(2023.2.21 Vatican News)
スロベニア生まれで著名な芸術家でもあるイエズス会士のマルコ・ルプニク神父が性的虐待について多くの訴えを受けていることに関して、イエズス会本部は21日、「真実の認識に向けて」と題する声明を発表した。
声明は、同会の国際担当部門の調査チームが最近数カ月にわたって集めた同神父に対する性的虐待の訴えを基にしたもの。
調査責任者のヨハン・ヴェルシューレン神父は声明の冒頭で、耐えがたい苦しみをしのんで調査に協力してくれた被害者たちに感謝したうえで、1980年代から2018年の30年以上にわたり、様々な場でなされた、身体的、精神的な性的虐待に関する多くの事例を調べた結果、「被害者たちの告発と証言は極めて信頼に足るもの」との判断を示している。
そして、被害者からの訴えの内容は、イタリアの司法当局が刑法による犯罪として立件するのは難しい可能性がある、とする一方で、それは「本人の人としての問題、宗教的責任の有無とは全く別問題」とし、会の上長がとることのできる方策として三つを提示。一つは一時的に特定の場所に異動を命じること、もう一つは無期限に特定の場所への異動を命じること、あるいは会からの退出を命じること、としている。
また今後の調査などで、仮に、バチカンの教理省の権限が及ばない犯罪に該当するとされた場合、イエズス会総長が行政政治訴訟を決断する可能性もあるがその場合は、会からの退出の手続きは進めることができない。また犯罪とされないこの種の手続きには、時効は適用されないことにも注意が必要だ。また、告発が却下されることもあり得る。だが、一定の罪科について、会の総長はまた、会からの退去ではなく、他の措置をとる可能性もある。
いずれにしても、ヴェルシューレン神父は当面、イエズス会の内部的な措置をさらに進める考えだ。神父に対する様々な面での行動制限を強化する。すでに、聖職者としての公的活動、公的な意思疎通、イタリア・ラツィオ州外への移動どを禁止しているが、さらに、いかなる形の公的な芸術活動も禁じ、特に教会や、関係機関の施設、舞台、礼拝堂、黙想・霊操の家などでの行為は禁じるなどだ。
そして、今後の対応について、「犯された罪に正義が行われるように、責任ある人々によって、真実が全面的に解明されるようにする必要がある」と声明を結んでいる。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)