・COP28議長国のUAEが二国間会談を利用して石油・ガス商談を画策、と英BBCが報道

(2023.11.29 カトリック・あい)

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が30日から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれるが、英国営放送BBCが27日、環境問題を中心に調査報道をしている「センター・フォー・クライメート・リポーティング(CCR)」と協力して入手した文書をもとに、議長国UAEが各国との二国間会談を利用して石油やガス取引の商談を画策していた、と報道した。石油や天然ガスなど化石燃料の使用を無くしていこうとする会議の主旨とは正反対の動きを議長国がしていることになり、国際的に批判が出ている。

 BBCとCCRが入手した文書は、UAE側がCOP28の参加国政府代表団との個別会談のために準備した150ページ以上にのぼるもの。各国のCOP28での交渉ポイントのほかに、UAEの国営石油企業ADNOC、国営再生可能エネルギー企業MASDALとの取引や、将来的なビジネスの可能性も記されている、という。COP28で議長を務める予定のスルタン・ジャーベル氏はUAEの産業・先端技術大臣だが、ADNOCの最高経営責任者(CEO)も務めており、「利益相反」との指摘も出ている。

 また米CNNが28日伝えたところによると、COP28の運営チームの広報担当者はCNNの取材に電子メールで答え、「BBCの記事で紹介された文書は不正確で、COP28(の準備)では、これらを会合で使用していない。BBCが信憑(しんぴょう)性を確認できない文書を報道に使用したとみられるのは極めて遺憾だ」と述べる一方、「COP 28の運営チームは、ADNOCから独立して活動しているのか」とのCNNの問いには回答せず、ビジネス上の利益が話し合われていることについて明確に否定しなかった、という。

2023年11月29日

・エルサレム総大司教が、世界の教会に17日の聖地の平和の祈りに参加を呼び掛け、世界の女子修道会連合も参加

A Christian prays for peace at the Church of the Holy Sepulchre in Jerusalem (archive photo)A Christian prays for peace at the Church of the Holy Sepulchre in Jerusalem (archive photo)  (AFP or licensors)

 (2023.10.16 Vatican News   Sr. Titilayo Aduloju, SSMA)

    世界の女子修道会代表で構成する国際修道会総長連合(UISG)が16日、世界中のすべての女子修道会会員とその協力者に対し、17日に聖地で行われる「平和と和解のための断食と祈りの日」を共にするよう呼びかけた。

  教皇フランシスコは15日の正午の祈りで、聖地でのこの断食と祈りを世界の信者たちが共にするよう呼びかけ、「祈りは憎しみ、テロリズム、戦争という悪魔の力に対抗する柔和で神聖な力… 聖地でも、ウクライナでも、他のどこでも、これ以上罪のない血を流さないでください!もう十分です!戦争は常に敗北です、常に!」と訴えられており、これに応えたものだ。

 UISGは16日の声明で、聖地での最近の出来事に悲しみを表明し、「私たちが直面している状況に深い懸念と悲しみを抱いているこの時に、希望の光を分かち合いたい」と述べ、 「今こそ、私たちが、国際社会として一致し、平和が暴力に勝利し、正義が争いに勝利し、憎しみに和解が勝利する世界を祈る時。祈りで一致すれば、私たちは平和と正義への願いを父なる神に届けることができる」として、すべての会員とその協力者が世界祈りの日に参加するよう、心から奨励した。

 エルサレム総大司教のピエルバティスタ・ピッツァバラ枢機卿は、世界のカトリック教会のすべての兄弟姉妹に対し、17日を断食と聖地の平和への祈りに捧げるよう要請している。

  枢機卿は声明で、「前例のない暴力、激化する憎しみ、さらなる破壊をもたらしているイスラエルの現在の政治的・軍事的危機」を嘆き、「残念なことに、私たちがあまりにも長い間経験してきた憎悪がさらに増大し、その後の暴力のスパイラルはさらなる破壊を生み出している。 すべてが死について語っているようです」と述べた。

 そのうえで、「私たちは失望と悲しみの真っただ中に無力なままでいることを望んでいません。私たちは死とその刺し傷(コリントの信徒への手紙1・15章55節)だけを耳にすることはできません。だからこそ、私たちは祈り、父なる神に心を向ける必要性を感じているのです」と言明。聖地のすべての教会指導者を代表して、世界のすべての教区と修道会を、平和と和解のための断食と祈りの日に招いた。 そして、「この方法でのみ、私たちはこの苦難のさなかに神に祈りととりなしを頼り、神に祈り、叫び求めることによって、この困難な時期に耐えるのに必要な強さと平穏を引き出すことができるのです」と訴えた。

 
2023年10月17日

・ニカラグア独裁政権の教会弾圧ー今度はイエズス会の法的立場を取り消し、土地、建物没収

ニカラグアにおけるイエズス会の法的ステータス取り消しに、同会中米管区は非難を表明

(2023.8.24 バチカン放送)

 ニカラグアのオルテガ政権が教会に対する弾圧を強める中で、今度は、現地で活動中のカトリック修道会、イエズス会の法的立場を取り消し、活動を停止させるとともに、会の所有する土地、建物を没収した。

 一連の政権による行為は、法的手続きを無視して強行され、イエズス会には、公平な法的判断を求める機会も与えられなかった、という。

 オルテガ政権は、今回の強硬措置に先立って、イエズス会が設立、運営している「ニカラグア中米大学(UCA)」と、マナグアのイエズス会の施設を「テロとの戦い」を理由に閉鎖、没収している。その際、施設で生活していたイエズス会士たちに、個人的な身の回り品を持ち出すことさえ認めなかった。

 このような政権の不当行為に対して、イエズス会の中米管区は声明を発表。「我々の修道会に対する攻撃であるにとどまらず、ニカラグア国民に対する国家レベルの組織的弾圧の一部だ」と強く非難。「国民や教会に対する弾圧を直ちに中止し、真理、正義、対話、人権と法治国の尊重が勝る理性的解決に努めるよう、同国の政治家たちに訴えた。

