Archbishop Filippo Iannone, Prefect of the Dicastery for Legislative Texts (Vatican Media)
(2024.10.19 Vatican News Andrea Tornielli)
開催中のシノダリティ(共働性)を主題とする世界代表司教会議(シノドス)は、虐待の問題とそれへの対処についても討議しているが、バチカン法制省のフィリッポ・イアンノーネ長官が19日、Vatican Newsとのインタビューで、これに関連して実施されているさまざまな手順と既存の教会法典の有効性について語った。
虐待、特に聖職者による未成年や弱い立場にある成人への性的虐待は、特に近年、教会内で深刻に受け止められ、再発の防止、被害者のケアなどが、信頼回復とも絡んで大きな課題となり続けている。この問題は、開催中のシノドス総会においても討議の対象となり、その具体的な行方は、メディアによって引き続き注意深く監視されている。
そうした中で、法制省長官に話を聞いた。質疑応答は以下の通り。
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Q: 教会の中における虐待に対して、現在の関係法令は十分な効果を上げていますか?
長官:虐待の問題は、教皇が頻繁に強調しておられるように、教会全体にとって中心的な懸念事項であり、今シノドス総会でも参加者から関連の発言が当然、出ています。未成年者や弱い立場の成人に対する性的虐待の防止、処罰に関する教会法は、過去数年の経験、世界の現地の教会からのさまざまな提案、そしてこの問題に様々なレベルで取り組んでいる団体や個人の意見を踏まえて、近年改定されています。
具体的には、教会法典の「教会における刑罰」の規定が改定され、新しい自発教令「Vos estis lux mundi」が公布されました。最も重要なのは、教皇が招集され、世界の司教協議会の会長とバチカンの担当者が参加した2019年のバチカンでの会議の結果を反映していることで、「信者の信頼を裏切るこれら(性的虐待など)の犯罪を防止し、撲滅することを目的とした普遍的な手順」を明確にしました。バチカンの教理省に留保された犯罪を裁く際に従うべき規範も改訂されました。
このように、教会法関連のすべての規範で、尊厳を侵害された人々の幸福と、法制度の基本原則を尊重した「公正な」手続きを確実に行うことへの願望に、一層の重点を置くようになっており、司祭や聖職者には、虐待の可能性に気づいた場合、教会当局に報告する義務が定められています。
規範の有効性に関しては、関連するすべてのデータにアクセスする必要があるため、全世界的な判断をするのは難しい。しかし、私の個人的な経験に関する限り、有効に機能している、と言えます。教皇の次の言葉を思い起します―「すでに多くのことが達成されているとしても、私たちは過去の苦い教訓から学び続け、未来に希望を持って目を向けなければなりません」。
Q: 破門の免除が認められる可能性があるのはどのような場合ですか? これには迅速な手続きがありますか? 誰が関与していますか?
長官:教会法で譴責の一つとされている破門は、洗礼を受けた人が罪を犯し(聖体の冒涜、異端、分裂、中絶、司祭による告解の封印の侵害など)、反抗的(つまり不従順)な場合、その状態がなくなり、赦免されるまで、特定の霊的財産を剥奪する刑罰です。この刑罰によって個人から剥奪される霊的財産、またはそれに付随する財産は、キリスト教生活に必要なものであり、それは主に秘跡です。
破門は厳密に「治療」が目的- 影響を受けた人の回復と精神的治癒を目的としており、悔い改めれば、剥奪された財産を再び受け取ることができます(「魂の救済」は教会の最高法規です)。ですから、赦免を得るには、この目的が達成されたことを証明する必要があります。具体的な期限は設定されていません。必要な条件は、犯罪を犯した者が真に悔い改め、引き起こされたスキャンダルや被害者の損害に対して十分な賠償を行ったか、少なくともそのような賠償を行うことを誠意をもって約束していることです。明らかに、これらの状況の評価は、刑罰の免除を認める責任をもつ当局が、その人の善良な性格とそのような決定の社会的影響を考慮しながら、司牧の精神をもって行わねばなりません。
Q: ここ数週間、いくつかのメディア記事で、留保犯罪に対する教会法上の手続きに関してさまざまな解釈が提示されています。これらの手続きとは何であり、どのように適用されるのかを説明していただけますか?
長官:私たちが扱っているのは、信仰や道徳の問題における重大性のため、教理省によってのみ裁かれる犯罪です。省が従う手続きには、いわゆる「行政手続き」と「司法手続き」の 2 種類があります。
行政手続きの場合、手続きが法廷外の刑罰判決で終了すると、有罪判決を受けた個人は、同じ省内に特別に設置された控訴審査機関に判決を控訴することができます。この機関による判決は最終的なものとなります。
司法刑事手続きの場合、裁判のさまざまな段階が完了すると、判決は確定(res iudicata)となり、執行可能になります。
どちらの場合も、有罪判決を受けた人は、教理省に「resitutio in integrum(原状回復)」を要請できます。また、「恩赦」という形での再審を要請することも可能です。この場合、手続きは通常、使徒座署名院最高裁判所によって処理されますが、他の機関に委託されることもあります。このようなやり取りは機密性が高いため、国務省がさまざまな事例を調整し、採択された措置の実施に関する関連決定を送付します。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)