・「パリ外国宣教会の釈明文に疑義」ー帯広での性的虐待被害者の代理人弁護士が勝谷・札幌司教に書簡

(2024.7.22 カトリック・あい)

 日本在住の仏人男性が札幌教区の帯広教会で、パリ外国宣教会の司祭から繰り返し性的虐待をされたとされる問題で、訴えを聴いた札幌教区長の勝谷司教が、同修道会に対して「速やかな情報公開」を求め、同修道会本部から司教と教区関係者あてに「性的虐待の訴えをバチカン教理省と仏司法当局に報告、捜査中。被害者に寄り添い、札幌司教と日本の教会のお詫びする」との釈明文が送られてきていた。

 だが、パリ外国宣教会は被害者に「寄り添っている」事実はないなど、この釈明文には疑義がある、との見解が、被害を訴えているB氏の仏リヨン在住の代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書で明らかになった。なお、札幌教区は、パリ外国宣教会からの文書は日本語訳にして公開しているが、この文書は22日現在も公開していない。

 代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書は以下の通り。

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札幌司教区ベルナルド勝谷太治司教様

 私は、フィリップ・リッタースハウス神父から性暴力を受けたB氏のフランス人弁護士です。

 B氏は、2024年4月8日付のパリ外国宣教会(MEP)からの通知文書へ応答したいと望んでいます。この文書は彼の状況に言及していますが、事実に反する情報が記されています。彼はあなたに対し、以下のプレスリリースを、MEP文書と同様に公表することを求めています。

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パリ外国宣教会(MEP)の司祭による犯罪性のある性暴力の被害者であるB氏の訴えに関して、MEPは2024年4月8日付けで、札幌司教と教区関係者あてに文書を送りました。MEPはこの文書で「B氏に寄り添ってきた」と述べていますが、B氏本人は異議を唱えています。B氏はフランスでは障害者と同様に社会的弱者と見られています。

 加害者のフランス人司祭は当時日本に在留しており、事件は日本で起きたにもかかわらず、MEPは彼を離日させたことに責任があります。被害者であるB氏は妻と子どもとともに日本に住んでいましたが、MEPは彼に対してもフランスへの帰国を求めました。MEPは日本の当局にこの状況を報告しませんでした。

 フランスに一時帰国したB氏はMEPから事情を聴かれましたが、その前後にMEPからは何の支援もありませんでした。MEPからB氏に対する支援はなく、これは司祭活動に関する倫理規範に反するものであり、B氏はフランスでトラウマ状態のなか、医療的、法的、社会的に必要な手立てをたった一人で取らねばなりませんでした。MEPは旅費(航空運賃)の全額ではなく一部しか負担しませんでした。

MEPがB氏に紹介した「The Commission for Recognition and Reparation(認定・賠償委員会)」は、B氏の件に対応できる機関ではありませんでした。

現在、当該司祭はMEPの監視を受けておらず、この件で取られた措置は被害者に一切伝えられていません。MEPは外部監査の実施を公表していますが、それは、MEPの複数の指導者や司祭が性暴力に関与したことや、そうした性暴力を糾弾しなかった過ちを訴えられているからです。

B氏は、MEPが札幌教区とその信者に事態の深刻さを伝えず、被害者を日本で支援しようとしなかったことを遺憾に思っています。MEPは監査開始から1年半後に札幌教区に対し、信者から証言が得られるどうか尋ねていますが、この監査は終わりに近づいています。性暴力の証言は日本の司法当局にまず報告されなければならず、次いで補完的・副次的にGCPS(監査を委託された企業)にも報告されるべきです。その順序が逆であってはならないのです。
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Nadia DEBBACHE

120 rue de seze 69006 LYON Tel: 04.78.62.39.02 Fax: 04.78.24.88.54 Debbache.avocat@club-internet.f

 

