(2024.11.12 La Croix Héloïse de Neuville)
英国国教会の最高指導者、ジャスティン・ウェルビー、カンタベリー大主教が12日、未成年者への性的虐待をめぐる事件への対応を批判する報告書の発表を受けて、引責辞任することを明らかにした。
1956年1月生まれの大主教は、 石油業界で11年間のキャリアを積んだ後、ダラムのセント・ジョンズ・カレッジで聖職に就くための訓練を受け、 多くの教区教会で奉仕した後、2007年にリバプール教区長、2011年にダラム司教となり、2013年より英国国教会の第105代カンタベリー大主教を務めていた。英国国教会と世界の聖公会の両方を率い、進歩的な考え方で知られ、最近では、画期的な福音宣教計画に着手していた。
大主教の辞任表明は、1970年代から2010年にかけてジョン・スマイスがサマーキャンプで少なくとも115人の少年や青年に対して犯した性的虐待に関して、英国国教会の高位聖職者が隠蔽工作を行っていた、とする独立機関の調査報告書、マキン・レポートが発表されて1週間後になされた。10月の世界代表司教会議(シノドス)総会に参加した英国国教会の代表者3人が11月9日にまとめたウェルビー大主教に辞任を求める嘆願書には、すでに5000人を超える署名が集まっている。
英国国教会の弁護士であり、献身的な信徒とされていたスマイスは、報告書で 「間違いなく英国国教会に関連する最も多くの連続虐待を犯した人物」と糾弾。ウェルビー大主教がスマイスに関する虐待疑惑を知らなかったことは「ありえない」としている(ウェルビー大主教は強く否定しているが)が、2013年の大主教の事件への対応が注目されていた。
報告書は、この年に、大主教はこの元弁護士に対する告発を公式に知らされた、とし、「大主教は警察に事実を報告することができたし、すべきだった」と明確に結論づけている。この事件が公になったのは、子どもたちへの虐待を特報したテレビ放送、チャンネル 4の調査報道がされた2017年のことだったが、ウェルビー大主教の不作為によって、スマイスは裁きを免れたまま、2018年に亡くなっている。
ウェルビー大主教は「2013年から2024年までの長い間、被害者たちに”再トラウマ”を与えていることについて、私が個人的、組織的責任を取らなければならないことは極めて明白だ」と辞任の理由を説明した。大主教は事件を隠蔽したことについては否定したが、大主教としての職務を続け、英国国教会の性的虐待に対する信頼できる闘いを率いるために必要な権限を、もはや持っていないことを認めた。 そして、「今回の私の決断によって、英国国教会がいかに真剣に変革の必要性を理解し、より安全な教会を作ることに深くコミットしているかが明確にされることを願っている。退任にあたり、私は、すべての虐待の被害者、生存者と悲しみを分かち合いたい」と述べた。
様々な国家機関に対するより広範な調査をもとにした4年前の報告書によると、1940年代から2018年の間に英国国教会の関係者390人が性犯罪で有罪判決を受けている。今回の不祥事は、さらに英国国教会に大きな泥を塗った形だ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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