・被害者たちが切実な訴えーカトリック札幌教区が教会におけるハラスメント意識調査結果・後編を発表

(2024.7.30 カトリック・あい)

 カトリック教会の札幌教区では、教区内の全信者を対象に「ハラスメントのない教会共同体を目指して~教会におけるハラスメント意識調査~」を実施し、その結果の「前編」を教区ニュース4月号で公表していたが、同8月号でその「後編」として、調査で被害者たちが語った声をまとめて掲載した。次回、教区ニュース11月号では、調査結果から見えてきた課題と改善の道を探る特集を組むとしている。 

 この調査では、全回答者548人のうち約4割、237人が「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思う」と回答。うち158人が自分自身がハラスメントを受けた被害者だ。その訴えのいくつかを以下に紹介する。

 被害を誰かに相談したのは106人で、その結果について「相談してよかったかどうかわからない」が47%、「相談すべきではなかった」が7%と否定的な受け止めが過半数を占め、中には「神父が『他人に言うと大事になる』と止めた」「(相談しても、)何も進展がない」など、「二次被害を受けた」との訴えもあり、そもそも「何をしても解決しないと思った」と答えた人が被害を誰にも相談しなかった62人の半分を占めている。

 またハラスメント行為への思いについての質問には、「教会(神の家)であることを考えると、絶対にあってはならない」「教会から離れるきっかけになってしまう」、さらに「教会に愛がない。愛が冷え切っている」などの答えがあった。

 そして、ハラスメントの中で最もひどい「性的虐待」についての経験も寄せられ、「私(男性)は少年期から青年初期のころ、ある司祭から性的虐待を受けた。自分の中に封印して生きてきたが、辛く耐えられなくなり、限られた何人かに打ち明けた…多くの被害者は教会から離れていると思われるが、教会が本当に被害者に真摯に向き合おうとするなら、被害者の声を聴く努力をしてほしい」「教会で…男性信者からいきなりお尻をつかまれた。男性信者がいきなり女性信者に覆いかぶさるのを見たこともある… 教会が祈りの場であり、神聖なところであることを忘れないでほしい」との訴えもある。

 あるいは、「二次被害、宗教ハラスメント」について、「傷つく思いをし相手に伝えると、否定される。周りに相談しても否定される。『あなたの思い過ごし、あなたの考えが間違っている、相手を非難している』・・といわれる。奉仕を強要され、断ると、『傲慢』『自信過剰』と非難され、聞き入れてもらえない…信者をやめることができない、という思いに苦しめられる」という悲痛な声も。

 そして「司祭は、なんでもご注進、ご注進と報告する信徒や役員の告げ口を信じ、自分の目でしっかり見ずに一方的に言葉を発し、対応するのは、すごく危険。司祭や信徒の言葉で教会から離れてしまった方がいるのは事実。心にとめておいてほしい」との批判を込めた、司祭への要望も出されている。

 

 「後編」の全文は、⇒パーソナル編集長PDFドキュメント (csd.or.jp)をクリックしてお読みになれます。

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参考【教会におけるハラスメント意識調査まとめ・前編】

・教会での性的虐待含むハラスメント、4割が「ある」と回答ーカトリック札幌教区が信者意識調査結果発表

(2024.4.17 カトリック・あい)

 カトリック札幌教区のハラスメント対応デスクは2017年から小教区を訪問し啓発活動を行っているが、新たな体制づくりと今後の啓発活動のため2023年7月1日から11月30日にかけて教区の全信者を対象とした札幌教区ニュース4月号で、調査結果の「前編」を公表した。

 「前編」では、全調査項目の集計結果と寄せられた具体的なハラスメント事案を紹介し、8月に公表する「後編」では、被害者の声を中心にまとめ、今、何が問題なのかを考えるとしている。

 聖職者による性的虐待など教会でのハラスメント行為は、教会への信頼を失墜させるものとして深刻な問題になり続けているが、日本の教会の取り組みは、隠ぺいを容認する従来からの体質もあって緩慢。日本のカトリック教会における性的虐待を含めたハラスメント意識調査の実施は15ある教区の中で、「カトリック・あい」が確認できたのは札幌教区のみだ。