 オルテガ政権による教会や教育機関に対する弾圧はここ一年、特に強まっており、マタガルパ教区のロランド・アルヴァレス司教は昨年8月に逮捕された後、裁判も開かれないまま、「国家反逆罪」という罪状で26年の懲役を科せられた。

 ニカラグア国内の大学に対する圧力は増し、マナグア大司教区のインマクラーダ・コンセプシオン大学をはじめ、多くの私立大学が「自主的解散」という名目で大学としての扱いを取り消され、閉校に追い込まれている。

(編集「カトリック・あい」)

2023年8月26日

・豪司教協議会の代表団がウクライナ訪問、ロシアの軍事侵略の惨状を確認、被災者たちを激励

Bucha, UkraineBucha, Ukraine  (AFP or licensors)

  代表団はまた、聖ペテロ・パウロ教会で行われた戦死した兵士の葬儀ミサに招かれた。葬儀は、この教会だけで一日に十数件も行われることがあるという。 キエフでは、復活大聖堂でウクライナ・ギリシャ・カトリック教会(UGCC)のキエフ大司教区のアンドリー・ヒミャク補佐司教と会談した。復活大聖堂はまだ建設中だが、秘跡と司牧活動の重要な中心となっている。ロシアによる軍事侵攻が始まった当初の数日、300人以上の人々が身を守るために大聖堂の地下に避難した。 今も、大聖堂は避難所、祈りとミサ典礼の場所、そして被災者の支援とケアを行う拠点であり続けている。被災して日々の暮らしに困窮している人々に毎日最大 800 食の食事を提供してもいる。

  キエフの郊外には、ロシア軍の無差別的な攻撃で多くの一般人が殺戮されたルピンとブチャの町がある。 イルピンでは、住宅や建物の7割が破壊された。代表団は、イルピンの小さなコミュニティを率いるギリシャのカトリック司祭ヴィタリ・コレスニク神父と面会した。 近くのブチャでは、地元の戦死した兵士の墓地と民間人の集団墓地を訪れ、殺害された人々、後に残された人々のために祈りを捧げた。

  ACBCは今回の訪問についての報告を「短い期間だったが、ウクライナ訪問で、ウクライナの人々を支援する、というオーストラリアの教会の兄弟的決意を確認することができた」と締めくくっている。 司教たちは帰国後、「これまでに築いたつながりをさらに強化し、オーストラリアの信徒たちに祈りで苦しみの人々に寄り添い続けるよう促す」と記している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月14日

・米日のカトリック4教区が核兵器廃絶で共同行動の声明‐日本側のホームページには見当たらず?

(2023.8.13 カトリック・あい)

   米国の有力カトリック・メディアCRUXが12日伝えたところによると、 日本の長崎への原爆投下から78周年を迎えた8月9日、原爆投下に関わりを持つ日米4教区のカトリック司教たちが、過去の行為に焦点を当て、「核兵器のない世界」実現に向けて協力する共同声明を出した。 「原爆投下80周年にあたる2025年8月までに具体的な進展がなされることを」と当面の目標とする、という。

 共同宣言に参加したのは、米国のサンタフェ教区長のジョン・ウェスター大司教と シアトル教区長のポール・エティエンヌ大司教、日本の広島教区長の白浜 満・司教、長崎教区長の中村倫明・大司教と高見三明・元大司教の5人。

 声明で5人は、「核兵器の保有は道徳に反するもの」と糾弾し、「(広島、長崎の惨状を)記憶し」、「(核全廃に向けて)共に歩み」、「(核の悲劇の再発から)守る」の三つを重点に、世界の教区、聖職者、修道者、信徒に、この運動にに積極的に参加するよう呼びかけた。また、この問題に関わる人々―広島と長崎の原爆犠牲者、ウラン鉱山労働者、平和活動家、核技術者、軍関係者、外交官―などとの対話を進め、、核兵器のない世界を目指す特別な意向で少なくとも年に一度ミサを捧げるほか、核被害者を支援し、兵器が破壊した環境を回復するための特別募金を呼びかける、という。

 そして声明の最後に、核兵器の全廃を目指す核兵器禁止条約に、米、英、仏、ロシア、中国、インド、パキスタン、北朝鮮など核兵器保有国や、核を持たないが強い影響力を持つ日、独、伊など主要国首脳会議(G’7)メンバーに署名を求めるとともに、核兵器廃絶に向けた具体的な措置を講じるよう呼びかけた先のG7広島サミットの内容を確認している。

 米国科学者連盟が3月に発表したデータによると、世界で最も多くの核弾頭を保有しているのはロシアで5899発、米国が5244発でこれに次ぎ、3位は410発の中国だが、現在急ピッチで核弾頭を増産している。4位はフランスの290発、5位が英国の225発。以下、パキスタン 170 発、インド 164 発となっている。

 今回の共同声明について、日本の司教協議会会長の菊地功・東京大司教はCRUXに対して、 「私たち日本は、この破壊的な兵器を最も大量に保有する国の一つである米国の司教や友人の日本の司教たちが核兵器に反対し、核兵器の廃絶を訴えてくれたことを歓迎します」とし、「平和を求める被害者の側からの声はもちろん重要ですが、核兵器を使用する可能性のある国の人々の側からも声を上げる必要があり、米国の人々、特に一部の司教たちが勇気を持って核兵器廃絶を訴えてくれたことをうれしく思う」と強調。 「世界中の教会で自らの行動を通じて、対話が連帯と信頼を得る唯一の方法であることを証明することに努めねばなりません。それは、教会のSinodalirity(共働性)を促進し、sinodal(共働的)な教会は神の平和の世界のモデルとなるでしょう」と期待を述べた。

 なお、共同声明を主導した米国のサンタフェ教区は、広島、長崎に投下された原子爆弾の開発、製造を行ったニューメキシコ州のロスアラモス国立研究所を管内にもつ。同研究所は、現在でも、核兵器開発やテロ対策など米国の軍事・機密研究の中核となる研究部門を持っている。

 また、シアトル教区の管内には、シアトル郊外にある海軍の戦略原潜基地があり、米国内でもっとも核兵器が集中配備されているといわれ、いずれも、現在に至るまで核兵器の開発、製造、配備で、米国を”代表”する研究所や基地を抱える教区だ。

