(2024年7月16日に逮捕されたアンソニー・オディオン神父(57歳)=提供:ウェイコ警察)
(2026.5.13 Crux Managing Editor Christopher R. Altieri)
少なくとも8人の女性に性的暴行をしたとして起訴された人気説教師のカトリック司祭の裁判が25日、 米テキサス州の刑事裁判所で始まる。 『Crux Now』の調査によると、この司祭に関するオースティン教区の声明には、時期によって著しい矛盾が見られ、教区当局や他の主要な教会管区による対応に疑問が投げかけられている。
*事件の概要
被告は、ナイジェリアのウヨ教区所属のアンソニー・オディオン神父(57)。2006年から2012年までテキサス州のオースティン教区で奉仕し、霊的カウンセラーおよび癒しの奉仕を行う人気説教者として多くの信者を集めていた。
現地警察当局によると、2024年7月に児童ポルノ所持の容疑でオディオン神父が逮捕された後、少なくとも8人の女性が名乗り出た。彼女たちは、神父が司祭および霊的助言者という立場を利用して、自分を操り、性的暴行を加えた、と主張している。
テキサス州法では、聖職者や牧会・霊的権威を持つ者が、その立場を利用して他者を性的行為に参加させることは重罪とされている。
報告されている様々な性的暴行は2007年から2023年の間に発生したとされ、そのうちのいくつかはオディオンがオースティン教区のオディオンはウェストの被昇天の聖マリア教会およびウェイコの聖ペテロ・カトリック学生センターで働いている時に起きた。
オディオンはオースティン教区を離れた後、エイモンド大司教の下でニューオーリンズ大司教区で勤務した。ルイジアナ州ルーリングのバドバの聖アントニオ教会の主任司祭を務め、ニューオーリンズ大司教区のノートルダム神学校では非常勤講師を務めた。
エイモンド大司教は、教区での性的虐待事件の対応をめぐる深刻なスキャンダルに悩まされ、特に在任後期には大司教区の破産手続きに翻弄されたが、ニューオーリンズ大司教となる前の2001年から2009年までオースティンの司教を務めており、オディオンがオースティンに来たのはその時であり、2015年からニューオーリンズで奉仕するようオディオンを招いたのもエイモンド司教(当時)だった。
*不透明な被害者たちの訴えへの対応
オディオン神父に対する苦情がオースティンの教区当局に初めて寄せられた時期は不明だが、2024年7月に神父が逮捕された後、教区は地元ウェイコの報道機関KWTXに対し、「2019年にニューオーリンズおよびオディオン神父の出身教区であるウヨ教区に警告を送っていた」とする声明を発表した。
声明には、「2019年、オースティン教区はオディオン神父に対し、一時的なものであってもオースティン教区内で司祭職を遂行する権限がないことを確認する書面を送付した」と記されており、この決定は「オディオン神父の成人女性に対する振る舞いに関する苦情、および訪問聖職者が従うべき手順に従わず、司教からの司牧適性証明書を提出しなかったこと」に基づいて行われ、「その書面はニューオーリンズ大司教区にも送付され、ウヨのオディオンの彼の所属司教にも送られた」としている。
*被害の訴えがあったのに、なぜ信徒たちに警告しなかったのか
オースティン教区に送った問い合わせの中で、Crux Nowは、同教区が2019年までにオディオン神父に対する深刻な被害の訴えを受けていたことを指摘。それらの訴えは極めて懸念すべきものであったため、オースティン教区はニューオーリンズとウヨの両教区に通報し、オディオン神父に対し、同教区を訪問する際には許可を得るよう求めていた、とし、「なぜそれらの訴えを受けて、当時、オースティン教区が信徒に警告しなかったのか」質問した。
これに対して、オースティン教区の広報責任者カミーユ・ガルシアは、「ナイジェリアのウヨ教区の司祭であるオディオン神父に関する刑事手続きが係属中であるため、メディアからの要請に応じることは賢明ではないと考えている」と回答を拒否。「オースティン教区は、この件を公正な結論に導くための法執行機関の取り組みに協力しており、今後も協力し続ける… 信徒と情報を共有できるようになった時点で、適切な時期に(回答する)つもりだが、その際、民事当局による決定や措置を妨げないよう配慮する」と述べた。
*教区は加害神父への行動制限は出したが…
2024年7月のKWTXへの声明に先立ち、オースティン教区はオディオン神父に関して、2023年末と2024年初頭の2回、各教区に向けて声明を発表していた。
最初の声明は2023年12月、英紙『ガーディアン』の調査報道により、このナイジェリア人司祭に対する性的不正行為の告発が明らかになったことを受けて出されたもので、「1人または複数の成人女性からのオディオンに対する『性的不正行為の申し立て』に言及。「申し立ては、オディオンがオースティン教区管轄内のマクレナン郡で奉職していた時期、およびニューオーリンズ大司教区で奉職していた期間を含む」としていた。
