(評論)「いまだに後を絶たない聖職者の性的虐待。嘘、沈黙、被害者への軽蔑は教会にふさわしくない」(La Croix)

(2024.9.12 La Croix   an essayist and columnist   Jean de Saint-Cheron )

Jean de Saint-Cheron in the courtyard of the Institut catholique de Paris, December 15, 2022. (Phot

 

Jean de Saint-Cheron in the courtyard of the Institut catholique de Paris, December 15, 2022. (Photo: Aleister Denni/La Croix)
 

 著名な聖職者による性的虐待の暴露が続く中、カトリック教会は真実の追求を強化しなければならない。教会内部では「秘密を守りたい」という誘惑が依然として強いからだ。

 「悪い良心は悪い評判よりも対処しやすい」とフリードリヒ・ニーチェは書いた。この言葉はまさに真実である。

 すべての人間とすべての人間の組織は、評判を汚すよりも真実を犠牲にして面子を保つことを好むほどだ。もし私たち全員が額に罪を刻みつけて歩き回ったり、家族が秘密を白日の下にさらしたり、企業が看板で法律違反を宣伝したりしたら、人生は耐え難く不条理なものとなるだろう。

 私たちの過ち、裏切り、失敗が理由もなく暴露されないのは当然である。そして、誰かが私たちを不正行為で告発した場合にのみ、私たちの評判は正当に傷つけられる可能性がある。

 私たちが本当に有罪であるなら、被害者に対する正義は、私たちの行動についての真実を明らかにすることを要求する。多くの場合、虐待の被害者は、周囲の人々に自分の行動を「軽率な行為」として説明するだろう。だが、これは、非常に倒錯した言い回しだ。「私はあの若い女性に軽率なことをした」と言うのは、良心を犠牲にして自分の評判を守る非常に陰険な方法であり、「誘惑は被害者に原因があり、非難されるべきは被害者だ」という意味を込めている。

ニーチェは正しかった。

 教会が、他の人間の組織と同様に、そのイメージを守りたい、と思うのは理解できる。確かに、私たちの中には、「教会は、単なる組織ではなく、特別な勇気を必要とする、高次元の真実を伝える存在であるはず」とささやく、”小さな理想主義的な声”が存在する。イエスは「白く塗られた墓」に対して警告された―「外側は美しく見えるが、内側は骨やあらゆる種類の汚れで満ちている」と。

 しかし、この世のものではない完全な聖性に到達する前に、まず取り組むべき緊急の課題は、被害者がいる場所で彼らに正義をもたらし、手段がある限り、可能な限り他の被害の発生を防ぐことだ。一部の国の教会はそのための取り組みをしているようだが、次々と現れる新しい事件(声を上げた被害者の大きな勇気のおかげで明るみに出た)は、まだこの問題が終わっていないことを思い起こさせる。

 「これは奇妙で長い戦争。暴力が真実を抑圧しようとする」とブレーズ・パスカルは書いた。正義を犠牲にして評判を守る暴力だ。

 尊敬される人物、司牧者が汚名を受け入れるのは難しい。彼らの「カリスマ性」が危険で容認できない行動を隠し、陰で邪悪な行為を続けるの正当化しないことを認めるのは難しい。

 しかし、嘘、沈黙、被害者に対する軽蔑は教会にふさわしくない。慈善の心から生まれた真実への努力よりも、教会の評判を傷つけることになる。

*ジャン・ド・サン・シュロンはパリ政治学院とソルボンヌ大学を卒業。現在、パリ・カトリック研究所の所長首席補佐で、La Croixの週刊コラムニスト。日刊紙ル・フィガロや、ラジオ・ノートルダム、KTO、RCFに定期的に寄稿している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年9月14日