・全米のカトリック教会、修道会の聖職者による性的虐待被害申し立てで”信ぴょう性あり”は過去20年間で1万6276件、補償や弁護費用に50億ドル

(2025.1.16 Crux staff)

 米ジョージタウン大学の付属研究機関、使徒職応用研究センター(CARA)が15日に発表した米国のカトリック教会における性的虐待に関する報告によると、過去20年間で、聖職者の未成年者への虐待の申し立てで「信憑性あり」と判断されたものは1万6276件。虐待被害者に対する補償や弁護費用などに50億ドル(円換算7800億円)以上が支払われている、としている。

 この報告は、2004年11月に全米カトリック司教協議会(USCCB)が、国内のすべての教区および司教区を対象に、年次調査を行うようCARAに委託して以来、続けられているもの。

 15日発表の報告では、過去20年間で全米の教区および修道会などが、司祭、助祭、修道者による未成年者への虐待の申し立て1万6276件を「信憑性あり」と判断した、としている。これらの申し立ての5件中4件は教区によって信憑性があると判断され(1万3331件、82%)、残りの1件は男子修道会によって信憑性があると判断された(2945件、18%)。ただし、「こうした虐待行為の信憑性のある行為は、調査対象の20年間に起こったものではなく、80年以上前のものも含まれている」としている。

 また、虐待被害者の5人にうち4人は男性(80%)、1人が女性(20%)。虐待がなされた、あるいは始まった被害者の年齢は、10歳から14歳が56%と半数以上を占め、15歳から17歳が24%、9歳以下が20%だった。

 報告によると、申し立ての対象となる性的虐待は90%以上が1989年以前に発生しており、1990年代に5%、2000年以降は3%だった。虐待の疑いをかけられた加害者の86%が「死亡、すでに聖職から解任、すでに還俗、または行方不明」と特定された。残りの14%は「その特定の調査の『1年間に聖職から永久に離れた、あるいは聖職から引退した』」としている。

 また、全米でこうした聖職者による虐待が明らかになった教区および修道会は、調査対象となった20年間に、被害者などに総額50億2534万6893ドルを支払った。その71%は被害者への和解金、4%が被害者へのその他の支払い。その他の主な費目としては、総額の17%が弁護費用、6%が容疑者である聖職者に対する支援費用、2%はその他の費用、となっている。

 加害者ないし、所属する教区、修道会が自らを弁護、支援するための費用が11.5億ドル(約1800億円)にも上っていることになるが、「20年間の平均で、申し立てに関連する費用の16%は、教区、修道会が契約している保険会社が負担した」という。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年1月18日