委員会は2023年に作業を終えたが、「司教団が被害者やポルトガル社会に対し、これほど数多くの虐待の訴えをどう扱うつもりなのかを明確に示していない」との批判が教会内外から起きており、ACSのグロッソ氏も、「報告書に対する司教たちの反応は非常に否定的で、カトリック教徒だけでなくポルトガル社会全体に衝撃を与えている」とし、「一部の司教は委員会の報告を軽視しようとし、他の司教は『被害者への補償の可能性すら検討していない』と明言している」と批判。
「おそらく司教団は、これほど多くの被害者が声を上げ、自分たちの受けた虐待について語るとは想像していなかったのでしょう。テレビ局、特にSICやRTPなどのポルトガルの大手ネットワークが被害者にインタビューし、大衆に彼らの事件を伝えることも予想していなかったに違いない」と、司教団のこの問題に対する無神経ぶりを強く非難している。
他の関係者も、「ポルトガルの司教団は教会の虐待問題に対処するための具体的な措置を講じる意思がなく、委員会の報告書は(虐待問題の解決に)何の影響も及ぼさない、という印象を与えた」と語っていた。
その後、CEPは、昨年末に、被害報告を受け被害者に寄り添って支援するとともに虐待再発の防止に努める組織として「Grupo Vita」を設立し、今年5月に、「98人の被害者から相談があり、うち18人は心理的な治療を受け、32人は金銭的補償を求めている」と発表。また、その一か月前の4月には、「補償を希望するすべての被害者は、12月までに正式な要求を、どのような虐待を受けたかの説明と共に文書でGrupo Vitaに届け出る必要がある」と公表している。
このような一方で、マスコミは虐待事件を報道し続け、グロッソ氏ら被害者たちは、他の教会による虐待の被害を受けた人々を集め、自分たちの目的のために戦うための会として、昨夏にACSを設立、活動しており、これまでに新たに数十人の被害者から相談を受けているという。
ACSは、CEPの役員との面談を要請して実現し、14日の面談で、CEP会長のホセ・オルネラス司教から、2022年から2023年の間に独立調査委員会に提出された報告を識別するために使用されていたコードが破棄され、それは、「個人情報の漏洩を防ぐためだった」と説明を受けた。
グロッソ氏は、「要するに、独立調査委員会に自分の被害を報告し、補償を希望していた被害者は、受けた虐待などを、Grupo Vitaに、改めて説明しなければならない、ということです」と指摘。「2022年から2023年の間に独立調査委員会に訴えた被害者たちは、具体的な対応をしてくれるものと思っていたのですが、何も得られるものはなかった、と思い知らされたのです」と述べ、「誰もが何年も前に受けた虐待を繰り返し思い出したくありません。それは辛いこと。再び被害者になれ、と言っているようなものです」と司教団の誠実さに欠けた態度を批判した。
またCEPは、「それぞれの性的虐待の被害について吟味してから、個別に金銭的補償を決定する」ことを計画しているが、ACSはこれに強く反対、グロッソ氏は、「彼らは、被害者一人一人の苦しみの度合いをどうやって測るつもりなのでしょうか? 秤でですか。巻尺でですか。 まったく馬鹿にしている」と怒りをあらわにしている。
ACSは、被害者個別に異なる補償額を決めるのは、被害者たちを”分断”する行為であり、教会が持つべき「友愛と平等」に反すると批判。「CEPは補償額を各被害者同一にすべきだ」と主張している。
またCEPに対して、「テレビなどを通じて、すべての被害者が補償金を請求できるように、請求先の電子メールと電話番号を全国に広報する」ように要請。CEPは、ACSの一連の要求について検討を約束した、という。
「司教たちが(言葉だけの)謝罪では十分ではないことを理解することが重要です。彼らは具体的に行動せねばならないが、被害者は”物乞い”ではありません。金を払えば済む、と言っているわけではない。私たち被害者に真剣に顔を向けるべきなのです」とグロッソ氏は強調している。