に経験したすべての苦しみと、それが十字架につけられた主の足元に引き起こした困難を捧げます。 神のご加護がありますように」と述べている。

 ムラッカル司教はインド南部ケララ州出身。裁判で原告となった修道女は、2014年から2016年の間に司教が教会を訪問中に13回も性的暴行を働いた、と訴え、彼は、強姦罪で逮捕されたインド初のカトリック司教となった。

 同州の他の5人の修道女も原告を支持したが、これに対して司教は「原告の修道女は自分が不倫を働いた相手の男性の妻から訴えられた報復として、うその性的暴行被害を訴えたのだ」と反論。ケララ州地方裁判所で 2019年11月から2022年1月にかけて39人が証人として出廷して審理が行われた結果、「原告の証言には『誇張と粉飾』が含まれていた」として、無罪判決を出した。

 この判決に対して、ソーシャルメディア上で抗議が起こり、抗議した人の中には「裁判官が事実上、原告を裁判にかける結果になった」とする女性の権利擁護の運動家も含まれており、 検察側は判決を不服として、原告と原告を支援する人々と共にケララ州高等裁判所に控訴している。

 駐印バチカン大使館は声明で、バチカンは、インドの司法当局の判断に従う、としたうえで、教皇のムラッカル司教の教区長としての辞表受理は、「裁判によるものではなく、『司牧的措置』。ジャランダル教区の”健康”のため。ムラッカル司教をめぐって大きな論争が起き、分裂状況を生み出していることから、新しい教区長が必要となった」と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年6月4日