*「『核兵器の使用は倫理に反する』と教会の教えに書くべきだ」帰国途上の機内会見で

 

離日後、機内で記者会見する教皇フランシスコ 2019年11月26日離日後、機内で記者会見する教皇フランシスコ 2019年11月26日  (ANSA)

(2019.11.26 バチカン放送)

 タイと日本への訪問を終え、帰国の途につかれた教皇フランシスコは26日午後、特別機の機内で、随行の記者団の質問に答えられた。

 記者会見では、日本およびアジア、また核や平和に関連するテーマに質問が集中した。

*「東洋には、物事を超えた彼方を見つめる力がある」

まず、教皇は「西洋の社会と教会は、東洋の社会、教会から学ぶことがありますか」との問いに、lux ex Oriente, ex Occidente luxus「光は東方より、贅沢は西方より」という言葉(※「光は東方より、法は西方より」という古代ローマの箴言をもじった言葉)使われ、「光は東方からだが、贅沢、消費主義は西方から来ます… 東方には。まさに知恵がある、それは単なる『知識上の知恵』ではなく、『時間や観想の知恵』。いつも急いでいる西洋社会に対し、観想を学ばせ、立ち止まり、物事を詩的に見ることを教えてくれます」と答えられた。

さらに教皇は「東洋は物事を超えた彼方を見つめる力があり、『超絶性』という言葉をあえて使うことなく、内在性の限界を超えるビジョンを持っています… 西洋人は少し立ち止まり、叡智のために時間を割くとよいでしょう」と付け加えられた。

*長崎には宗教的迫害、広島は残酷を人類に教える場所

「長崎、広島の訪問で何を感じましたか」という問いには、「長崎と広島はどちらも原爆で苦しみました… 違うところは、長崎はキリスト教が古くから根付き、激しい迫害があったこと、広島はキリスト教的な都市ではないが、残酷とはどういうものであるか真に人類に教える場所であることです」と答えられた。

 そして、今回の訪問で「核兵器の使用は倫理に反する」と強調したことを振り返り、「倫理に反するがゆえに、カトリック教会のカテキズムにも加えられるべきこと」との考えを示された。「核兵器の使用のみならず保有も倫理に反する」と広島宣言で語られたことについて、「それは、事故や、1人の狂気が、人類を滅ぼすこともあるからです」と説明された。

*原子力発電は「完全な安全性の確保に至っていない」という意味で限界

 原子力発電に関しての考えを聞かれた教皇は、「日本が体験したようなトリプル災害(地震・津波・原発事故)はいつでも起きる可能性はあります… 原子力使用は『完全な安全性を確保するに至っていない』という意味で限界があります」と述べ、「個人的な意見」とした上で、安全性の点からその使用に懸念を示された。

*政治的に死刑を廃止できなくても、「執行を停止する事実上の終身刑」の国も

 25日の東京ドームでのミサに、死刑確定に無実を訴え、再審・裁判のやり直しを求めている死刑囚の袴田巌さんが出席していたが、という問いに対し、教皇は「袴田さんのケースについては、後で知りました」と言われた。

 同日の安倍首相との会談では、「裁判や、死刑や終身刑、刑務所の収容能力を超えた過剰収容や、判決前の勾留状態など、他国の状況も含めた、受刑者を取り巻く多くの一般問題についてお話ししました」と語った。

 教皇は「倫理に反する」とされている死刑については、「ある国々は、政治的な問題で死刑を廃止できませんが、死刑の執行を停止することで事実上の終身刑としています」とされ、また、「刑罰は社会復帰を常に視野に入れたものであるべきで、展望を与えない刑罰は人道的ではありません」とも話された。

*どこの地域の紛争にも対話と平和を呼びかけている

 香港問題に関連して、「教皇がバンコクから羽田に向かわれる機上で、上空を通過した際に、香港行政長官にメッセージを送られたが、現地の状況について、どう思われますか」との問いには「すべての上空通過国のトップに電報を送るのは儀礼としての習慣です」とされたうえで、香港だけでなく、中南米やヨーロッパなど、今日世界各地で起きているデモについて言及し、「こうした状況を前に教皇庁は対話と平和を呼びかけています」と語った。

 また、「私たちはいつ、教皇の北京訪問に随行できるのでしょう」との問いには、「北京に行けたらよいと思う、私は中国を愛しています」と従来の答えを繰り返された。

(編集「カトリック・あい」)

 

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2019年11月27日