パリ外国宣教会から札幌教区ベルナルド勝谷司教様と信徒の皆様へ

フランス人の成人男性 T 氏が、同じフランス人である本会の司祭 P 神父を2022年7
月に不同意性交をしたと告発しました。その時までP 神父は札幌教区で奉仕していました。
この重大な告発に対して、パリ外国宣教会(以降 MEP と省略)は、両者から事情を聴き
ました。P 神父は断固としてこの告発内容を否定しています。
両者ともフランス人であったため、2022年8月2日、MEP はフランスの司法当局に
この件を報告しました。フランス警察の捜査はいまだ行われており、完了しておりません。
MEP は、この件をバチカンの教理と信仰省にも報告しました。また、フランスの教会刑
事裁判所に委託された教会法に基づく調査を開始しました。
MEP は、T 氏の訴えに衝撃を受け、この件で傷ついた氏に寄り添ってまいりました。私
たちは、この件で札幌教区の勝谷司教様とご信者の皆様が傷つかれたことに困惑し、申し訳
なく思い、司教様と日本のカトリック教会にお詫び申し上げます。
フランス警察と教会裁判所で調査は現在進行中なので、結果が出るまでは何も動くこと
ができません。調査の秘密は尊重されなければなりません。裁判所の裁量に委ねられなけれ
ばなりません。
この調査が続いている間、P 神父は MEP によって待機処分を受けています。
数人の MEP の長上たちと、さらに数人の司祭は、それぞれたいへん多くの時間を T 氏
の話を聞くことに費やしました。また、フランスの教会の性的被害者支援の団体の専門の弁
護士と心理学者を彼に紹介しました。
MEP はまた、T 氏がフランスに来て話をするための旅費、滞在費に必要と思われる額(T
氏の求める額には達しませんでしたが)を負担しました。
MEP は、必要な措置を講じるため、MEP の性暴力問題について外部監査を実施すること
を決定したことをお知らせします。 MEP は、英国の独立系企業 GCPS Consulting にこの
監査の実施を委任しました。 (https://gcps.consulting)。 この監査は 2024 年 12 月に終
了の予定です。
MEP の会員によって行われた可能性のある性的暴力を懸念して情報を提供したい方は、
GCPS 監査チームに次のアドレスから連絡できます: mep_review@gcps.consulting
この問題に関しては、GCPS への連絡をお願いしたいのですが、当然ながら、法に触れ
る懸念のある問題であれば、該当する管轄部署に問い合わせることを妨げるものではあり
ません。
パリ外国宣教会、パリ、2024 年 4 月 8 日
media-communication@missionsetrangeres.com

 

2024 年 3 月 19 日 札幌教区の皆様 カトリック札幌教区 司教 勝 谷 太 治 「リ ッ タースハウス ・フィ リ ップ神父に係る報告」

一昨年 、 フィ リ ップ神父が所属するパ リ外国宣教会の指示に よ り急遽帰国 した こ とに
ついて皆様にご報告いた します。
フィ リ ップ神父はフランス人男性 T 氏より 、不同意性交で告発 され、現在フランスで調
査中 です 。 まだ裁判等は開始 され てお らず 、今後 ど う な るかは不明 です 。今回の件に
ついて札幌司教区は フ ィ リ ッ プ神父の帰国後その情報を入手 し 、パ リ外国宣教会に対
して報告を求めてまい りま したが、何 ら具体的な回答や情報開示はな く 、札幌司教区 と
して明確な事実確認ができないまま今日に至っております。
T 氏 とは数回の面会の他、 メールで何度も対話 してまいりま した。T 氏は本件につい
ての公表を希望 されてお りますが 、札幌司教区 と しては事実確認が一切できない状況
での公表については控えてまい りま した。 しか し T 氏の心痛苦 しみを思 う時、経過につ
いてあ りのままを教区信徒の皆様へお伝えすべき と判断致 しま した。
T 氏はフ ィ リ ップ神父が着任 した小教区を訪問 し、ご自身の現状を訴えられてお りま
す 。信徒の皆様におかれ ま しては 、前述の経過を ご理解いただ き 、対応にお困 りの際
には札幌司教区本部事務局へご連絡 くだ さいますよ うお願いいた します。
なお、札幌司教区 としては今後も T 氏に寄り添いながら、東京教会管区 とも連携 し、
パリ外国宣教会に対 して速やかな情報公開を求めていきたい と考えてお ります。

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2024年7月22日