 今回、核廃絶を訴える共同声明を出したことは評価するが、特にサンタフェ教区の場合、広島、長崎原爆投下時、あるいはそれから間もない時期に、その二つの原爆の開発、製造を行い、今も続けている研究所が自らの教区内にあることを知っていたはずであり、なぜ80年近くも”沈黙”していたのか、という疑問が残る。

 また、同教区は聖職者による性的虐待に対する被害者の損害賠償訴訟多発に教区財政が耐え切れず、今年初めに 破産手続きで原告と合意に達したばかり、しかも3月半ばには ウェスター大司教名で、性的虐待を受けた信徒たちに謝罪する公開書簡を出す、という具合に、教区に対する教会内外の人々の信頼が大きく揺らいでいる最中だ。”規模”は違うが、日本側も長崎教区が、長崎地方裁判所から、性的虐待にからんで損害賠償命令を受け、さらに性的虐待問題を扱い教区事務局の担当者を精神的傷つけたとして訴えられるなど、問題を抱えている。

 そうしたことが影響したのか定かでないが、この共同声明も、日本側はカトリック中央協議会のホームページにも、長崎、広島両教区のホームページにも、13日現在、見当たらないようだ。せっかく日米共同で出された核廃絶への決意を示す声明が、肝心の日本の信徒と共有されないのは、極めて遺憾としか言いようがない。

 ちなみに、米側の両教区はホームページで9日付けで、以下の共同声明を報じている。

Partnership for a World Without Nuclear Weapons  From the Archbishops of Santa Fe, Seattle, Nagasaki, and Bishop of Hiroshima

Nagasaki, Japan, August 9, 2023 – On the 78th anniversary of the atomic bombings of Hiroshima and
Nagasaki, we, the bishops of four Catholic arch/dioceses in areas impacted by nuclear weapons, declare
that we will begin working together to achieve a “world without nuclear weapons.” We urge that there be
concrete progress made by August 2025, the 80th anniversary of the atomic bombings.
In the spirit and teaching of Pope Francis, we recognize that even the possession of nuclear weapons is
immoral. Therefore, we call upon the leaders of the world, as we urged the leaders of the G7 meeting in
Hiroshima in May 2023, to also undertake the following concrete steps toward the abolition of nuclear
weapons:
• Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering that the Hiroshima and Nagasaki atomic
bombings inflicted upon hibakusha;
• Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering and environmental impacts caused by
uranium mining and nuclear weapons research, production and testing around the world;
• Reiterate that a nuclear war cannot be won and must never be fought, as well as emphasize that, as the
G20 agreed to in November 2022, the use and the threat of use of nuclear weapons are “inadmissible;”
• Announce and commit to concrete steps to prevent a new arms race, guard against nuclear weapons
use, and advance nuclear disarmament;
• Honor the international mandate to enter into serious multilateral negotiations leading to nuclear
disarmament, pledged to more than a half-century ago in the 1970 Non-Proliferation Treaty;
• Support the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, which was first signed and ratified by the
Vatican.
At the same time, in recognition of our own responsibility as religious leaders to exercise leadership, we
have agreed to create a new initiative to promote the realization of a world without nuclear weapons. In the
spirit of “remembering, walking together, and protecting,” as Pope Francis said in his message in
Hiroshima on November 24, 2019, we will work hand-in-hand with our four arch/dioceses as well as with
other dioceses and other faith traditions to build an interfaith partnership.
To remember is to learn from our painful history, to examine the current situation, and to build a culture of
peace. To walk together is to pray together, to support each other, and to act. To protect is, among other
things, to help all victims of nuclear weapons, to restore the environment destroyed by nuclear weapons,
and to protect our common home, the earth.
We invite all religious traditions to develop specific activities in accordance with the spirit of this
partnership introduced above.
In our four arch/dioceses, more specifically,
(1) In order to remember, we will listen to and dialogue with hibakusha, uranium miners, peace
activists, nuclear engineers, military personnel, diplomats, and others on a regular basis;
we will create opportunities to learn about the threat of nuclear weapons and the devastation caused
by nuclear weapons.
(2) In order to walk together, we will ask for God’s help as individuals and as community with specific
prayers (as introduced at the end of this declaration); we will offer Mass at least once a year with a
special intention for a world without nuclear weapons and, wherever possible, call for a special
collection to support nuclear victims and to restore the environment destroyed by nuclear weapons.
(3) In order to protect, we will promote the signing and ratification of the Treaty on the Prohibition of
Nuclear Weapons; we will urge the leaders of the world to redirect the funds spent on the
development and maintenance of nuclear weapons toward helping vulnerable populations and
addressing environmental issues.
We, the bishops of four arch/dioceses in areas that have experienced the devastation caused by nuclear
weapons, call on our priests, religious, and lay people to participate actively in this partnership to
“remember, walk together and protect” so that we may create a legacy of peace for current and future
generations.
The road to peace is difficult—we cannot travel it alone.
We conclude by calling upon Christ, the Prince of Peace, our Partner and Companion on the journey, to
bless our partnership, and we ask for the intercession of Mary, Queen of Peace.

 

2023年8月13日

・教皇、WYD大会閉幕ミサで、次回2027年大会はソウル、2025年にローマで「若者の聖年」と発表

2027年ワールドユースデー大会のソウルでの開催発表に喜ぶ韓国の若者たち 2023年8月6日 WYDリスボン大会・閉会日の記念ミサ で2027年ワールドユースデー大会のソウルでの開催発表に喜ぶ韓国の若者たち 2023年8月6日 WYDリスボン大会・閉会日の記念ミサ で  (AFP or licensors)

 教皇フランシスコは6日、リスボンのテージョ公園で行われた世界青年の日(WYD)大会閉幕の記念ミサの終わりに、次回2027年大会の開催地を韓国・ソウルとすることを発表された。

 また、2025年の聖年にローマで「若者の聖年」の行事を行い、世界中の若い信者たちを招くことも明らかにされた。

(編集「カトリック・あい」)

