・「教会は、性的虐待被害者の声を聴き、権利を守っているか」

Prof. Myriam Wijlens took part in the recent Protection of Minors seminarProf. Myriam Wijlens took part in the recent Protection of Minors seminar 

(2021.12.17 Vatican News  Gudrun Sailer & Devin Watkins)

 教皇庁の未成年者保護委員会がこのほど、「未成年期の性的虐待を訴えた人の教会法の刑事賠償上の権利」と題するセミナーを教皇庁の担当者や専門家の参加で開催した。性的虐待に絡むさまざまな司法制度の規定について意見を交換し、教会法上の刑事訴訟における被害者の権利について理解を深めるのが狙い。

 保護委員会のメンバーで、セミナー参加した独エルフルト大学のミリアム・ウィレンズ教授が、Vatican Newsと会見し、「このセミナーを通して、保護委員会のメンバーは、性的虐待被害者たちの声を聴き、さまざまな法的手段によって被害者たちの権利を深く検討する必要を、改めて認識した」と、以下のように語った。

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ウィレンズ教授:今回のセミナーで、私たちは、教皇フランシスコが最近おっしゃった「耳を傾けること」が賢明だ、と認識しましたーつまり、世界中の(性的虐待に関する)民事裁判の現状について耳を傾けることです。

 法的手続きにおける虐待被害者の権利を、世界の関係者たちがどのように理解し、保護し推進しているのか?虐待の被害に遭った方々から話を聴くことから始めるように、との助言を得ました。フランスから参加したある被害者は、法的手続きでどのようなことを経験したかを語ってくれました。性的虐待そのものではなく、法的手続きで経験したことについてです。

 次に聴いたのは、被害者の法的規範における立場についてでした。現在の法的規範の対応はどうなっているのか?国連のこの問題の担当者を特別報告者として出席してもらい、被害者を保護するための手続きなどを定めた国際的な規範や協定について説明を聞きました。

 その次に、私たちは世界中のさまざまな国から参加した方々を、英米法系、ローマ法系、ゲルマン系など法的な伝統にしたがってグループに分け、話を聴きました。オーストラリア、フィリピン、インド、アメリカの方から始めて、次に、アルゼンチン、スペイン、フランス、イタリア、そしてドイツとポーランドの方の話に耳を傾けました。

 

問:様々な声を聴く中で、何を発見しましたか? 教会法の法律専門家として、何を教えられましたか?

教授:国際的な標準があることを発見しました。そのいくつかには、キリスト教の伝統にルーツを持つものもあります。しかし、本当に興味深かったのは、異なる伝統の国々だけでなく、同じ法的な伝統を持つ国々の間でも、極めて多様な運用がされている、ということでした。

 特にカトリック教会で性的虐待に遭った方々は、自分の国の法的な文化が適切な対応をすると期待しているかもしれないので、多様性が存在することを知ることが重要だと思います。

 世界中のどこの国の教会でもそうだとは言えませんが、自国の教会が法的な制度をもち、世界の教会のために法的手立てを作ることは、教会にとって好ましいことですし、他者の声に耳を傾け、彼らがどのようにしているかを聴くことは、私たちにとって良いことです。。

さて、教会はいつもそうすることはできませんが、法制度を持ち、世界中の教会のために法的な規定を設けている教会にとって、そして私たちが他の人たちと彼らがそれをどのように行うかについて聞くことは良いことです。

問:カトリック教会の性的虐待被害者にとって、今日の主な課題は何でしょうか?話を聴いてもらうこと、それとも、権利を守ってもらうことですか?

教授:私はこう思います。カトリック教会の大きな問題は、すでに被害者の権利に関するにいくつかの規範を、教会が持っているにもかかわらず、被害者たちが十分に分かるようになっていないことです。私たちの教会が持っている規範を実際にどのように運用するかについては、極めて人間的な側面があります。

 簡単な例で説明しましょう。被害者の第一の権利は、性的虐待があったことを実際に申告することです。しかし、申告を受け付けるウエブサイトが開設されていない、あるいは開設されていても、それを見つけるのに大変な苦労をしなければならない、そういう教区が世界にはいくつもあるのです。

 また、被害者からこういう問い合わせがありますー「今、私は被害に遭ったのと別のところに住んでいます。被害を訴えるために、被害を受けた教区に行かねばならないのですか」と。いいえ、無条件で適用されるわけではありませんが、被害に遭った教区でなくても構わない、と教会法は認めています。こういった基本的な質問がセミナーでもされましたー「どのようにしたら、被害者たちにもっとよく情報を伝える事ができるだろうか?改善すべき法的問題は何だろうか?」

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2021年12月18日