・「中東欧の教会の性的虐待問題への取り組みに期待」-中東欧会議のキーパーソンが語る

Fr Hans Zollner, SJ, in the hallways of the Pontifical Gregorian UniversityFr Hans Zollner, SJ, in the hallways of the Pontifical Gregorian University 

 中東欧のカトリック教会の代表たちによる「聖職者の性的虐待から未成年者や弱い立場にある大人たちを守る会議」が4日間の予定で19日から始まったが、主催者のバチカン未成年者保護のための委員会のメンバーで教皇庁立グレゴリアン大学の人類学研究所、弱者保護センター所長のハンズ・ゾルナー師(イエズス会士)がVatican News のインタビューに答えた。

*長い間共産政権下にあった中東欧の教会の問題

 ゾルナー師はまず、中東欧諸国の持つ歴史的な問題について、「戦後数十年にわたって、カトリック教会も共産政権の下に置かれてきたため、教会内での権力の乱用、不正行為、それに対する批判や発生した事件の処理などを公然と行うことに 確かに困難がありました」と説明。

 そのうえで、聖職者による性的虐待の問題は、「中東欧諸国に限らず、世界の多くで、家族など親しい人の間でも、話をすることが難しかった。人々は、性の問題について話すことに、不快を感じます。司祭や教会の権力者による性的な不正行為についてはなおさらです」と指摘した。

 そして、この地域の過去の歴史が、「人々の、性的虐待について話したり、告発したりする力を、さらに弱めている」とし、「共産主義者たちは人々の言動を監視しており、教会は、そうしたことから守られる、自由の拠点となっていた。当局や法執行機関を本当に信頼しない場合に限って、その自由を維持することができたのです」と述べた。

 さらに、「中東欧諸国で育った人たちは、自分が『政府と法執行機関の敵』であることを知っていた。司法制度は独立しておらず、教会での不正行為の訴えをことさら大きく扱う傾向がありました」と述べ、さらに「見過ごされがちなもう一つの側面は、共産政権に反対した人々を罰するために心理学と精神医学が使われた、ということです。彼らはいわゆる”精神科クリニック”に送られましたが、投獄し、拷問するためにも使われました。それが、中東欧の人々に、政府当局、メディア、精神医学に不信を抱かせました」と語った。

*各国の司教協議会は、性的虐待の年次報告書作成を

 そして、ゾルナー師は、各国の司教協議会が、性的虐待事件への対処、被害申し立ての件数、告発された人々に対する訴訟などに関して年次報告書を作成することを求め、「世界の他のいくつかの国の司教協議会では、そうした年次報告書が作られている。バチカンの未成年者保護委員会は中東欧の司教たちにも、年次報告書の作成を希望しています」とする一方、「各国の状況は非常に異なっています。スロバキア、クロアチア、ポーランドなどのカトリック教徒が国民の多数を占める国もあれば、アルバニアやブルガリアなどのように少数の国もある。このように国による違いは、それぞれの教会が利用できる財源と人的資源が大きく異なること、そして性の問題と性的虐待について話すことへの文化的態度が異なることを意味します」と指摘した。

 だが、現在の中東欧の教会の状況を見ると、「直面しているさまざまな状況にもかかわらず、未成年者と社会的弱者の保護に関して、すでに多くのことが行われている。私の知る限り、中東欧諸国すべての司教協議会が聖職者による性的虐待に対処し、保護を促進するためのガイドラインを確立しています」と努力を評価した。

 

*未成年者保護カリキュラムを導入する大学も増えている

 今回の会議の基調講演の1つは、未成年者の保護のカリキュラムに取り組み始めたカトリックの大学について焦点を当てている。それによると、ウクライナのリヴィウ、クロアチアのザグレブ、スロバキアのルジョムベロク の三つの都市にあるカトリック大学では、聖職者による未成年の性的虐待からの保護についてのコースがすでに開設されており、グレゴリアン大学の人類学研究所と共同で開設準備を始めている大学もある。

 「聖職者による未成年や弱者への性的虐待問題の解決は長い道のりだ、ということを認めなければなりませんが、効果的な対策の実施に向けて取り組んでいる人々や機関がすでに存在するのです」とゾルナー師は今後への強い期待を表明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年9月20日