2023年8月6日

【教皇 リスボン訪問3日目】WYD大会参加の若者たちと昼食懇談

ワールドユースデー大会の参加者たちと昼食を共にする教皇フランシスコ 2023年8月4日 リスボン、駐ポルトガル・バチカン大使館ワールドユースデー大会の参加者たちと昼食を共にする教皇フランシスコ 2023年8月4日 リスボン、駐ポルトガル・バチカン大使館  (Vatican Media)

(2023.8.4  バチカン放送)

 ポルトガル訪問3日目の4日昼、教皇フランシスコは、リスボン市内のバチカン大使館で世界青年の日(WYD)大会に参加する若者たちと昼食を共にされた。

 WYD国際大会では、参加者を代表する世界各国の若者たちと教皇が昼食を共にすることが、一つの「伝統」となっており、今回は、ポルトガルから3人、ペルー、フィリッピン、赤道ギニア、米国、パレスチナ、コロンビア、ブラジルからそれぞれ1人の若者たちが出席し、リスボン総大司教、補佐司教と共に、教皇と歓談した。

 教皇と若者たちの対話の中では、「平和」や「命の保護」「新しい世代の挑戦」などがテーマとなったという。

2023年8月5日

【教皇、ポルトガル訪問】教皇、「世界青年の日(WYD)」大会出席などポルトガル訪問開始

2日、リスボンの空軍基地で歓迎の子どもたちに祝福を与える教皇フランシスコ

 教皇フランシスコが2日朝、リスボンでのWYD大会出席などのため、ローマを発ち、現地時間午前10時に同市のフィゴ・マドゥーロ空軍基地に到着された。海外司牧訪問(イタリアを除く)は今回で42回目。WYD大会は1日から6日まで開かれるが、教皇は開催地のリスボンを始め、カスカイス、ファティマでも若者たちとの出会いを予定しておられる。

 訪問初日の2日、教皇はリスボン到着後、市内の大統領公邸・ベレン宮殿に向かわれ、正門前での歓迎式の後、公邸の芳名帳に署名と共に「ポルトガルにおける希望の巡礼者として、心若きこの国が兄弟愛の水平線に漕ぎ出し、出会いの都市リスボンがヨーロッパと世界の重要な問題に共に立ち向かうための方法に霊感を与えることを、祈り、望みます」と記帳された。

 公邸にマルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領を表敬訪問された後、騎馬隊に先導され、ポルトガル各界要人や外交団との会見が行われるベレン文化センターへ車で移動された。沿道には、ワールドユースデー大会に参加する若者たちや市民が詰めかけ、教皇を熱心に歓迎した。

 続いてバチカン大使館でアントニオ・コスタ首相と会見した後、ジェロニモス修道院で司教、司祭、助祭、修道者、神学生たちと夕の祈りを捧げられる。

 

 3日木曜日は、午前に、リスボン市内のポルトガル・カトリック大学で学生たちと、続いてカスカイスのスコラス・オクレンティス本部で若者たちとお会いになる。夕には、リスボン市内のエドゥアルド7世公園での歓迎式に臨まれる。

 4日金曜日は朝、市内のプラサドインペーリオ庭園 で若者代表たちと赦しの秘跡をなさった後、セラフィナ地区にあるセントビンセントデポールの社会教区センターを訪問され、代表たちをお会いになる。バチカン大使館で若者代表たちを昼食を取られ、夕方には、エドゥアルド7世公園で若者たちと十字架の道行きをされる予定。

 5日土曜日は、ヘリコプターでファティマに向かわれ、聖母大聖堂で病気の若者たちとロザリオの祈りを捧げられた後、リスボンに戻られ、夕方にブリットの聖ヨハネ学園でイエズス会士たちと私的な会合を持たれ、夜、市内のテージョ公園で若者たちと夕の祈りをされる。

 最終日の6日日曜日は「主の変容」の祝日。テージョ公園でWYD大会のミサを大会参加者たちと捧げられ、正午の祈りをされる。午後は「海のプロムナード」でWYD大会のボランティアたちと集いを持たれ、フィゴ・マドゥーロ空軍基地で歓送会の後、午後6時過ぎに同基地から空路、ローマへの帰途に就かれる。ローマ着は現地時間午後10時過ぎの予定だ。

 

 なお、教皇フランシスコがポルトガルを訪問されるのは2回目。前回の2017年5月には、コヴァ・ダ・イリアにおける聖母出現から100年を記念するとともに、「ファティマの牧童」フランシスコ・マルトとジャシンタ・マルト兄妹の列聖式をとり行うためにファティマを巡礼されている。

2023年8月2日

・「世界青年の日(WYD)リスボン大会が、野外ミサで開幕

  世界青年の日(WYD)第 37 回大会が1日、ポルトガルの首都リスボンのエドワード7世公園で、リスボン大司教、 マヌエル・クレメンテ枢機卿の司式によるミサで始まり、世界中からり数千人の若者が参加した。

 ミサは、若者たちが祈り、笑い、音楽で団結し、この素晴らしいイベントに参加するために世界中を旅するそれぞれの思いを共有する感動的な機会となった。

 クレメンテ枢機卿は、bemvindos(ようこそ、いらっしゃい)!」という温かい歓迎の言葉でミサを始め、今大会のテーマ “Mary arose and went with haste”を中心に説教を行った。枢機卿は、参加者たちに対して、「皆さんは、長い道のり、様々な交通機関を乗り継ぎ、多大な出費をして、たいへんだったでしょう」と労ったうえで、「そのような数々の困難を越えてきたこの旅は、あなたがたの人生の旅と同じように、日々、新たな経験を重ねる重要な意味を持っています」と強調。「リスボンはあなたがたを心から歓迎しています。これまでの旅で訪れた、あるいはこれから訪れるポルトガルの他の地域もそうです」と述べた。

  大会に参加したくても、時間や費用などの問題で参加できなかった若者も世界中に数多くいる。ナイジェリアから参加したある若者は、「ナイジェリアは遠いし、旅費も高額でした。希望しても参加できなかった人も少なくありませんが、彼らも大会に霊として参加している、と信じています」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月2日

