(評論)3月19日に東京地裁で2年目に入る神言会裁判、21日は「性的虐待被害者のための祈りと償いの日」だが、日本の教会に自覚はあるのか

(2025.3.17 カトリック・あい)

 東京在住のカトリックの女性信徒に繰り返し性的暴行をしたとされる会員司祭(当時)が所属していた神言会に対して損害賠償を求める裁判は2年目に入り、19日午後3時半から東京地裁第615法廷で8回目が開かれる。裁判の内容の説明と原告支援の集会は同日午後4時から東京弁護士会館の509号室で予定されている。

 日本のカトリック司教団は、3月の日本のカトリック教会の「祈りの意向」を「性虐待被害者のために」とし、21日を「性被害者のための祈りと償いの日」と定めているにもかかわらず、教区レベルでも、小教区レベルでも司祭、信徒たちにほとんど共有されていない。

 司教団の公式サイトであるカトリック中央協議会ホームページで見ることのできるのは、司教協議会会長の菊地枢機卿(東京大司教・神言会所属)が2月1日付けで出したメッセージと、3月21日用の「リーフレット」のお知らせだけだ。日本国内で、確認されただけで数人に上る聖職者による性的虐待被害者への具体的な謝罪も、行動もなく、この裁判に対しても”無言”のままだ。

 ついでに言えば、このホームページのお知らせのトップ記事(3月17日現在)は、2025年聖年『希望の巡礼者』司教団公式巡礼で、菊地功枢機卿のローマ小教区着座式への参加も含めた「Aコース ルルド・パリ・ローマ10日間(団長: 中村倫明・長崎大司教)=代金一人90万9060円」「Bコース アッシジ・ローマ8日間(団長: 前田万葉枢機卿・大阪大司教)=809,770円」だ。

 ちなみに筆者が所属する教会の有志が5月に企画している「2025年聖年‐戦後80年を振り返り、平和を祈る」一晩で10万人が亡くなった東京大空襲被災地を中心にめぐる巡礼の費用は一人6500円である。

 何十万もの多額の弁護士費用を自前で負担し、精神的な苦痛の中で修道会や教区の所属司祭の性的虐待に対して謝罪を求める訴訟を続けている、あるいは裁判継続が困難となり、やむなく”和解”に応じた被害者たちがいることを、「団長」たちは、どう考えているのだろうか。

 19日の東京地裁での裁判には、今回も被害者原告を支援する聖職者、信徒など50人近くが傍聴する見通しで、この「カトリック・あい」のほか、一般紙では朝日新聞が継続的にフォローしているのに加え、今回はNHKも取材に来ることが予定されている。

 カトリック教会の3月の祈りの意向では、「性虐待被害者の受けた心と体の傷が癒され、神との交わりの中で生きる希望を見出すことができますように」と祈ることになっている。「祈りには行動が伴わなければならない」と教皇フランシスコが繰り返し言われているのではなかったか。日本の教会のリーダーである司教の方々に、キリストの苦難と十字架上の死、そして復活を準備するこの四旬節に、その自覚と行動が試されている。

(代表・南條俊二)

 

 

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2025年3月17日