・米カトリック・バッファロー教区が、性的虐待被害者に補償金1億5000万ドル支払いへ

(2025.4.24 カトリック・あい)

 米ニューヨーク州のカトリック・バッファロー教区と無担保債権者委員会が22日、発表したところによると、2020年2月28日にニューヨーク州西部地区の連邦破産裁判所に提起された連邦破産法第11条の訴訟について、和解条件を受け入れ、同教区の聖職者など教会関係者によってなされた性的虐待の被害者に対し、総額1億5000万ドル(訳180億円)の補償金を支払う行うことになった。
 教区と委員会は、この和解が性的虐待の被害者に癒しをもたらし、教区が最終的に第11章(破産)から脱却することにつながる計画を立てるための重要な一歩であると信じている、としている。
 米国のカトリック教会では、聖職者などによる信徒への性的虐待の告発が相次ぎ、教区が補償金支払いで財政危機に陥る教区が相次ぎ、破産手続きを取る教区も出ているが、米国なカトリック教区で、これまでに最も多額の補償を決めているのはロサンゼルス大司教区で、補償額は約10億ドル(約1200億円)に上っている。

 今回の決定についてバッファロー教区のマイケル・W・フィッシャー司教は声明で、「委員会と教区との間のこの原則的な和解は、この長引く困難な旅の重要なマイルストーンだ。そして重要なことは、私たちがずっと主要な目標としてきた、被害者に対する財政的補償を最終的に提供することを可能にしたことだ」とする一方、「補償額は確かに高額だが、被害者たち耐えてきた多大な傷と苦しみを元に戻すことはできない。また、彼らが生涯を通じて背負うことを余儀なくされた精神的、感情的、霊的な痛みを取り除くこともできない」と述べた。

和解資金の原資は、教区の資金、個々の小教区からの資金、そして関係組織・団体の寄付によって賄われる。

委員会と教区、小教区、および教区に関連するその他の団体との間のこの和解には、教区とその小教区に補償を提供した保険会社からの拠出金は含まれていない。教区は、一般的な補償範囲から最終的な和解基金に追加される金額を決定するために、保険会社との話し合いを続けている。 

 ・・・・・

 バッファロー教区に関しては、故教皇フランシスコが2019年12月に当時のバッファロー教区長、リチャード・マローン司教からの辞表を受理された。マローン司教は、それまで一年にわたって、未成年性的虐待が疑われていた司祭たちを故意に隠ぺいした、との訴えを受けていた。

 バッファロー教区内の問題が発覚したのは、マローンの前秘書が2018年、司教が問題司祭が司祭職を続けるのを認め、性的虐待問題に積極的に関わっていた、として、数百ページにわたる教区報告書の内容を明らかにしたことによる。

 疑いのある司祭たちの1人、退職司祭のノーバートF.オルソリット神父は、自分が1970年代から80年代にかけて「おそらく数十人」の10代の少年を虐待したことを認めた。それをきっかけに、司教の隠ぺいについての調べが始まり、教区内の司祭、神学生、一般信徒から辞任を求める声が上がっていたが、司教はそれに抵抗を続けていた。

 ブルックリンのニコラス・ディマルツィオ司教は同年10月から、マローンによる虐待事件への対応について1年以上調べた後、現地バッファロー教区へ頻繁に赴き、バチカンに報告するために約80人の教区司祭たちと一般信徒から事情聴取をしていた。

 マローンは、今年初めに地元バッファローの放送局とのインタビューで、ニューヨーク州での聖職者性的虐待の見直し措置が発効して以来、バッファロー教区は138件の訴訟を性的虐待被害者から起こされているとしていたが、司教の顧問団によると、訴訟は250-275件に上っており、(注:損害賠償負担が多額に上る恐れがあるため)教区として破産を申し立てるかどうか、「非常に深刻」な検討をしている、としていた。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2025年4月24日