・死傷者多数、リヴィウ市民に卑劣極まるミサイル攻撃に現地の大司教が哀悼と速やかな和平実現を祈る

Burnt-out cars line a street in Lviv after Russia’s recent rocket attack  (ANSA)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年7月7日

・ドイツのカトリック信者数が昨年一年で過去最大、52万人も減少―背景に性的虐待による信頼危機

(2023.6.30 カトリック・あい)

  ドイツ司教協議会(DBK)が6月28日発表した年次統計によると、2022年一年で同国の52万2821人のカトリック信者が教会に背を向けた。これは2021年の35万9338人を大きく上回り、過去最大の教会離れを記録したことになる。

 背景には、聖職者による性的虐待とそれを隠ぺいしようとする高位聖職者の対応による教会に対する信頼の危機があるとされており、ゲオルグ・ベツィングDBK会長は、この数字を深刻に受け止めるとともに、カトリック信者に対し、落胆することなく、被害者対策や教会改革に努めるよう呼びかけた。

 カトリック教会の信者数は、キリスト教各派の中で最大の2090万人に上るが、2010年にドイツで聖職者の性的虐待危機が深刻化して以来、10年余りの間に約370万人が教会を去っている。聖職者による未成年者性的虐待の被害者は1946年から2014年までに3677人に上るとの調査結果があるが、すべての聖職者にアクセスできていないことから、実際の被害者数はさらに多いと見られている。

 DBKはこの問題について公式に謝罪した後、被害者に対する補償制度などの整備に取り組んできたが、依然として不十分との声も被害者の間にある。また、ドイツ最大のケルン教区では、大司教のヴェルキ枢機卿が、教区司祭などの性的虐待を隠ぺいしたとして司法当局の調べを受けている。教会に対する信者の信頼回復するための教会改革も、司祭の独身制の再考や女性の教会における役割の引き上げなどは、内部の保守勢力やバチカンから抵抗を受けており思うように進んでおらず、教会離れは止まりそうにない。

(さらなる情報はLa Croix の記事を参照:https://international.la-croix.com/news/religion/more-than-half-a-million-germans-left-the-catholic-church-in-2022/18051)

 

2023年6月30日

・ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

(2023.6.14 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom

ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

約700人のキリスト教徒を殺害したする報告書を明らかにした。

行使したとして告発されていたが、<詰める>「ナイジェリアのイスラム過激派指導者

 ヤウンデ(カメルーン)発 – ナイジェリアの有力人権団体が12日、イスラム教徒のフラニ族の遊牧民を主体とした過激派が5月29日に退任した同国のブハリ前大統領への「退任祝い」として約700人のキリスト教徒を殺害したとする報告書を明らかにした。

 「国際自由人権協会」と「法の支配協会」がCruxに送った報告書によると、ブハリ前大統領は 2015年からの任期中に、反キリスト教、親イスラムの政策を推進するために大統領としての権力を行使したとして告発されていたが、「ナイジェリアのイスラム過激派指導者(である大統領)が政権を去る機会を狙って、フラニ族過激派が 700 人以上の無防備なキリスト教徒を虐殺した」としている。州ごとの殺害された内訳は、ナイジェリア中東部のプラトー州で350人、ベヌエ州で190人、中北部のカドゥナ州で100人、中部のナサラワ州で62人、タラバ州で40人、ボルノ、ヨベ両州で40人、同国と隣接するニジェールで50人という。

 フラニ族は、北西はモーリタニアから東は中央アフリカまで西アフリカの多くの国に分布する民族遊牧民を起源とし、現在でも牧畜を営む者が多いが、 2000年代以降、ナイジェリアのカドゥナ州で農耕民のキリスト教徒との間で土地利用をめぐる衝突が始まり、しばしば暴力事件に発展し、双方に多数の死者が発生している。 国際キリスト教人権監視機構の調査では、フラニ族の過激派は「過去数年間でボコ・ハラムよりも多くのキリスト教徒を殺害し、キリスト教徒の農民を追い出している」と報告されている

 12日に出された「国際自由人権協会」と「法の支配協会」の報告書は、「2023年4月12日から6月12日までの60日間では、1100人以上の無防備なキリスト教徒がナイジェリア政府の支援するイスラム過激派によって殺害され、2023年1月1日から6月12日までの160日間では2150人のキリスト教徒が殺害され、1400人以上が拉致されそのうち140人が、 生きて家族の元に帰れなくなる恐れがある」。さらに、「4月12日から6月12日までの60日間に100の教会がイスラム過激派によって破壊され、聖職者20人が襲われている」としている。

 この報告書の前、4月10日に、ナイジェリアで2009年の”イスラム蜂起”以来、1万8100の教会と2200の学校が理不尽に焼き払われ、少なくとも5万3350人のキリスト教徒が殺害された、という報告書が出されており、それによると、フラニ族過激派による暴力行為の多くが集中したカドゥナ州では、ナシル・エル・ルファイ前知事統治下の8年間で、少なくとも3万1350人のキリスト教徒が切り殺され、200人以上の聖職者が襲われた襲撃された。また、イスラム教徒穏健派も同期間に約3万4000人が殺害された、という。

 また、報告書は、主にナイジェリア北部に住む5000万人以上のキリスト教徒が「キリスト教徒であるという理由でイスラム過激派による深刻な脅威」にさらされ、「1400万人が家を追われ、800万人が殺害を避けるために家からの避難を強いられている… 約500万人が避難民となり、ナイジェリア国内の国内避難民(IDP)キャンプや地域や隣接する準地域の国境にある難民キャンプに強制収容されている」と説明している。

 そして、「キリスト教徒とキリスト教会に対する迫害の責任は、ブハリ前大統領とカドゥナ州エル・ルファイ前知事の「過激なイスラム主義」にあると糾弾。エル・ルファイの最近の言動が容疑を裏付けるものとして引用されている。入手されたビデオ録画で、カドゥナ州前知事は「2015 年以来、カドゥナ州における完全なイスラム支配を再現することに成功し、ナイジェリアをイスラム国に変貌させることに成功した」と誇っており、最終的にはイスラム教徒によるイスラム教徒のための大統領の誕生に至った」と報告書は述べている。

