改・「司祭のわいせつ行為巡る、高見大司教の発言」で長崎大司教区に地裁が賠償命令-翌日に中村新大司教着座式

 カトリック長崎大司教区に所属する司祭が、2018年に県内の女性信者に対してわいせつ行為を働いた問題では、地元警察が捜査し、2020年2月、「強制わいせつ容疑」で長崎地検に書類送検したものの、同年4月に”証拠不十分”で不起訴。それ以前の2019年8月に、大司教区が女性に謝罪し慰謝料を払うことで女性との間で示談がいったん成立していた。

 だが、不起訴となったことを逆手に取るかのように、高見大司教が、ある会議の席で、被害女性について「『被害者』と言えば『加害が成立した』との誤解を招くので、『被害を受けたと思っている人』など別の表現が望ましい」などと発言。

 この発言を記録した会議の議事録を見せられた女性が改めてショックを受け、2018年に司祭からわいせつ行為を受けたことで発症したPTSD(心的外傷後ストレス障害)をさらに悪化させ、「精神的な苦痛を受けた」として大司教区に慰謝料550万円の損害賠償を求めていた。

 これに対して、長崎大司教区は訴えを否定する形で請求棄却を求め、裁判となっていた。昨年11月に同裁判所で行われた口頭弁論で、高見大司教が尋問に答え、「言葉足らずで勘違いをさせた。『被害者が被害を受けたと思い込んでいる』という意味ではない。加害行為が存在しなかったとは考えていない」と、原告の”勘違い”で片付けるような”釈明”にとどまり、謝罪や賠償に応じる姿勢は見せていなかった。

 長崎地方裁判所の古川大吾裁判長は22日の判決で、賠償命令の理由として「大司教の発言は『性被害自体が存在しなかった』などという旨の言動であり、2次被害を受けないようにする注意義務に違反する行為だ。女性の受けた精神的苦痛は多大だ」と指摘した。

 22日の判決後、原告の女性信者は「私の思いが法律によって理解されたことに安堵しています。聖職者も社会で生活するひとりの人間です。逸脱した行為や言動を見直してもらうよう切に願います」というコメントを出しているが、同大司教区は「判決文の内容を精査し、今後の対応を検討したい」と型通りの言葉を述べるにとどまっている。

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高見・引退大司教、新大司教着座式で「ご心配をおかけしました」と他人事のようなあいさつ

(2022.2.23 カトリック・あい)

 長崎大司教区では、高見大司教が定年で(注:この問題や、同大司教区での不明朗な資金運用による2億5000万円という、教区の財政規模からみて巨額損失発生の責任を取ってではない)辞任し、後任の大司教に、同教区の中村倫明補佐司教が、2019年9月の司教叙階からわずか2年半で昇格することになり、23日に着座式が行われた。

 着座式の冒頭あいさつで高見・引退大司教は出席者への感謝、教区の司祭、信徒たちの協力、支援のおかげで長崎教区、日本の教会のために奉仕できたことに感謝を述べた後、前日22日の長崎地裁による、本人の発言を注意義務違反とする損害賠償命令の判決に触れないまま、「私の力が及ばなかったことで、大変ご心配をおかけしたことをお詫びいたします… 中村大司教と共に、長崎大司教区を建て直し、信仰共同体として成長して行けるように」と述べた。

 また、中村信大司教は、説教の中で、「イエスの手に支えていただきながら、一つになって共に歩んでいきましょう。それがシノドスのテーマでもあります」と訴えた。

 駐日バチカン大使や菊地・東京大司教など多くの参加者が大司教就任の祝いを述べる中で、長崎教区の司祭団の代表者の祝辞とともに語った「長崎大司教区は、諸問題を抱え、教区内外から多くの目が注がれている。そうした中での着座となるが、新大司教と皆、心合わせて諸問題に対応していきたい」に、”本音”に近い言葉が聞かれたように思われた。

 中村大司教の下で、長崎大司教区が”諸問題”にどのように対応し、文字通り、大司教、司祭、信徒が心を一つにして、共に歩み、傷ついた人の心を癒やし、失った信頼を取り戻すことが出来るか、今後が注目される。

 

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2022年2月22日