(2021.11.18 Vatican News Robin Gomes)
18日の「性的搾取と虐待から子供たちを守る欧州の日」にイタリアのTelefono Azzurro (Blue Telephone) などが主催するインターネット会議が開かれ、バチカンの未成年者保護委員会のショーン・オマリー委員長(枢機卿)が、メッセージを送った。
オマリー枢機卿はメッセージでまず、世界保健機関(WHO)のデータを引用する形で、18歳の誕生日を迎える前の女性の5人に1人、男性の13人に1人が性的虐待を受けていること、被害者の少なくとも6割は虐待されたことを誰にも伝えれずにいること、など深刻な状況を説明。
今年の「欧州の日」のテーマは、「信頼の輪を子供たちにとって、本当に安全なものにする」。枢機卿は、「欧州評議会のイニシアチブが市民社会と政府を結びつけ、人的、財政的資源を振り向け、各機関の対応を適切に調整し、児童に対する性的搾取、虐待の問題への人々の意識を高める場を作った」と評価した。
一方で、「欧州の現実を見ると、フランスでは、カトリック教会の性的虐待に関する独立委員会(CIASE)から、1950年から2020年までのに21万6000人の未成年者が教会で性的虐待を受けた、との推計を明らかにされ、その他の地域でも、オーストラリアの王立調査委員会から、未成年性的虐待の40%がカトリック教会に関連して発生している」と指摘。
そのうえで、「これらのデータにショックを受け、こうした害悪に対処するために教会がとっている措置を評価し、定量的、定性的な分析をもとに、すべての有益な勧告を誤ったシステムを変革するために役立てる、という努力を曖昧にすることはできません」とし、また、「私たちが確認しないものを修復することはできない。問題の核心に対処しなければ、壊れた信頼を取り戻すことはできません。率直で、独立した調査、情報に基づく行動が必要です」と訴えた。
また枢機卿は、「性的虐待を予防し、子供たちを守る対策を立て、進めるために、多くの情報を得る方法を、市民社会と学問の世界から学ばなければなりません。そして、お互いに学び合うことで、私たちは真の『教会』となり、子供たちの保護を最優先する『社会』を作ることができるのです」と述べ、互いを信頼する関係と、組織横断的な支援体制の構築の必要を強く訴えた。
さらに、「教皇フランシスコとバチカンの未成年者保護のための委員会は、『未成年の性的虐待被害者が、意味のある効果的な政策と手順の実施のためのカギを握っている』と確信しています」とし、教皇が「聖職者による性的虐待とその隠蔽について」と題して、2018年に世界の信徒たちに宛てた手紙で「時が経つにつれて、私たちは多くの犠牲者の痛みを知るようになりました。彼らの負った傷は、決して消えることがありません」と語られていたことを挙げた。
そして、「性的搾取と虐待から子供たちを守る欧州の日」に合わせて、18日をイタリアの教会が、被害者たちのために同国の全教会が祈る日としたことを評価し、この日が、聖職者による性的虐待の被害者を公けに認知し、教皇が全世界の信徒たちに宛てた手紙で強く望まれたように、すべての信徒、神を信じていない人の間に、この問題への認識を深めるようにすることを願って、バチカンの未成年者保護のための委員会を通して、教皇が設けられたものであることを、改めて強調し、その教皇の願いが果たされるように祈った。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)