・バチカン敷地内の小神学校の性的虐待事件の危機は透明化の”報酬”(Crux)

(2021.2.12 Crux Editor John L. Allen Jr.)

  Students at the Pre-Seminary of St. Pius X serve a papal liturgy. (Credit: Screen capture.)Abuse case at Vatican pre-seminary captures risk, reward of transparency

 ローマ発ーバチカン敷地内の聖ピオ小神学校で起きた未成年性的虐待事件について審理を担当するバチカン刑事裁判所は10日、昨年10月以来4回目の公判を開き、被告の一人、ガブリエレ・マルティネリ神父の反対意見を聴いた。

 神父は、第二バチカン公会議が決めたミサ典礼への自国語の使用に未だに反対する動きを背景とした小神学校の司祭たちの”派閥対立”のあおりで”冤罪”を帰せられた、犯行があったとされる寮の構造から、舎監などに知られずに犯行がされることはあり得ない、など、無罪を主張した。

 小神学校は、イタリアのコモ教区が運営しているが、施設そのものはバチカンの敷地にあり、神学校に進む教育を受けるために11歳から18歳の少年10人余りが宿舎に寝起きし、聖ペトロ大聖堂で教皇がささげるミサの侍者を務めている。

 裁判で被告となっているのはマルティネリ神父とエンリコ・ラディス神父の2人。前者は、2012年より前に、聖ピオ小神学校で、神学生として生徒たちを教えていた時、未成年の生徒に性的虐待を働いたとして、後者は同校の校長として虐待を助長し、幇助したとして、それぞれ起訴されている。

 現在28歳のマルティネリ神父は2017年に司祭に叙階され、現在は高齢者向けの医療施設でチャプレンとして奉仕しているが、性的虐待を起こしたのは、原告被害者と共に小神学校に在籍した2007年から2012年の間とされている。

 この時期は、すでに世界中、特に欧米で聖職者による未成年者性的虐待と高位聖職者のこれを隠蔽しようとする対応が大きな問題となり、バチカンも真剣に問題に対処を初めた時期に当たる。しかも、教皇のおひざもとのバチカンの敷地内で起きた問題、ということで、大きな注目を集めている。

 神父が所属するコモ司教区は、2013年に被害者から告発状を受け取り、独自の調査を実施し、「主張には根拠のないことが証明された」との結論を一方的に出した。だが、これに納得しない被害者が教皇フランシスコに直接、嘆願書を送り、教皇は、裁判で真実を明らか伊にするようバチカンの担当部門に指示し、昨年秋から裁判が始まった。

 裁判は今後、3月に原告の弁論、裁判官らの現地調査、公開聴聞などを経て、結審となるが、どのような判決が出るのか。裁判を強く望まれた教皇が判決を受けて、どのような対応をされるか、注目される。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年2月14日