 さらに、カドゥナ州を含むナイジェリアの中部地域でのキリスト教徒の大量殺害は「慎重に計画され、組織的に実行され、十分な資金が提供された”国家聖戦プロジェクト”であり、 バシル前大統領の残虐な治世(1989~2019年)のもとで行われた」と報告書は述べ、「大量虐殺と人道に対する罪を犯した」としてエル・ルファイ前知事とブハリ前大統領らの処罰を主張、「英国政府は、1998年国際刑事裁判所規程の当事国として、エル・ルファイ、ブハリ、ブラタイ、ムサ・ダウラ、アラセ、アルカリ・ババ、およびその他の現役及び退任したナイジェリアの治安に責任を持つ政府高官らの処罰が確実にすべきである」と元宗主国である英国に要求。「英国政府は… 『民主的で人権尊重する国家』として世界に誇る以上、陰惨で卑劣な人権侵害の加害者たちを容認する国と見なされることはできないはずだ」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年6月14日

・「核軍縮と核兵器廃絶に向け具体的な合意形成を」G7首脳たちに日米の4司教が要望-問われる主催国日本の司教団の姿勢

(2023.5.20 カトリック・あい)

 19日から21日まで開かれる広島G7サミットに向けて、被爆地の広島、長崎、そして米国のサンタフェ、シアトルの4人の司教がG7首脳たちあてに、「世界の平和、とくに核軍縮と核兵器廃絶に向けて具体的な合意形成が図られること」を願う共同宣言文を出した。

 疑問に思われるのは、共同宣言を出したという発表、宣言の内容の公表は20日現在、日本ではカトリック広島、長崎両教区のホームページでしかなされていないことだ。日本のカトリック中央協議会のホームページには皆無。しかも、司教の教区司祭、信徒に対するメッセージを共同宣言と合わせて載せているのは広島の白浜司教のみ。長崎教区は「米日の4つの教区が共同宣言文を発表しましたのでお知らせします」という教区事務局長の他人事のような”前文”が共同宣言の前に載せられているだけだ。

 被爆地広島で初めて開かれた民主主義の価値を共有する世界の主要7か国と欧州連合の代表が参加したG7、ロシアや中国、北朝鮮による核の脅威が高まる中でのG7へのメッセージであれば、常識的に言って、広島G7の主催国・日本の代表である岸田首相に対するのは日本司教協議会会長である菊地・大司教であり、今回の宣言文の代表者も菊地・大司教であるのが筋であり、適切であったと思われる。

 日本の司教団としてではなく、被爆地の二つの教区長のみの署名にとどまり、しかも長崎教区は司教のメッセージさえもない、という腰の引けた日本の司教団の姿勢は、内外の司祭、信徒たちの目にどのように映るのだろうか。

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 サミット開催地広島の白浜司教の教区の司祭、信徒あてのメッセージと、共同宣言の全文以下の通り。

広島教区の兄弟姉妹の皆さん

 いよいよ5月19日から21日まで、広島でG7サミットが開催されます。広島でかつ保有国を含むG7サミットが開かれるこの機会に合わせて、世界の平和、とくに核軍縮と核兵器廃絶に向けて具体的な合意形成が図られることを願い、米国で核兵器の開発製造が行われている研究所が所在する地域を管轄するサンタフェ大司教、米国で最も戦略核兵器を配備している地域を管轄するシアトル大司教、そして戦争被爆地を含む地域を管轄する長崎大司教と共同で、カトリックの霊的指導者として、G7広島サミットの首脳宛に共同宣言文を出しました。その英文と日本語訳を共有したいと思います。
なお、サンタフェのウェスター大司教、シアトルのエチエンヌ大司教が、8月4日から7日に広島その後、8月7日から9日に長崎を訪問され、平和行事に参加してくださる予定です。
教区内では、5月13日~31日までを、「世界の平和とシノドスのための祈りの期間」に設定して、キリストの「平和の使徒」となる使命のために、皆さんの霊的なご支援を、どうかよろしくお願いいたします。

2023年5月18日 広島教区 司教 アレキシオ 白浜 満


2023年5月 15日

米国大統領  ジョー・バイデン  日本国内閣総理大臣  岸田文雄  フランス大統領  エマニュエル・マクロン  イタリア首相 ジョルジャ・メローニ  ドイツ首相 オラフ・ショルツ  英国首相  リシ・スナク  カナダ首相 ジャスティン・トルドー

 G7首脳の皆様へ

  私たちカトリック教会の霊的指導者は、来る主要7カ国首脳会議(G7)を機会に、地球規模の検証可能な核軍縮に向けた具体的な措置を講じることを強く求めます。

  岸田文雄首相が、核戦争の最初の被災地である広島市をサミットの開催地に選んだことを私たちは高く評価します。それだけで強力なメッセージとなるでしょう。私たちは、核戦争の長期にわたる惨禍を認識するための一歩として、G7首脳と広島・長崎の原爆被爆者との会談を熱烈に歓迎します。

  私たちは、米国で核兵器に最も資金を費やしている教区であるサンタフェ、米国で最も戦略核兵器を配備している教区であるシアトル、そして世界で唯一の戦争被爆教区である広島と長崎のカトリックの霊的指導者として、摂理によって突き動かされて声を上げます。

  岸田首相は、今回のサミットは、「核兵器のない世界の実現に向けた強いメッセージを発信するために議論を深め」、また、「核兵器による威嚇やその使用を絶対に拒否するという確固たる決意を示す」またとない機会となると述べられました。

  私たちはこの意見に強く同意します。私たちは、サミットを通じて、G7首脳である皆様が、核軍縮・管理の重要性に国際的な関心を向け、核不拡散の努力に対する世界的なコミットメントを示すことを強く求めます。ウクライナ戦争を核軍縮の実質的な進展のための圧倒的な障害とみなすのではなく、核軍縮の絶対的な必要性を明確に示すものとしてとらえます。

