・「いまだに虐待防止の体制を欠く司教協議会もある」中南米の性的虐待防止委員会ネットワークがコロンビアで会合(Crux)

(2024 . 9.11 Crux Contributor  Eduardo Campos= Lima)

 ブラジル、サンパウロ発 – 中南米とカリブ海諸国のケア文化と虐待防止委員会ネットワークの代表による第2回会合が9月3日から5日にかけてコロンビアで開かれ、17か国から52人が参加した。

 第1回は2023年11月にチリで開かれたが、世界のいくつかの地域ではこの問題で進展が見られるものの、中南米地域の教会には、まだ長い道のりが待ち受けている。

 コロンビアの虐待防止委員会の代表、イルバ・ミリアム・オヨス弁護士はCruxに、「この会合で、中南米の教会がケア文化の実施に関するニーズを認識していることが分かりました。制度的な観点からは、多くの司教協議会がすでにこのテーマに対処するための特別委員会を作ったり、事務所を開設したりしています」としたうえで、「しかし、この地域には取り組むべき重大な問題があり、一部の司教協議会では、現在の課題に対処するための基本的な制度さえ、いまだに欠如しているのです」と語った。

 昨年の第1回会合は、チリ司教協議会の虐待防止評議会が主催した。チリの教会では2010年以来、数々の注目を集めた虐待スキャンダルが明るみに出、2018年に司教全員が教皇フランシスコに辞表を提出した。このことは、教会の指導者が虐待の告発に対処する方法に大きな変化をもたらした。「各国の司教協議会は、司教と虐待の専門家をチリの会合に参加するよう求められました。その問題にどのように対処しているかを知るためには、各国の責任者を特定する必要があったのです」とオヨス弁護士は回想する。

 これを契機に、虐待防止のネットワークが設立され、それ以来、ウェブサイトの作成やウェビナーの宣伝など、さまざまな取り組みを行ってきた。聖職者も参加しているが、主要なリーダーの多くは一般信徒、特に女性だ。いくつかの国内委員会のメンバーは人権や児童虐待の法律や心理学の専門家で、司教や司祭と並んで働くこれらの信徒の女性たちは、議論に独特の視点をもたらしている。

 オヨス弁護士は、「中南米の司教たちは、全員が同じレベルにいるわけではありません。それでも、自分たちが引き受けた責任を認識しているし、司教団と信徒から幅広い支持を受けています。ですから、委員会の活動もシノダリティ(共働性)によって特徴づけられたものになっています」と付け加えた。

 今回のネットワークの第2回会合では、出席者全員がそれぞれの教会の現状を発表。ゲストスピーカーは「透明性、コミュニケーション、被害者への対応」などのテーマを取り上げた。

 「『性的虐待の被害者への賠償』は、中南米で最も難しいテーマの1つであるようです。私たちは、すべての委員会の活動を刺激するために、この地域での最良の対応を特定するよう努めている」とオヨス弁護士は語った。

 コロンビア生まれで、未成年者保護のための教皇庁委員会の書記であるルイス・マヌエル・アリ司教も、この会合に出席した。昨年の第1回会合では、コロンビア代表として参加しているが、今回の会合では、虐待を防止し、被害者を支援するための規範を実施するために、虐待に関するバチカンのガイドラインをどのように活用するかについて説明した。会合では、また、中米諸国が虐待防止に取り組むための制度的構造の導入を進める上で、より困難な状況に直面していることも明らかになり、障害を乗り越えるため、各国それぞれが必要としていることについて、明確にすることを確認した。

 オヨス弁護士は「私たちは、虐待防止の規範をどのように策定すべきかについて提案し、各国の虐待防止のための委員会または事務所の活動について議論しました。私たちの目標の1つは、各国の委員会が考えを共有することでした」と語り、今後の課題として、「この地域では不足しているリーダーの育成」を挙げ、「虐待のような複雑な問題に対処するには、ガイドラインや規範が重要であることは否定できないが、それ以上のものが必要。教会の中で尊厳と敬意が中核的な価値観である新たな関係を促進すること。そのためのリーダーの育成も欠かせません」と述べた。

 次回の会合は、ドミニカで開く予定で、その間に、委員会メンバーの育成とトレーニングに関連するテーマで、バーチャル会合を進めることにしている、という。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年9月14日