・イタリアで司祭が未成年性的虐待容疑で国家憲兵隊に逮捕、イタリア司教団に全教区で厳正対応を求める声が拡大の可能性(Crux)

(2025.4.17 Crux   staff)

 問題の司祭はチロ・パニガラ神父(48)で、逮捕は、北イタリア・ブレシア教区の小教区司祭を今年初めに解任された後に行われた。解任は、15歳の少年が、パニガラによる「不適切な注意」と表現したことを地元の学校の教師に報告したのを受けて行われた。

 現地メディアによると、パニガラは少年を徹夜の青少年イベントに招き、その後、寒さを理由に、自分のベッドで共に夜を過ごすよう少年を誘った、という。

 逮捕は、性的虐待被害者の活動家たちが、フランスやドイツなど他の欧州諸国ですでに行われている、聖職者による虐待に関する体系的な調査・研究に取り組むよう、イタリアのカトリック教会に圧力をかけている最中に起きた。

 イタリアの司教団が全体として性的虐待問題への取り組みに消極姿勢を続ける中で、オーストリアとの国境にあるイタリア最北端のボルツァーノ・ブリクセン教区は今年1月、教区が設立された1964年から2023年までの期間を対象とした独自のより広範な調査結果を発表。

 67件の虐待の可能性のある状況を特定し、うち53件は信用に足る証拠に裏打ちされていると判断した。これらの事件には41人の司祭が関与しており、これは調査対象となった約60年間に教区で奉仕した全聖職者の4.1%にあたることが明らかになった。この調査をまとめた担当者は、「被害者が声を上げるまでに何十年も待つことが多い。今回の調査結果はおそらく『氷山の一角』を明らかにしたに過ぎず、隠れたケースが多数ある」と述べた。

 イタリアの性的虐待被害者を代表する活動家たちは、イタリア司教協議会に対し、全国レベルで、ボルツァーノ・ブリクセン教区に倣うよう求めている。このような経緯もあり、今回の司祭逮捕が、イタリアのカトリック教会が「対応を2020年から2022年の期間に限定する」と主張してきた過去の聖職者による性的虐待事件について、包括的な全国的な見直しを行うよう求める動きが広がる可能性がある。

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 パニガラが1月に小教区の司祭を辞任した時点で、彼は約4500人のコミュニティであるサンパウロ小教区の司牧者になってからわずか2か月しか経っていなかった。当時、上司であるブレシア教区長のトレモラーダ司教は小教区に書簡を送り、「彼があなたがたの小教区共同体での経験をすぐに中断することを推奨する状況と重大な問題が浮上した」とだけ述べていた。

 だが、後になって、教区としての声明を発表し、パニガラが性的虐待で告発されたことを認めた。そして、「このニュースは私たちを深く悲しませています。チロ・パニガラ神父に対する告発の重大性は、慎重に評価されなければならない」と説明、「パニガラ神父は、特定の口頭での報告を受けて、2025年1月10日に司教によって、予防的な教会法上の手続きにより、直ちに司牧活動を停止されました。その間、捜査当局による調査が開始されるのを待ちます」としていた。

 この事件を捜査した国家憲兵隊(軍事警察)もパニガラ逮捕に関する声明を発表。捜査の結果、「調査対象(の司祭)が、2011年から2013年、そして2024年に再びブレシア県の2つの小教区共同体の担当司祭としての立場で、小教区内での活動を任された一部の未成年者に対して、多数の加重性的暴力行為を行ったことを確認した」と言明した。

 現地メディアによると、当初、パニガラに対する正式な告発はなく、その後、彼は心理カウンセリングに送られた後、(教区は)司牧を続けるのにふさわしい、と判断したのだという。

 だが、今回の逮捕を受けた声明で、ブレシア教区は、進行中の調査に全面的に協力することを約束。「虐待の被害者としての未成年者の問題は、決して過小評価されるわけにはいかない。それが司祭を巻き込むのであれば、なおさらである」としつつ、「被告人の権利も尊重され、保護されなければならない」とも述べ、「(捜査当局によって)取られた措置は強力であり、痛みを伴う」が、「私たちは、彼ら(捜査当局)ができるだけ早く事実と責任を明らかにするようにする、と信じている。この痛ましい出来事に関与したすべての人々に寄り添い、そして、捜査当局への全面的な協力を約束する」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年4月19日