(2026.9.7 カトリック・あい)
聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が加害司祭(当時)が所属していた神言会に損害賠償を求めている裁判の第16回が、7日午前11時から東京地裁第606号法廷で原告の支援者など30人近くが傍聴して開かれた。だが、裁判の冒頭で、裁判長の突然とも言える交代が明らかになり、原告、被告双方弁護人との”引継ぎ”のやり取りに時間を取られ、実質的な審理は進まなかった。
次回裁判は10月19日午後3時から東京地裁第606法廷、次々回は12月23日午前11時から同615法廷で開かれるが、これまで長きにわたって裁判を担当し、「遅くとも来年3月に判決を出すことを前提に、証人訊問は10月ないし11月に行い、できる限り今年12月に結審したい」と説明をしていた前任者が担当を外れたことで、2023年1月に始まった長期裁判の結審は来春、判決は夏ごろにずれ込む見通しとなった。
これまでの裁判で、原告側弁護人は民法だけでなく教会法の見地も合わせて、①加害司祭を叙階した司教と、司教に叙階を進言した神言会の責任②「告解(赦しの秘跡)」を悪用し、信徒を性的虐待するという危機に陥らせた司祭に対する注意務違反—を損害賠償を求める根拠に加えて行くことを明らかにしている。
そして、教会法との関係を取り上げたことについて、「これまで被告側は『教区と修道会は異なる』として、神言会の賠償責任を回避してきたが、神言会所属の加害司祭の叙階は、教会法に基づいて司教が行うなど、教会法上からも”分離論”は通らない」と説明。
そのうえで、①信徒は自らの信仰を守る権利(債権)があり、司祭はそうした信徒を正しく導く責任(債務)をもつことが教会法上の定めであり、これは民法上の『債権債務』の関係となる②「告解で得た知識を、告白した信徒に不利益を与えるやり方で使用することは絶対的に禁止する」という教会法の定めに反した加害司祭の行為を放置した神言会の対応は、労働契約法や労働安全衛生法の「安全配慮義務違反」に相当する—と主張している。
これまで16回の裁判で、原告の田中時枝さんは代理人弁護士と共に毎回出廷しているのに対し、被告の神言会(ディンド・サンチャゴ日本管区長)自身は一度も出廷せず、「加害者とされている人物に対して、修道会は責任がない」などの主張を繰り返す代理人弁護士に任せきり。しかも、当のディンド管区長は、こうした裁判をよそに、このほど旅行社が企画、1人70万円弱で参加者募集開始している来年春の10日間スペイン・サンチャゴ巡礼に同行することが募集要項で明らかになっている。一般の常識では考えられない、誠実さを欠いた対応だ。
新たに裁判長を務めることになったのは、渡辺諭・裁判官(56期)。令和2年10月から7年3月31年まで法務省民事局参事官、令和7年4月1日から今年7月31日まで東京高裁第5民事部判事のあと、今年8月1日の異動で東京地裁判事となって、まだ1か月余りだ。
渡辺裁判長と同期の裁判官は80人おり、SNSの「56期 キャリア統計・出世レース」によると、部総括が13名を占め、出世頭は伊藤大介(金沢地方裁判所部総括判事)、2位は塚原洋一(函館地方裁判所部総括判事)、3位は木村匡彦(東京高等裁判所判事)で、いずれも事務総局経験者だという。