・フランスでも透明性を欠く「性的虐待司教へのバチカンの処分」が明らかに(LaCroix)

(2022.10.17 La Croix  Benoît Fauchet and Félicien Rondel | France)

    バチカンが性的虐待を働いた高位聖職者を処罰しながら、公にするのを避けていると教会関係者の間から批判が出ているが、フランスでも性的虐待で被害者から訴えられていた司教に対するバチカンの”措置”が被害者にも伝えれらないまま、黙って行われていたことが明らかになった。

 問題の司教は、フランスのパリ南東郊外、クレテイユ教区長だったミシェル・サンティエ。同教区の後任教区長、ドミニク・ブランシェ司教が16日に出した声明によると、サンティエは1990年代に若者向けの訓練プログラムを指導していた当時、男子生徒二人に対して”問題行為”を働き、2019年に性的虐待で訴えられていたが、それから1年以上たった2021年1月に司教を辞任した。カトリック教会の司教は通常、75歳が定年だが彼が辞任した時の年齢は73歳だった。

 フランスの 2 つの週刊誌 Golias と Famille Chrétienne が報じたところによれば、バチカンで性的虐待問題を担当する教理省は2021年秋に、サンティエに対して「性的目的のために精神的虐待を働いた」として懲戒処分ー祈りと痛悔の生活をおくることーをしている。LaCroixもそれを確認している。

 2人の被害者が声を上げるまでに30年近くを要したが、その間に、サンティエはフランス西部、リュソン教区長として2001年に司教に叙階され、さらに2007年からクレテイユ教区長を務めていた。2人の被害申し立ては、クレテイユを管轄するパリ大司教区のミシェル・オペティ大司教に送られ、大司教はサンティエ司教に面接したうえで、2019年2月にバチカン教理省に報告。ほぼ同じ時期に、サンティエは教皇フランシスコに辞表を提出し、その中で自身の行為を認めた。

 それにもかかわらず、サンティエがクレテイユ教区長、司教を辞任するのに、1年以上かかったわけだ。しかも、サンティエは2020年6月に教区民たちに「2021年1月に教皇が辞任をお認めになる」と発表した際、その理由を「健康上に理由」と説明していた。

 司教を辞任した後、故郷のフランス北西部、サン・ペール・シュル・メール教区に居を移して、時折ミサ奉仕をしていたが、教区長のル・ブルク司教から「30歳未満の若者とは直接、接触しないように」と求められ、バチカンがサンティエを懲戒処分にしたことが知られると、近くにある修道院への転居を求められた。同教区によると、サンティエは、そこで修道女たちのためにミサを祝い、年配の司祭たちを訪問しているが、「公の奉仕はしていない」という。

 教区事務局によると、「バチカンの懲戒処分はここまで」というが、サンティエ司教の辞任の本当の理由が、どうして 2 年以上も明らかにされなかったのだろうか。

 クレテイユの大聖堂で16日の主日のミサに出たマリアンヌという女性は、「この透明性の欠如は、私たちに衝撃を与えました. 私たちがこの問題について話し合い、教会は透明性を高めることに取り組んでいる時に、この”遅延戦術”には驚いています」と語った。

 同教区の関係者は「公表が遅れたのは、タイミングと被害者に敬意を払ったためだ」と主張している。 2021 年 10 月以前は訴えを受けた捜査はまだ進行中であり、被害者が自分たちの話を公表することを望まなかったので、教区の人々に知らせる必要はないと判断されたのだという。

 サンティエが司祭と司教を務めた 3 つの教区の司教たちは、「最も重要なことは、被害者の訴えが認められ、”事件”の結果が知らされたことだ」と述べるとともに、サンティエが傷つけた人々への「思いやり」を強調している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年10月19日