
(2022.12.7 カトリック・あい)
米国の有力カトリック・メディア、CNSが5日付けで伝えられるところによると、著名なイエズス会士で芸術家のマルコ・イワン・ルプニク神父がスロベニアの修道女たちに対する性的虐待の訴えを受け、イエズス会本部が調査の結果、神父の聖職者としての活動制限の措置を取った。
イエズス会本部が 12 月 2 日発表した声明によると、神父に対する訴えは昨年、バチカンに対して行われ、バチカンは10月に時効を理由に教会法に基づく措置を取ることを断念したが、イエズス会は独自の調査の結果を基に、神父に対して、信徒の告解の聴取、霊的指導を行うことを禁止した。なお、訴えには、未成年に対する虐待は含まれていない。
ルプニク神父はローマに本部を置きカトリック近代芸術の企画・作成・発信を行う「 Centro Aletti」の代表を務め、「2022 年世界家族会議」の公式画像の作成者であり、30 年以上にわたって世界中の教会、聖堂のモザイク アートをデザインしてきた。 バチカン宮殿の2階にあるRedemptoris Mater Chapel の修復を監督したこと、米ワシントン D.C. の聖ヨハネ・パウロ二世 ナショナル シュラインにある Redemptor Hominis 教会などの設計でも知られている。
だがCNSによると、神父は公的活動の制限にもかかわらず、11 月 30 日に、ブラジルのパラナ・ カトリック大学から名誉博士号を受け取り、Centro Aletti も毎日曜日に福音に関する神父の講話を YouTube で公開し続けている。それより前、 ローマ教区は2 月に神父が聖体礼拝について語っているビデオを投稿していた。
イエズス会によると、バチカンで聖職者の性的虐待問題を扱う教理省 は、1990 年代初頭からローマ教区で活動していた同神父の予備調査を行うよう、会本部に求め、会本部はこれに応じて、調査を行い、報告書を10月に教理省に提出した。だが、教理省は「訴えの対象となっている行為が、時効になっていることが明らかになった」として、省として、この問題への対応を進めることを断念した。
CNSがローマ教区の関係者から得た情報によると、イエズス会は、ローマ教区に、教区内でのルプニク神父の司牧活動を制限するよう提案したが、ローマ教区は、「性的虐待の申し立があったのは、スロベニアであり、ローマではないこと」を理由に、調査を行わなかったが、ローマ教区の補佐司教が同神父の問題と関係なく、スロベニアのLoyola Communityに関して調査する過程で、現地訪問中に、少なくとも9人の女性から同神父に対する訴えを受けた、という。神父はLoyola Communityで霊的指導者を何年も続けていたと言われている。
また、法学者と宗教学者が運営するイタリアのウェブサイト「Silere non possum(私は黙っていられない)」は、ルプニク神父がLoyola Communityで奉献女性を虐待したという報告を掲載している。