ローマ – 元イエズス会士で著名なスロベニア人芸術家、マルコ・ルプニク神父による性的虐待の被害とされる女性5人がこのほど、教皇フランシスコやイタリア司教協議会長、バチカンで修道会を管轄する責任者などに宛てた連名の公開書簡を発表。
「最近の教会関係者の対応は、聖職者による性的虐待に対して教皇フランシスコが強調する”Zero Torelance(容赦ない処罰)”が、単なるPRキャンペーンに過ぎないことを明らかにしている。醜聞を頻繁に隠し、虐待の当事者のために支援、もみ消しさえしている」と強く抗議した。
公開書簡は、9月15日に教皇がルプニクを擁護するイタリアの神学者を謁見したこと、さらに、18日にカトリック・ローマ教区が声明で、ルプニクが設立した「セントロ・アレッティ」は「健全な共同体生活を育んでいる」と讃えたことを批判し、イエズス会がルプニクを、性行為の相手の女性を赦免するために告解室を利用したとして短期間だけ破門したことにも異議を唱えた。
そして、このような教会や修道会の対応に「私たちは言葉を失い、もはや抗議の声を叫ぶ気力も失った… 教皇のルプニク支持者謁見とローマ教区の声明は、教会は被害者や正義を求める人々に全く関心がないことを示している」と批判した。
また、教皇は8月下旬から「世界青年の日」大会出席のためポルトガルを訪問した際、「誰でも、どんな人も、教会は歓迎します」と主張しているが、「教会には、不快な真実を思い出す人々の居場所はない」と言明。
さらに、ルプニクを間接的にかばうようなローマ教区の声明について、「性的虐待の犠牲者の苦痛だけでなく、高位聖職者たちの、頑なで傲慢な対応によって致命傷を負った教会全体の苦痛をも嘲笑するものだ」と述べた。また、ルプニクの長年の同僚で現在はセントロ・アレッティ会長を務めるマリア・カンパテッリに教皇謁見が認められたことは、「これまで教皇が、ルプニクによる性的虐待の犠牲者とされる人物の誰にも会っていない、という事実とは、全く対照的だ」とも批判した。
また、ルプニクの活動と関係のあった女子修道会Loyola Communityの現会員と元会員が教皇あてに出した4通の手紙にも返答しておらず、 「被害者たちは、こうした対応による新たな虐待に声にならない叫びをあげるしかない」とも述べた。
ルプニクによる性的虐待については、これまでに約20人の女性が、30年以上にわたるさまざまな形の性的、精神的、心理的虐待で本人を告発している。 68歳のルプニクは7月にイエズス会修道会から追放されたが、依然としてカトリックの司祭だ。だが、ルプニクが今後どこに活動の拠点を置くのか、また他の懲戒処分が今後されるのかどうかは明らかではない。
また、修道女たちが虐待される場になったとされるLoyola Communityの元総長、シスター・イヴァンカ・ホスタに対しても、公開書簡は「ルプニクの残虐行為を30年間、隠蔽し、彼の計画に反対する人々を精神的奴隷に貶めてきた」と批判しているが、彼女に対する調査、処分はこれまでどこからも全くされていない。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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