・北アイルランドの司教が、前任司教が成人の若者が受けた司祭による性的虐待を軽視したことを謝罪(Crux)

(2024.8.2 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

  北アイルランドのダウン・アンド・コナー教区長、アラン・マクガキアン司教が1日、前任の故パトリック・ウォルシュ司教による司祭の性的虐待への対応についての調査結果を発表。「若者への虐待は未成年者への虐待に劣らない」と強調した。

 この「若者」とは、現在、西ベルファストの教区で奉仕しているパディ・マカファーティ神父のことだ。

 神父は1980年代に、2012年に有罪判決を受け、10年の刑に服したジェームズ・マーティン・ドナヒー神父から、若者として性的虐待を受けた。 ドナヒーは、5年の刑期を終えて2017年に釈放されたが、その2年前の2015年に正式に司祭職を解かれた。

 マクガキアン司教は声明で「(ドナヒーの)被害者の一人はダウン・アンド・コナー教区の司祭、パディ・マカフェティ神父で、2000年代初頭にジェームズ・ドナヒーによる虐待を正当かつ完全に適切に報告した」とし、「マカフェティ神父は、危険にさらされる可能性のある他の人々への懸念から名乗り出た。教区の聖職者を含む多くの人々の不信、不信、敵意に直面しながらも、彼は勇気とリーダーシップを示した」と司教は続けた。

 さらに、虐待当時、マカフェティ神父は「弱い若者」だったが、「彼の虐待の報告は、教区が児童に対する性的虐待に重きを置いたことから、(聖職者による性的虐待問題の中で)影を潜めてしまったことは今や明らかだ。このようなことは起きてはならない。マカフェティ神父が2003年に詳細に文書で報告した(ドナヒーによる性的)虐待は、明らかに犯罪行為だ」と強調した。

 そして、「現在の教会法では、弱い立場の成人被害者に対する性的虐待は、未成年者に対する虐待と同等の重大性があるとしている。支配的な成人虐待者と弱い立場の若い被害者の問題については、当時、このような認識がなかった」と述べ、ドナヒーが重罪で有罪判決を受けた後の新聞記事で、「成人虐待者と弱い立場の成人は同等だ」という教区側の主張は「誤った判断であり、教区から支援を受けるべきだったのに、被害報告をまともに取り上げたもらえなかったマカフェティ神父に対して公平を欠いていた」と認めた。

 そのうえで、マクガキアン司教は、ダウン・アンド・コナー教区を代表して、マカフェティ神父に「心から」謝罪し、「2001年の最初の報告以来、このすべてが彼に何年にもわたって与えた重荷」を率直に認めた。

 また、2006年に教区が発表した声明は、検察当局がジェームズ・ドナヒーを不起訴とする判断を下したのを受けて、「被害者を犠牲にし、容疑者を支持するものだった。その後に、ドナヒーが有罪判決を受けたことを考えると、この声明は判断ミスだった」と述べ、「2006年の教区の声明は、すべての被害者の心痛と苦痛をさらに深めるものだったことは明らか。ドナヒーが最終的に有罪判決を受けた際、教区は不当な扱いをしたことについて被害者に謝罪したが、そこには明らかな後悔の念がなかった。この機会に、この事件とすべての事件のすべての被害者に心から謝罪したい」と述べた。

 「パディ神父の勇気ある訴えは、他の被害者たちが声を上げることを促した。私は、今度は虐待を受けたすべての人に名乗り出るよう勧める… 教区として、私たちは、被害者中心の、プロフェッショナルで公正な対応を心がける」と約束した。

 マカフェティ司祭は、マクガキアン司教の謝罪を歓迎し、「ここに至る道のりは、非常に長く苦しいものだった。青年時代、ジム・ドナヒー神父にレイプされ、虐待されていた時、私がとった方法は、何も起こっていないふりをすることだった。自分が暴力的な堕落行為にさらされていたにもかかわらず、何も”感じ”ず、心が自分の体を離れ、彼が自分にしていることを傍観することしかできなかった」と告白。

 さらに、「ドナヒーの私に対する虐待が止まってから何年も、私は心的外傷後ストレス障害に苦しんで来ました。2年半前、ドナヒーが引き起こした行為の重大さが、私に大きな衝撃を与えました。それは、私が今、自分が受けた苦しみの恐ろしさに立ち向かうのに十分な強さを持ったからです」とマカフェティ司祭は語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年8月3日