
(2022.11.8 Vatican News Lisa Zengarini)
フランス司教協議会(CEF)のエリック・ド・ムーラン・ボーフォール会長・大司教が7日、フランス南西部のルルドでの記者会見で、性的虐待または隠蔽で告発された司教が11名にのぼることを明らかにした。
11名の中には、6日に、35年前に10代の少女を性的虐待したことを告白したピエール・リカール枢機卿も含まれている。
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9日付けのAP通信社電によると、 マルセイユの検察当局は8日、リカール枢機卿に対する「悪質な性的暴行」容疑について予備捜査を開始した。
一方、バチカンのスポークスマンは8日、枢機卿がバチカンの職務から解任されるかどうかを含め、今後の対応についての記者団の質問に明確に答えなかった。リカールは教理省のメンバーであり、聖職者の性的虐待事件を裁定するバチカン当局の投票権のあるメンバー。これまで、性的虐待で告発された枢機卿の資格を教皇が剥奪した例は、英国の故キース・オブライエン枢機卿(当時)と米国のセオドア・マカリック枢機卿(当時)がある。
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ボーフォール会長の会見は、司教協議会の秋季総会の終了後に行われたもので、11人の司教には現在も現役で教区長などを務めている者もおり、刑事捜査の対象となっている者もいる。
またリカール枢機卿は78歳。2019年までボルドー大司教で、CEF会長も二度歴任、現在もバチカンの教理省の役員を務めている、フランスのカトリック教会の高位聖職者のトップだ。
(リカール枢機卿= YouTube / KTOTV (screenshot))
枢機卿は6日発表した告白で、35年前、教区司祭の時に「14 歳の少女に対して非難に値する行動をとった」ことを認め、「私の行動が、その人に深刻で長期にわたる結果をもたらしたことは間違いありません」として、女性とその家族に赦しを求め、すべての公務から退いて祈りの生活に入ることを約束した。ボーフォール大司教は会見で「リカール枢機卿による告白は、司教たちにとって大きな衝撃ですと述べた。
また、性的虐待で告発された他の10人の司教の中には、「成人男性 2 人の行為をのぞき見することで精神的虐待を犯した」としてバチカンから制裁を受けたクレテイユのミシェル・サンティエ司教が含まれるが、制裁が明らかになったのはここ数週間のことだ。
また 6 人の司教 (うち 1 人は死亡) は、国または教会の司法当局によって性的虐待で告発され、他の2人の引退司教は、国の司法当局によって捜査中。別の司教はまだ捜査が始まっていないが、バチカンから職務停止を命じられている。すでに判決が下っているのはアンドレ ・フォート司教で、2018 年に 8 か月の執行猶予付きの懲役刑を言い渡されている。
ボーフォール会長は、会見で、サンティエ司教がバチカンから処分を受けながら、それを最近まで明らかにせず、国内の多くの信徒から批判を受けていることに、司教団の長として「あらゆるレベルで深刻な欠点と機能不全」があったことを認めた.
フランスでは、司教団と修道会代表が共同で設置した独立調査委員会が昨年10月に、聖職者、信徒による未成年性的虐待に関する調査報告書をまとめ、過去70年の間に、推定33万人の未成年者が教会内で性的虐待の被害を受けていることを明らかにしている。司教団はこの報告を受けて、これまでの隠ぺい体質を改め、性的虐待に対して具体的な行動を起こすことを約束。8日閉幕した司教協議会総会では、聖職者による過去の性犯罪の申し立てに関する被害者とのコミュニケーションの改善、透明性の改善が特に強調された。