  具体的には、G7首脳に以下のことを要請します。

  • 広島と長崎の原爆投下が被爆者に与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

  • 世界中で行われた核実験がその風下の住民たちに与えた途方もなく大きく、また、長期的な苦痛を認識すること。

  • 核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない戦争であることを繰り返し強調し、また、2022年11月にG20が合意したように、核兵器の使用や使用の威嚇は 「許されない 」ことを強調すること。

  • 核兵器のない未来の世界を作るという目標を再確認すること。

  • 新たな軍拡競争を防止し、核兵器の使用を警戒し、核軍縮を進めるための具体的な措置を発表し、約束すること。

  • 新戦略兵器削減条約の完全実施と後続条約の交渉のために、米国とロシアの間で真剣な協議を再開すべきであることを改めて表明すること。

  • 最後に、今から半世紀以上前、1970年の核不拡散条約で約束された、核軍縮につながる真剣な多国間交渉に入るという国際的な使命を尊重すること。

 長年にわたり、世界の指導者たちは、核兵器の脅威を取り除き、新たな核軍拡競争を防止し、文明を終わらせる可能性のある核戦争という究極の破局を回避する必要性について語ってきました。ミハイル・ゴルバチョフ、ロナルド・レーガン、そして私たちの教皇フランシスコなど、多くの著名な指導者たちによって、このような呼びかけがなされてきました。しかし、今こそ、言葉を実際の行動に移す時です。

 複数の核保有国が存在し、新しいサイバー兵器や極超音速兵器、人工知能が出現している今日、新たな核軍拡競争は最初の軍拡競争よりも危険であると私たちは考えています。ロバート・マクナマラ米国防長官は、人類がキューバ危機を乗り越えたのは運が良かったからにすぎないと断言しました。人類の継続的な生存を保証するためには、運だけでは十分ではありません。

 私たちは、G7サミットで世界の指導者たちが、核兵器国と非核兵器国の両方と協力し、核戦争の恐怖に苦しむ国や都市が二度とないようにする準備ができており、その意思があり、またその能力があることを示すことを強く求めます。

 地球上の恒久的な平和の願いとともに。

サンタフェ大司教 ジョン・C・ウェスター  シアトル大司教 ポール・エチエンヌ  長崎大司教 ペトロ中村倫明  広島司教 アレキシオ白浜満


May 15, 2023

President of the United States Joe Biden
Prime Minister of Japan Fumio Kishida
Prime Minister of France Emmanuel Macron
Prime Minister of Italy Giorgia Meloni
Chancellor of Germany Olaf Scholz
Prime Minister of the United Kingdom Rishi Sunak
Prime Minister of Canada Justin Trudeau

 Dear G7 Leaders,

 We, the undersigned spiritual leaders of the Roman Catholic Church, urge you to use the upcoming summit of the International Group of Seven to undertake concrete steps toward global, verifiable nuclear disarmament.

We commend Prime Minister Fumio Kishida for choosing the City of Hiroshima, the first victim of nuclear war, as the summit venue. That alone is a powerful message. We enthusiastically welcome the meeting between G7 leaders and the hibakusha – the survivors of the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki – as a step toward recognizing the long-lasting horrors of nuclear warfare.

As the Roman Catholic spiritual leaders of the diocese with the most spending on nuclear weapons in the United States (Santa Fe), the diocese with the most deployed strategic nuclear weapons in the United States (Seattle), and the only two dioceses in the world to have suffered atomic attacks (Hiroshima and Nagasaki), we are compelled by providence to speak out.

As Prime Minister Kishida observed, the summit presents a unique opportunity “to deepen discussions so that we can release a strong message toward realizing a world free of nuclear weapons” and to “demonstrate a firm commitment to absolutely reject the threat or use of nuclear weapons.”

We strongly agree. We therefore urge you to use the summit to center international attention on the importance of nuclear arms control and disarmament and to demonstrate a global commitment to nonproliferation efforts. Rather than viewing the war in Ukraine as an overwhelming impediment toward making substantial progress, we view it instead as clear demonstration of the absolute need to do so.

Specifically, we encourage G7 leaders to:

  • Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering that the Hiroshima and Nagasaki atomic bombings inflicted upon the hibakusha;
  • Acknowledge the tremendous, long-lasting human suffering that nuclear weapons testing caused to downwinders around the world;
  • Reiterate that a nuclear war cannot be won and must never be fought, as well as emphasize that, as the G-20 agreed to in November 2022, the use and the threat of use of nuclear weapons are “inadmissible;”
  • Reaffirm the goal of a future world free of nuclear weapons;
  • Announce and commit to concrete steps to prevent a new arms race, guard against nuclear weapons use, and advance nuclear disarmament;
  • Reiterate that serious talks should be restored between the United States and Russia to renew full implementation of the New Strategic Arms Reduction Treaty and to negotiate a follow-on treaty; and finally
  • Honor the international mandate to enter into serious multilateral negotiations leading to nuclear disarmament, pledged to more than a half-century ago in the 1970 NonProliferation Treaty.

Throughout the years, world leaders have spoken about the need to eliminate the threat of nuclear weapons, prevent a new nuclear arms race, and avoid the ultimate catastrophe, that is potentially civilization-ending nuclear war. These calls have long been echoed by many notable world leaders, such as Mikhail Gorbachev, Ronald Reagan and our own Pope Francis. But it is now time to actually translate rhetoric into action.

We believe that today’s new nuclear arms race is more dangerous than the first arms race, given multiple nuclear actors and the advent of new cyber and hypersonic weapons and artificial intelligence. U.S. Defense Secretary Robert McNamara asserted that humanity survived the Cuban Missile Crisis only by luck. Luck is not sufficient to ensure the continuing survival of the human race.

We strongly urge world leaders at the G7 summit to show by example how international leadership is ready, willing and able to work with both nuclear weapons and non-nuclear weapons states to ensure that no country or city suffers the horrors of nuclear war ever again.