3か月後の2024年2月、ガーディアン紙によるさらなる調査報道を受けて、2度目の声明が出され、「オディオンに対しては、2019年に『オースティン教区内での司祭職務に従事する許可はもはや与えられておらず、事前の許可なしに教区内のどの教会にも立ち入ることはできない』と通告していた。これらの制限に違反した場合、その事実を公表せざるを得なくなる可能性があることも通知された」と述べている。
2023年12月の声明には、制限に関する言及はなかったが、2024年2月の声明では、オディオン神父が許可なく同教区を訪れることは許されないことが言及されていた。
だが、オースティン教区の二つの声明のいずれにも、オディオン神父に関する女性たちからの訴えについて言及が無かった。訴えは、2019年に少なくとも他の2人の司教に警告を発するほど深刻な内容だったにもかかわらずだ。
また2024年2月の声明では、「オースティン教区当局が、オディオン神父が司教の許可なく当地域および近隣教区に滞在することは認められていないと通告し、ナイジェリアの所属教区へ召還されたことを明らかにし、また、オースティンの信徒たちに対し、オディオン神父との接触を避けるよう「推奨」、「オディオン神父が出席または関与することが分かっている行事への招待は、すべてお断りすることを推奨する」と述べている。
その12日前に、隣接するフォートワース教区の補佐司教は、オディオン神父に関するメモを全聖職者および各教区に送付し、そのメモをすべての教区報に掲載し、教区のウェブサイトやソーシャルメディアアカウントに投稿するよう求めていた。メモには、女性たちからのオディオン神父に対する訴えについては触れられていなかったが、フォートワース教区が「オースティン教区から通報を受けた」として、オディオン神父がオースティン教区の管轄区域内に「居住しているとみられる」と記されていた。
2024年2月12日付のフォートワース教区のメモによると、同教区は、オディオン神父が「許可なく信徒と接触し、非公認のイベントに参加している」ことを把握していた。また、オディオンが母国ナイジェリアへ召還されていたにもかかわらず、「自教区の司教による帰国命令を無視している」と指摘していた。
つまり、フォートワース教区のメモは、自教区の司教や現地の教会当局からの許可なく活動する「無法な司祭」の存在を管轄下の各教区に伝えたものだったが、オディオンが信徒に及ぼす危険性についてオースティン教区がフォートワース教区に警告する内容は含まれていなかった。
フォートワース教区のメモには、「オディオンは、オースティン教区から、オースティン教区内で司牧活動を行ったり、教区を訪問したり、信徒と接触したりしないよう指示を受けている」と記されていたが、それから約2週間後に発表されたオースティン教区の声明では、教区訪問や信徒との接触を禁じることは言及されておらず、オディオンが訪問する前にオースティン教区当局の許可を得るよう求めただけだった。
Crux Nowはオースティン教区に送ったメールでの問い合わせで、2024年7月の教区声明を取り上げ、声明の中でオースティン教区が、オディオン神父が2012年以来、教区内での奉仕を行う許可を得ていなかったことを指摘。声明には、「オディオン神父が2012年にオースティン教区での奉仕を終えて以来」とあり、「オディオンは、オースティン教区を構成する25の郡の地域内で、司祭として奉仕する許可を持っていなかった」と受け取られる内容だ。だが、公式記録によると、オディオンは2013年から2017年にかけて頻繁にオースティン教区に滞在しており、その多くは葬儀ミサを執り行うためのもので、その際には他の聖職者も同席している。
オディオンが2012年に正式にオースティンを離れた当時、司教を務めていたのはジョー・S・バスケスであり、その後2025年1月にガルベストン・ヒューストン大司教に就任した。
Crux Nowはまた、オディオンが2024年7月、あるいはそれ以前または以後のいずれかの時期に、オースティンまたは他の教会当局によって教会法上の制限(戒律)を課されたことがあるかどうかをオースティン教区に尋ねたが、教区はこの質問への回答も拒否した。
オースティン教区は、Crux Nowの質問のいずれにも答えることを拒否する一方、オースティン教区の現司教であるダニエル・ガルシアは「捜査に関連する法執行当局の尽力と勤勉さに感謝の意を表した」としている。ガルシアは昨年9月にオースティン教区の司教に就任したが、2014年からオースティン教区の司祭として、教区総代理および教区事務局長を務め、2015年に教皇フランシスコの下で補佐司教となり、2019年1月にモンテレイ教区の指導者に任命されている。
教区はCrux Nowに、「ガルシア司教は、あらゆる形態の人に対する虐待が終息するよう、信徒に対し、引き続き祈りを捧げるよう求めている」と述べた。