 今回の札幌教区の調査は、全小教区の聖職者、修道者、信徒、求道者を対象に、無記名調査票とWEBによる自由回答の形で実施し、回答があった584件をもとに分析を行った。回答率は12.3%。

 回答者の内訳は、年齢は70歳代が最も多く31.3%、60歳代が23.8%、80歳以上が21.9%と続き、50歳代は11.1%、40歳代は4.3%、30歳代は2.1%と若くなるほど少なくなり、20歳代はわずか1.2%。受洗後の年数は20年以上が最も多く79.1%、次いで5年以上10年未満が11.3%、1年以上5年未満が9.2%など。

 性別は女性が60.6%を占め、男性が26.2%、無回答12.2%、答えたくないが1.0%となっている。

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*「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を知っている信者は3割

 質問は15問から成っているが、このうち、日本の教会の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」(今年は3月1日)について、知っているかどうか聞いたところ、「知らない」が37.7%、「聞いたことはあるが内容は知らない」も30.5%。「知っている」は30.7%にとどまっている。さらに、この日の行事に参加したか、との問いには、「ない」が61.5%、「教会ではやっていない」が24.1%で、「参加したことがある」はわずかに11.6%だった。

 

*「ハラスメントはある」が4割、うち「自分がされた」が7割弱

 札幌教区のハラスメント防止宣言を「知っている」のは22.6%、ハラスメントデスクを「知っている」も20.9%にとどまる一方、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思うか」との問いには、40.6%が「あると思う」と答え、ハラスメントを「自分がされた」が66.7%に達している。受けたハラスメントの内容(複数回答)は「人前での感情的な叱責」が最も多く41.8%、「挨拶や話しかけを無視する行為」37.3%がこれに次ぎ、「人格否定や差別的な言葉による叱責」「悪質な悪口や陰口」「宗教的な経験年数や知識量での叱責や避難」「奉仕の強要」「私生活・プライバシーへの過度の介入」がいずれも20%を超えている。

 

 

*行為や言葉によるセクハラ、児童性的虐待も

 さらに、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思う」と回答し以上のような、事前に用意された選択肢以外に「その他」として、回答者が書き込んだ具体的経験で、「セクシュアル・ハラスメント」として、司祭・聖職者から「セクハラすれすれの行為を受けた」「ハグされる感じで抱かれて嫌な気持ちになった」「子宮摘出手術を受けた信徒に、聖職者が『じゃあ、もう女じゃないんだ』と言った」、信徒からは「教会で手伝いをしている時に、尻をつかまれた」「『元気をもらいたいから』と手を握られた」「酔った勢いで個人的に連絡された」などの指摘があった。

 また「児童に対する性的虐待」として、「少年期から青年期にかけて、聖職者から児童性的虐待を受けた」「体を触る、服の中に手を入れるなど性的行為をされた」や、「児童虐待」として、「侍者教育は児童虐待だった」「暴力を振るわれた」との回答があった。

*ハラスメントは「信徒同士」87%、「司祭・修道者から」24%

 ハラスメントがどのような関係で行われたか、との問いには、「信徒同士」86.9%に次いで、「司祭・修道者から求道者・信徒へ」が24.0%と多い。その後どうしたか、との問い(複数回答)に対しては、「どこにも相談できなかった」と「信徒に相談した」がいずれも39.2%と最も多く、「司祭に相談した」は14.6%にとどまり、さらに「ハラスメントデスクに相談した」はわずか1.3%しかない。また「どこにも相談できなかった」理由(複数回答)を聞いたところ、「自分が我慢すればよいと思った」が51.6%、「何をしても解決しないと思った」が41.9%を占めている。

*ハラスメント防止に必要なのは信徒、教会役員、聖職者の「意識改革」

 そして、「教会でのいじめ、いやがらせ、ハラスメントを防止するために必要な措置」(複数回答)として回答者が挙げたのは、意識改革と研修で、「信徒の意識改革」63.3%がトップ、「教会役員の意識改革」34.2%、「聖職者の意識改革」31.2%がこれに次いでいる。また、「信徒の研修」32.4%、「教会役員の研修」16.8%、「聖職者の研修」16.3%となっている。

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2024年7月30日