・教皇庁が収支報告-2019年度で円換算で約14億円の赤字、バチカン全体の総資産は5000億円(LaCroix)

(2020.10.2 La Croix  Vatican City Xavier Le Normand)

 「教皇庁の財務はガラス貼りでなければならない」ー教皇庁財務事務局のイエズス会士、ゲレーロ・アルベス長官は、バチカンが財務の透明性に向けて断固とした措置を講じていることを世界に示そうとしている。

カトリック教会の上層部を巻き込んだ金融スキャンダルが続く中で、教皇庁の財務の透明性確保が、これまで以上に必要なっている。先週、教皇フランシスコが列聖省長官のアンジェロ・ベッチウ枢機卿を退任させたことは、大方の関係者を驚かせた。それほど、事態は深刻なのだ。

そうした中で、教皇庁の財務の不透明性に対するマイナス・イメージを打ち消そうと、財務事務局が1日、教皇庁の最新の”経営状態”を示す「2019年の連結財務諸表」を発表、あわせて、Vatican Mediaが編集責任者のアンドレア・トルニエリによるゲレーロ長官へのインタビューを公開した。

 それによると、教皇庁の、2019年会計年度の収入は、3億700万ユーロ(約380億円)。内訳は、約14億ユーロの資金と不動産の運用による収入が1億6400万ユーロ(約204億円)で総収入の半分、保有施設の入場料や書籍などの売り上げが3分の1、残りは、世界の教区や信徒からの献金、寄付など、となっている。

 これに対して、支出は約3億1800万ユーロ(約395億円)で、差し引き1100万ユーロ(約14億円)の赤字となった。支出の内訳は、「使徒的活動」が2億700万ユーロ(約260億円)で65パーセントを占め、人件費や物品資材管理費などが14%、資産管理費が21%となっている。つまり、支出の3分の2が、教皇庁の本来の活動に向けられている、という。

 さらに「使徒的活動」の支出を教皇庁の「部署別」でみると、トップが「広報のための部署」の4600万ユーロ、次が「世界各国の教皇大使館」で4300万ユーロ。これに、「福音宣教省」の2200万ユーロ、「東方教会省」の1600万ユーロ、バチカン図書館の1000万ユーロが続いている。それ以外の教皇庁の部署、機関はそれぞれが700万ユーロないしそれより少ない額となっている。

 また、「使途別」では、「メッセージの発出・普及」のための支出が、「広報のための部署」の支出とほぼ対応する形で最も多くを占め、「福音宣教の困難地域などにある現地教会への支援と特定の福音宣教活動」が総額の16%、「寄付と援助」が「使徒的活動」2億700万ユーロの12%を占めた。

 赤字額は1100万ユーロだが、前年の2018会計年度の赤字額に比べれば、6400万ユーロ改善している。ただし、ゲレーロ長官によれば、2019会計年度は例外的な要素が加わっており、それがなりとすれば、赤字額は二倍の2200万ユーロになっていたはず、という。

 また長官は、発表した財務状況は、あくまで教皇庁の収支であり、バチカン全体の収支には、さらに、バチカン市国、職員のための年金基金、それにバチカン銀行(IOR=宗教事業協会-IOR)の収支が含まれ、資産総額は40億ユーロ(約5000億円)に上り、赤字は出ない、としている。言い換えれば、教皇庁の資産は、バチカン全体の資産総額の35%を占めるに過ぎない。

 2019会計年度の内容について、長官は「比較的穏健な数字だ」とし、教皇庁自体は大きな経済主体ではなく、例えば「米国の多くの大学は、教皇庁よりも、もっと多額の収入を得ている」と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年10月17日