・「問題の重大さを多くの方に理解していただきたい」菊地大司教が「性虐待被害者のための日」に改めてメッセージ

(2022.3.18 カトリック・あい)

 菊地・東京大司教(カトリック日本司教協議会会長)は、18日のカトリック教会「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に当たって、「司教の日記」のページに以下のメッセージを掲載した。全文以下の通り。

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 16日の夜遅く、東京の司教館も、ミシミシと音を立てながら、かなり揺れました。東北をまたも襲った大きな地震です。被害を受けられた皆様に、お見舞い申しあげます。

 今週末の土曜日はガクタン司教様の司教叙階式で仙台へ行かなくてはならないのですが、当初予定していたのは新幹線でしたので、別の移動手段を思案中です。

 3月18日は、今年の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたります。東京教区での呼びかけと、司教協議会会長名での呼びかけ文を、以下に再掲いたします。なお東京教区では、できる限り多くの方に祈り、またことの重大さを理解していただきたく、次の主日である20日に、この「祈りと償いの日」の教皇様の意向に合わせてミサを捧げることにしており、わたしも関口教会10時のミサを司式させていただく予定です。

 なおこれに関連した教皇庁の諸文書が中央協議会のホームページに掲載されています。また改訂された教会法の翻訳なども掲載されています。ご参照ください。(教会法の翻訳は、基本的には現在出版されている教会報における用語翻訳と整合性を持つようにしてありますが、一部変更されているものもあり、今後、ラテン語用語の邦訳の見直しから、教会法全体の翻訳見直しへと作業が継続する見込みです)

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*東京教区の皆様 2022年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 四旬節の第二金曜日は、日本の教会における「性虐待被害者のための祈りと償いの日」と定められています。今年は3月18日(金)がその日となります。

 この数年間、世界各地の教会において、聖職者による性虐待のケースが報告されるようになり、調査の結果、同様の事例が多数、過去にさかのぼって存在することが明らかになりました。加えて、聖職者によるそういった行為には、保護の対象である未成年者への性虐待行為もあることが明らかになりました。これは日本の教会も例外ではありません。さらには司教や修道会の責任者が、事実を隠蔽しようとした事例の報告も相次いでいます。

 教皇様は、命の尊厳を守る立場から、これらの事実に目を背けることのないようにと指示をされ、世界中の教会が、この数年、対応のための制度を整えています。東京大司教区でも、すでに対応委員会や窓口を設けていますが、その制度をさらに整える努力を続けてまいります。

 もちろん制度を整えたからといって、すべてが解決するわけではありません。制度を正しくふさわしく運用するための啓発活動が必要ですし、さらに一番大切なことは、被害を受けられた方々の尊厳が回復されるために手を尽くすことであると思います。

 命の尊厳を守るはずの聖職者がこのような正反対の行為をしたことに、心から謝罪いたします。これからも東京大司教区において、すべての人の命の尊厳を守るために、取り組んでいく決意を新たにいたします。

 今年の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたり、東京大司教区では当日の3月18日(金)、またはその直後の3月20日(日)に、それぞれの教会において、教皇様の意向に合わせてミサを捧げるものとします。なおミサにあたっては、「赦しの奉献文」を使うものとします。

 また3月20日(日)の関口教会10時のミサを大司教司式ミサとし、この意向で捧げます。

 日本の司教団は昨年、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を改訂し、中央協議会のホームページで公開しています。このガイドラインは対象を「教会で宣教や司牧に携わるすべての人」、つまり司祭や修道者だけでなく、教会関連施設で奉仕するすべての職員やボランティアとしています。教会共同体のすべての方が、この問題を自分自身のこととして、ともに考え、祈り、行動してくださるようにお願いいたします。

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*日本のカトリック信者の皆様 2022年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 命を賜物として与えてくださった神を信じる私たちには、いのちの尊厳を守る務めがあります。教会の聖職者には、その務めを率先して果たすことが求められるのは言うまでもありません。

 残念ながら模範であるはずの聖職者が命の尊厳をないがしろにする行為、とりわけ性虐待という、人間の尊厳を辱め、蹂躙する行為に及ぶ事例が、世界各地で多数報告されています。中でも保護を必要とする未成年者に対する性虐待という、卑劣な行為を行った聖職者の存在も明らかになっています。日本の教会も例外ではありません。

 加えて司教をはじめとした教会の責任者が、聖職者のこうした加害行為を隠蔽した事例が、過去にさかのぼって世界各地で報告されています。

 教皇フランシスコは、聖職者によって引き起こされたこの問題に、教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求めておられます。また特別の祈りの日である「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるようにと、各国の司教団に指示をされました。日本の教会では、四旬節・第二金曜日を、この祈りと償いの日と定めました。2022年にあっては、来る3月18日(金)がこの「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたります。

 日本の司教団は、2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきました。昨年12月には、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を作成し、日本の教会に委ねられている未成年者の命を守る使命を果たす決意を新たにしています。今後も、よりふさわしい制度とするために、常に見直しと整備を続けてまいります。

 今、シノドスの道を共に歩んでいる教会は、互いに耳を傾けあい、支え合いながら、連帯の絆に結ばれた共同体であることを目指しています。日本の教会が、命の尊厳を守り抜くための努力を怠らない教会共同体であるように、努めて参ります。

 世界中の教会に多くの被害者がおられる、といわれます。無関心や隠蔽も含め、教会の罪を認めるとともに、被害を受けられた方々が神の慈しみの手による癒やしに包まれますように、ともに祈ります。同時に、私たち聖職者がこのような罪を繰り返すことのないように、信仰における決意を新たにし、愛のうちに祈り、行動したいと思います。

 どうぞ、四旬節第二金曜日に、またはその近くの主日に、教皇様の意向に合わせ、司教団とともに、祈りを捧げてくださいますようにお願いいたします。

2022年2月17日 日本カトリック司教協議会 会長 菊地功

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2022年3月18日