(2025.6.6 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen)
Pope Leo XIV meets with members of the Pontifical Commission for the Protection of Minors at the Vatican June 5, 2025. (Credit: Vatican Media.)
ローマ発-教皇レオ14世が5日、バチカンの未成年者・弱者保護委員会(Pontifical Commission for the Protection of Minors) のメンバーと一時間にわたって面談し、委員会の活動について最新情報を得る一方、教皇として虐待問題にどれだけ真剣に取り組むかについての明確な試金石に直面した。
面談後の委員会の声明によると、教皇に報告した委員会の性的虐待に関する取り組みの中には、現在作業中の「セーフガードのための普遍的ガイドラインの枠組み」や、グローバル・サウスの国・地域におけるセーフガードの取り組みを支援することを目的とした「メモラーレ・イニシアティブ」、そして「セーフガードに関する2024年世界報告書」などが含まれた。
そして声明で、「全委員の一致と合議制へのコミットメント 」を改めて表明し、バチカンの関係部署の 「協力関係の強化 」に感謝を述べるとともに、「私たちは被害者の声に耳を傾け、共に歩み、慈愛の心で神の民全員を守るために努力するすべての教会共同体を支援する約束」を再確認した。
だが、被害者に寄り添い、支援する、という委員会の誓約にもかかわらず、世界の教会は、教皇レオ14世の選出に先立つ枢機卿会議も含め、性的虐待問題への対応への信頼性に対する継続的な批判に直面し続けている。
特に教皇フランシスコの逝去と教皇レオ14世の選出の間の教皇移行期間中には、未成年者への性的虐待疑惑のために教皇フランシスコによって聖職を制限されたペルー人枢機卿フアン・ルイス・チプリアニ・ソーンのケースに世界的なスポットライトが当てられた。
現在81歳のチプリアーニ枢機卿は、ペルーとラテンアメリカ全域のカトリック右派にとって最も著名で影響力のある枢機卿の一人であり、特に1999年から2019年までの20年間、リマ大司教を務めた。リマ市長のラファエル・ロペス・アリアガ氏とは今日に至るまで親密な関係を保っており、彼はまた、指導部や他のトップメンバーがさまざまな虐待や財政犯罪で告発されている保守的な教会グループ、現在は弾圧されているソダリティウム・クリスティアナ・ヴィタエ(SCV)とも親しい。
そのチプリアーニがこの一月、思春期の少年への性的虐待について、スペインの新聞『エル・パイス』で報道され、2019年に教皇フランシスコから教皇選挙への参加と枢機卿服の着用を制限される制裁を受けていたことが明らかになった。匿名を条件に同紙のインタビューに応じたある人物は「16歳だった1983年から2年間、教会の告解室でチプリアーニから性的暴行を受けた」と語り、「何年も沈黙を守っていたが、2018年にようやく教皇に告発することを決意した」と述べている。
2002年にバチカンに出されたチプリアーニに対する以前の告発は、正面から取り上げられることがなかったが、2018年の告発によって、チプリアーニは司教定年の75歳になった直後の2019年1月に辞表を提出し、聖職に制限を受けることになった。それにより、彼は赤い枢機卿の式服や枢機卿職に関連するその他のシンボルを着用すること、許可なくペルーに戻ること、将来の教皇選挙への参加が禁じられたと見られる。
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だが、チプリアーニはこれらの制限を繰り返し無視。今年1月にはリマを訪れ、ロペス・アリアガ氏から名誉賞を授与され、自分に対する疑惑を否定する公的声明を過去3か月に数回も発表して故教皇の不当な手続きを非難し、ペルーの司教団に自分の聖職に対する制限を確認する声明を”修正”するよう要求した。枢機卿の記章やシンボルを使うなという命令にも背き、故教皇が埋葬された聖マリア大聖堂で4月27日に行われた追悼晩餐会には、赤い枢機卿のローブを着て出席した。
チプリアーニはまた、故教皇の葬儀にも参列したと見られているが、これは彼の聖職を制限した故教皇に対する侮辱だと多くの人が認識している。彼はまた、レオ14世選出の翌日の5月9日にシスティーナ礼拝堂で行われた新教皇と枢機卿団による記念ミサや、5月18日に聖ペトロ広場で行われた新教皇就任ミサにも参加している。それ以前、教皇選挙前の枢機卿団の総会にも出入りする姿が見られた。
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このようにチプリアーニが数々の制限を破り、教皇選挙前の枢機卿会議に参加したことについて、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は記者団に、「教皇選挙のルールを定めた教皇ヨハネ・パウロ二世の使徒憲章『 Universi Dominici Gregis(使徒座空位と教皇選挙について)』では、病気などの個人的な支障がない限り、すべての枢機卿が教皇選挙のために召集され、参加できることが明確になっている」と説明するにとどまった。
性的虐待の被害者や支援者たちの反発の波にもかかわらず、バチカンと枢機卿会議はチプリアーニの地位については沈黙を守ったままだが、もう一人の問題枢機卿、2023年にバチカン裁判所で横領と詐欺の罪で禁錮5年の刑を言い渡されたアンジェロ・ベッチューの参加については「選挙人の名簿に載っていない」との声明を出している。
チプリアーニが教皇選挙前の行事やレオ14世の教皇就任のための典礼に繰り返し参加していることは、多くのバチカン観測者にとってスキャンダルの種であり、チプリアーニを告発した人物からは「逆恨みの行為」と非難されている。
一方、チプリアーニやロペス・アリアーガとつながりのある個人やメディアは、世論の反発が広がる中、被害者とされる人物を批判し、信用を失墜させようとしており、あるメディアはその人物の身元をリークしている。
だが、バチカンで、聖職者の性的虐待問題を担当する教理省は、チプリアーニに対する処分の内容の公表を繰り返し求められているにもかかわらず、応じておらず、教皇フランシスコによる措置後のチプリアーニの現在の地位は不明のままだ。彼の地位が明確でないこと、そしてこの件に関してバチカンが教皇選挙中に行動を起こさなかったことは、特にペルーの性的虐待被害者や支援者たちにとって、依然としてスキャンダルの種となっている。
バチカンで役職に就くまでの約30年間をペルーで宣教師として過ごした教皇レオ14世にとってチプリアーニは、「彼の指導の下、教会が聖職者虐待の問題をどのように扱うか」を判定するリトマス試験紙として突き付けられた事案である。