・ルクセンブルク大司教区、”性的支配”と隠蔽続ける聖職者集団との関係を解消

   ルクセンブルク大司教区は7日、2016年から同教区で活動している聖職者の集団「Verbum Spei友愛会」との協力関係を解消すると発表した。 その理由を、この会に、支配と隠蔽のシステムが根強く存在していることが明らかになったため、としている。

 メンバーの大半がフランス人で構成されているが、フランスではほとんど知られていないVerbum Speiは、ドミニコ修道会の会員だっマリー=ドミニク・フィリップ神父(1912-2006)が創設した聖ヨハネ共同体の”反体制派”によって、2012年にメキシコで設立された。

 Verbum Speiのウェブサイトによると、現在活動拠点があるのは、 メキシコ、米国、ルクセンブルクとしているが、スペインとホンジュラスにも拠点があるといわれ、 2022年現在の会員数は、ルクセンブルクの8人を含む聖職者など約50人。

  ルクセンブルク大司教区では、2016年に、教区長のオロリッシュ枢機卿によって活動が認められ、エッシュ=シュル=アルゼットの小教区で奉仕し、大学でも学生の霊的指導を任されていた。
 だが、今回、大司教区は、Verbum Speiとの協力関係を解消し、7日の声明では、 その理由として、「司祭(…)と当時法定年齢に達していた女性との関係がもたらした状況と結果」を挙げている。

 La Croixの取材によると、この女性と親しい人物は「彼女はアジア系の学生で、フランス語の能力が低く、神父が女性と密接な関係を持ってはならない、ということさえ知らなかった」と言う。 彼女はブラザーTと関係を持ち、2021年と2023年に2人の子供を出産した。 ブラザーTはその後、会から追放され、昨年6月にバチカンから聖職を解かれた。

 また、1年前から彼女を支援している聖ヨハネ女子修道会の元シスター・オリビア(仮名)は、「彼女は操られていた… 若く、知的で、行動的なブラザーが、愛と友情の哲学を彼女に個人的に教え、二人の関係を正当化したのです」と語った。

 大司教区は声明で、このような行為は「奉献者の修道生活に有害な結果をもたらし…、Verbum Spe友愛会の外の人々も危険にさらす可能性がある 」としている。

  彼女は、他の虐待被害者に会って話を聞き、初めて、自分が被害に遭っていることに気づき、ルクセンブルク大司教区の虐待被害者支援部門に連絡をとり、教区長のオロリッシュ 枢機卿のもとで調査が行われ、その結果、この性的行為は、単なる二人の関係にとどまらず、Verbum Speのこうした事実を認めることを拒み、隠蔽する体質に問題があることが明らかになった。
 オリビアによると、この問題には、聖ヨハネ女子修道会から2014年に追放された元シスター、マルテが関わっている、という。マルテは、スペインの反制的共同体「Maria Stella Matutina」の創設者の一人であり、現在も大きな影響力を発揮している。 この共同体は現在350人以上の会員を擁し、フランスで積極的に勧誘を行っている。 ある意味で、Verbum Speと対をなす女性共同体といえる、両共同体とも関係を否定している。

 マルテは、ブラザーTと被害女性の関係を知り、彼女に、Tとの「霊的友情」を継続できるMaria Stella Matutinaへの入会を勧めたと伝えられている。 被害女性の最初の妊娠中、センベス(リヨンの北にある聖ヨハネ女子修道会の歴史的な修道院で、現在はMaria Stella Matutinaが所有している)で、マルテやVerbum Speの関係者が出席して会合が開かれ、ブラザーTの聖職を「救う」ための努力をすることが決定されたと言われる。 オリビアからは、「さらに不穏な」あるいは「言語道断な」と述べた他の内容とともに、会合などの詳細がすべてオロリッシュ枢機卿に伝えられた。

 なお、この会合の参加者には、元聖ヨハネ修道会のブラザーで、会合の後、性的暴行の複数の告発を受けて聖職者から追放されている者もいた、という。

  Verbum Spe友愛会は2月2日付けの声明で、「我々は、ルクセンブルク大司教区の決定を従順かつ謙虚に受け止める… いかなる形の虐待にも断固反対する」と述べ、「2021年に私たちの兄弟の一人が去ったことは、信者をスキャンダルに陥れたかもしれないと認識している。 その影響を最初に受けたのは私たちだ」としたものの、被害女性については一言も触れていない。

 4年前にVerbum Speiに身を寄せたもう一人の元聖ヨハネ修道会のブラザーも、同じような行為で聖職を解かれているが、 彼の子供の母親もまた、一時的にMaria Stella Matutinaに所属していた。

 ある関係者は、「Verbum Speiについて話すとき、Stella Matutinaについても話す。その逆もまた同様だ。この2つの共同体は、常に『忘れ去られること』を当てにし、聖ヨハネ共同体との意図的な混同を保っている。 実に巧妙だ」と語る。

 被害彼女にとって、今回のスキャンダルは、この共同体の在り様の”根強さ”について考える機会でもある。 どんなに封じ込めようと努力しても、それは別の場所で再浮上するのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年2月8日