・スイスの教会が性的虐待で独立委員会を設置―仏の大不祥事、教会法改定を受け

Archive photo: Swiss bishops during their Ad limina visit in Rome, November 2021Archive photo: Swiss bishops during their Ad limina visit in Rome, November 2021 

*フランス教会のスキャンダル受け、徹底調査

 独立委設置で合意したのは、スイス司教協議会(CES)と修道会協議会、奉献生活団体で構成する協議会、および同国の信徒組織で構成する中央カトリック協議会で、実際の調査をチューリッヒ大学に委任した。

 調査については、「20世紀後半から現在に至るスイスのカトリック教会内での性的虐待」の具体的な実態を調べ、結果をプレス発表する予定。調査対象は、国内のカトリック各教区の小児性愛を含むあらゆる性的犯罪行為を対象とする。

 独立委員会設置についての共同声明では、まず、「スイスのカトリック教会でなされた性的虐待によって、多くの人々が大きな苦しみを受け、それに耐えてきた」ことを認めた。

*「被害者に正義を保証する」ための最重要案件

 そのうえで、「これらの犯罪に関する科学的研究は、私たちが何よりも犠牲者に負っている義務であり、将来の教訓を引き出す必要がある」と言明。研究の「科学的品質」と「独立性」を保証するために、スイス歴史協会(SSS)によって女性主導の特別研究委員会も設立された、としている。

 また、スイスの司教たち、修道者たちは「自分たちから独立した委員会による調査、研究が『性的虐待の被害者に正義を保証する』ための最も重要な要件であると確信している」とし、調査・研究が「今後の教会のあり方に、被害者たちの声をどのように反映できるか」についても明らかにすることを求めている。

 共同声明はさらに、調査委員会の独立性を確保し、調査・研究作業への干渉を防ぐために、結果が利用可能になった際に限って、メディアと国民に公表され、最終報告はスイスの3つの公用語ーフランス語、ドイツ語、イタリア語で出される、としている。独立委員会の調査と並行して、スイスの司教団は来年3月に性的虐待対処計画に関する詳細な内容を公表する予定だ。

 

*性的虐待加害者に対する罰則の対象拡大

 教会における犯罪処罰を定めた「教会法典・第6集」改定版が今年6月に使徒憲章として発表され、12月8日から発効したが、スイスの教会が性的虐待に関する独立委員会の設置を発表したのはその前日に当たる。

 改定版には、虐待の問題を扱う「人間の生命、尊厳、自由に対する犯罪」に関する新しい章が設けられた。教会法は現在、性的虐待の罪で有罪となった聖職者などを「職務の剥奪やその他の措置で」罰すること求めているが、改定版で、対象行為として、新たに、(小児性愛者が)児童をそうした目的で引き込むことや、児童ポルノの保持、閲覧などが新たに追加された。

 また、性的虐待の被害者を未成年者だけでなく、「imperfect use of reason(理性の働きが不完全)」な人にも対象を広げ、加害者も、司祭叙階されていない修道者、一般信徒も罰則の対象となり得る、とした。さらに、犯罪の疑いがもたれる事案の報告を義務付け、司教の説明責任に関する規程も新たに設けられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年12月9日