Yours in the hopes of humanity for lasting peace on earth,

The Most Reverend John C. Wester Archbishop of Santa Fe

The Most Reverend Paul Etienne Archbishop of Seattle

The Most Reverend Peter Michiaki Nakamura Archbishop of Nagasaki

The Most Reverend Alexis Mitsuru Shirahama Bishop of Hiroshima

2023年5月20日

・国連WFPがスーダン支援再開、日本でも緊急募金8日から開始

(2023.5.10 WFPニュース)

 アフリカ東部スーダンで起きている内戦で、国民が大きな被害を受け、チャドに3万人、エジプトに4万人、南スーダンに3万人以上が移動を余儀なくされ、隣国でもそれぞれ大きな危機に直面している。国連WFP(世界食糧計画)の職員3名が命を落とし、2名が重傷を負いました。スーダンにおける治安情勢の悪化により、国連WFPは4月16日、現地での支援活動を一時的に停止。命を救うための食料・現金支援、子どもたちへの学校給食の提供、栄養不良の予防や治療といった支援の一時中断を余儀なくされたが、5月1日に、全ての職員とパートナーの安全確保に最大限の注意を払いながら、支援再開を決定した。

 これを受けて、認定NPO法人国連WFP協会(神奈川県横浜市)は、8日からスーダン緊急支援募金を開始している。スーダンの内戦で被災した難民、難民を支えるホストコミュニティー、国内避難民の緊急のニーズに応えるものだ。

 4月5日に新たに国連WFP事務局長に就任したシンディ・マケインは「必要とされている人道支援者とスーダンの人びとを守る最善の方法は、戦闘を止めることです。スーダンでは、戦闘勃発前から1500万人以上の人びとが深刻な食料不安に直面していました。この数は、戦闘が続けば続くほど、大幅に増加すると予想されています。このような時こそ、国連WFPとパートナーが最も必要とされています」と訴えている。

 また日本の国連WFP協会 青木 創 事務局長も「スーダンではこの戦闘前より370万人の国内避難民に加え、110万人以上の難民を受け入れており、1,500万人以上が深刻な食料不安に直面していました。約40huaxiang1.png0万人の幼児と妊娠中・ 授乳中の女性が急性栄養不良に陥っており、現在の危機の継続によってさらに増加することが予想されています。また、重要な港湾都市であるポートスーダンでは8,000トンの食料を確保しています。しかし、国内にある物資のかなりの部分(約17,000トン)が武装勢力の攻撃を受け略奪されたと報告を受けており、皆さまからのご支援がなければ、困っている方々に支援を届けることができない重大な危機に直面しています。日本の皆さまからの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします」と協力を要請している。

■寄付受付および最新情報:寄付ページ:https://www.jawfp.org/oneshot?btn=LPNR2022sudan 電話:0120-496-819(年始を除く年中無休)最新情報:https://ja.wfp.org/

■国連WFPとは:飢餓をゼロにすることを使命に活動する、国連唯一の食料支援機関です。災害や紛争時の緊急支援、栄養状態の改善、学校給食の提供などを活動の柱に、123の国と地域で活動している。2020年にはノーベル平和賞を受賞した。認定NPO法人 国連WFP協会は、国連WFPを支援する認定NPO法人で日本における国連WFPの公式支援窓口です。募金活動のほか、企業・団体との連携、広報を通じて、日本における支援の輪を広げている。

2023年5月10日

・ナイジェリアでは5万人以上のキリスト教徒がイスラム過激派によって殺害されている

Burnt church in Maiduguri, Nigeriaナイジェリア北東部、ボルノ州の州都マイドゥグリで過激派の焼き討ちに遭った教会(Copyright: Aid to the Church in Need)

 スーダンで、国の実権をめぐる国軍と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」の激しい衝突が勃発し、民間人の死者が100人近くに上っていると伝えられ、教皇フランシスコも強い懸念をもって注視しているが、同じアフリカのナイジェリアでは2009 年の過激派イスラム組織「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来、キリスト教徒に対する激しい迫害が続き、すでに5万人を超える死者が出ている。

 ナイジェリアの自由・人権団体Intersociety が、同国におけるキリスト教徒の現状をまとめた調査報告書を発表した。「Martyred Christians in Nigeria(ナイジェリアで殉教したキリスト教徒たち)」と題するこの報告書によると、2009 年の「ボコ ハラム 」による反乱勃発以来これまで14年の間に少なくとも 5万2250 人のキリスト教徒がイスラム過激派の手によって残忍に殺害されている。

 うち3万人以上がブハリ前大統領の政権下にあった 8 年間に殺害されており、治安悪化に対して十分な措置を取らなかった、と批判されている。穏健派のイスラム教徒も14年間で約3万4000人が、イスラム過激派によって殺害された。

 またこの14年間に、放火などで破壊された教会は1万8000、キリスト教系学校が2200に上っっている。

 報告書によると、今年2023年に入っても、事態が改善される見通しは立っていない。年初から4カ月足らずで、すでに1000人を超えるキリスト教徒が殺され、少なくとも 707 人が拉致されている。特に酷いのはナイジェリア北部のニジェール州で、 3 月 14 日にアドゥヌ で 100 人を超えるキリスト教徒が拉致された。 被害は、カツィナ、タラバ、エド、オグン、ナサラワ、クワラ、コギ、ボルノ、ヨベ、アダワマ バウチ、エヌグ、イモ、ケビ、ゴンベ、バイエルサ、クロス リバーなどの州に広がっている。

 ナイジェリアのキリスト教徒は、「ボコ ハラム」だけでなく、過激派グループに加わったイスラム教徒の遊牧民フラニ族によっても命を脅かされている。

 このような事態が続く中で、故郷を捨てることを余儀なくされたキリスト教徒は約 500 万人に上り、ナイジェリア国内や国境に設けられた難民 キャンプに収容されているという。

 ナイジェリアがアフリカのキリスト教徒にとって最も危険な国の一つになっていることは、迫害されるキリスト教徒の国際支援組織「Open Doors 」が1月に発表した現状報告の危険国・地域監視リストにも載せられている。報告によると、ナイジェリアは近年、全世界で迫害により命を落としたキリスト教徒総数の 89% を占めている。また教皇庁の支援組織「Aid to the Church in Need (ACN) 」の最新の年次報告によれば、2021 年 1 月から 2022 年 6 月までの1年半の間だけで 7600 人を超えるキリスト教徒が殺害された、としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年4月18日