・バチカンの未成年者・弱者保護委員会、全世界の教会対象の初の調査結果発表ー性的虐待に厳格な対応求める

(2024.10.29  Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 

 その調査・分析結果によると、「教会組織や教会当局の中には、虐待被害の予防や被害者保護に対する明確な責任体制をとるところがある一方、虐待に対処する責任を引き受け始めたばかりのところもある」と、国や教区などによって対応に未だにバラつきがあることを指摘。そして、教皇が2019年5月に出された「虐待や暴力を届け出るための新しい手続きを定め、司教や修道会の長上らにとるべき態度を周知させる」自発教令「Vos estis lux mundi」で指示していた「虐待被害の報告体制や被害者に対するケアの体制」を欠いているところもある、と批判している。

 

 

 

*中南米、アフリカ、アジアの多くの地域で被害予防・被害者保護のための資源が不足

 

 作業グループが収集した大陸レベルのデータでも、虐待への対応にバラつきがあり、米大陸、欧州、そしてオセアニアの一部は、被害の予防、被害者保護などに使うことのできる「(人的・物的)資源」が「相当にある」が、中南米、アフリカ、アジアの多くの地域では、そのような資源が「不足している 」ことが明らかになった。

 委員会は報告書で、「司教協議会間の連帯」を強め、「保護における普遍的な基準のために資源」を動員し、「虐待被害者に関する報告と彼らを(精神的、身体的に)支援するセンター」を設け、「真の保護文化を発展させることが不可欠だ」と言明している。

 

 

 

*バチカン関係部局は世界の現地教会との被害防止ネットワークの要の役割を果たせ

 報告書の第3部は、バチカンの教理省など関係部局に焦点を当て、バチカンは 「ネットワークの中のネットワーク 」として、「虐待予防と被害者保護の最良の慣行を世界の現地の教会と共有するハブとしての役割を果たすことができる」と強調。バチカンの担当部局は、バチカンの手続きと虐待事件に関する判例において、透明性を高めるために、共有された展望に立って、信頼できる情報を収集しようとしている、としている。

 またバチカン教理省で虐待案件を扱う規律部門がその活動に関する限られた統計情報を公に共有していることを指摘したうえで、外部関係者の情報へのアクセスを増やすよう求めている。その他の対応として、「様々な教区の保護責任の伝達」、「教皇庁全体で共有された基準の促進」、「教区の業務に、被害が原因の心的障害を考慮した被害者中心の対応を取り入れる 」ことを挙げている。

*国際カリタス、地域カリタス、国レベル・カリタスでも被害防止・被害者保護の対応にバラつき

 報告書では、カトリックの慈善事業団体、カリタスに関する事例研究調査の結果も紹介されている。対象とされたのは、 世界レベルの国際カリタス、地域レベルのカリタス・オセアニア、国レベルのカリタス・チリ、教区レベルのカリタス・ナイロビだ。報告書は、カリタスの使命の 「非常な複雑 」さと、被害の防止およち被害者保護の体制の最近の進歩を認める一方で、「それぞれのカリタスで被害防止・被害者保護の実践に大きなばらつきがある 」ことも指摘し、懸念事項として挙げている。

*虐待問題に対応する資源が不足する教会を支援するMemorare運動に司教協議会、修道会などから援助金

 また報告書は、虐待問題に対応する人的・物的資源が足りない現地教会を支援するため、過去10年にわたって、世界の司教協議会や修道会から資金を集めてきたMemorare運動にも言及。

 運動の目的は、虐待の報告・被害者支援センター、現地での研修事業、”グローバル・サウス”における虐待防止・被害者保護の専門家のネットワークを発展させることにあり、2023年にはイタリア司教協議会から50万ユーロ(総額150万ユーロの支援を約束)、修道会から3万5千ユーロ、バチカンの財団から10万ドル(3年間に総額30万ドル)の年次寄付を受けた。

 さらに、スペイン司教協議会は、未成年者・弱者保護委員会が選定したプロジェクトを支援し、年間30万ドル(3年間で総額90万ドル)を拠出することを約束している、としている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年10月30日