・教皇フランシスコがバチカン改革の使徒憲章「Praedicate Evangelium」を公布、6月5日発効

(2022.3.19 Vatican News Andrea Tornielli & Sergio Centofanti

 教皇フランシスコは19日、バチカン改革の使徒憲章「Praedicate Evangelium(Preach the Gospel・仮訳=福音を宣べ伝えよ)」を公布された。教皇がこれまで進めて来られた教皇庁の本来に役割に沿った構造改革をさらに推進し、現地教会と福音宣教の活動を活性化させるのが狙い。聖霊降臨の主日、6月5日に発効する。

 新憲章の公式の説明は、21日に、バチカン列聖省のマルチェッロ・セメラーノ長官、枢機卿会議のマルコ・メリノ事務局長、教会法専門家のジャンフランコ・ギルランダ・グレゴリアン大学名誉教授(イエズス会士)が出席しての記者会見で行われる予定だ。

 新憲章は、2013年のフランシスコを選出した教皇選挙に先立つ数多くの会議に端を発し、教皇就任後、その指導の下に2013年10月から昨年2月にかけて開かれた枢機卿顧問会議や、世界各地の様々な現地教会の意見などを集約する形でまとめられた。1988年6月に教皇聖ヨハネ・パウロ2世が公布された使徒憲章”Pastor bonus“に取って代わるものだ。

*福音宣教に最重点を置く教皇庁にー福音宣教省を再編統合、教皇直轄の「福音宣教の部署」に

 新憲章の特徴は、フランシスコが教皇に就任されてこれまで9年間、教皇庁のいくつかの部署の再編統合、新設などを通して示された改革の継続の必要性を強調しているところだ。

 具体的な改革の内容として最も注目されるのは、「福音宣教省」と「新福音化推進評議会」を統合して「 Dicastery for Evangelization(福音宣教の部署)」とし、それぞれの長はそのままとしたうえで、教皇直轄とし、福音宣教を教皇庁の役割の最重点事項とすることを明確にしたことだ。

*慈善活動の役割を高め「慈善奉仕の部署」、未成年者保護は教理省の活動の一環に

 また、現在の「教皇慈善活動室」は「Dicastery for the Service of Charity(慈善奉仕の部署)」とし、教皇庁において、慈善活動の役割を高める。

 「慈善奉仕の部署」は、「Apostolic Elemosineria」とも呼称し、貧しい人々、弱い立場にある人々、疎外された人々のために、世界中で援助、支援活動を行う。特別な貧困対策やその他の必要とされた場合は、教皇個人の名前で援助できる。

 新憲章には、教皇庁の部署について、福音宣教の部署、教理、慈善奉仕の順で書かれているのも注目される。

 再編統合でもう一つ注目されるのは、未成年者保護委員会に関するもので、教理省の中に組み入れられたうえで、独自の規範、責任者と事務局を持つ形になる。

*すべての信徒は、福音宣教の使徒ーバチカンの要職にも女性を含む一般信徒を

 また、新憲章が画期的なのは、一般原則として、「すべてのキリスト教徒が、宣教する使徒である」ことを強調し、一般信徒を含むすべての人が、教皇庁の部署の責任あるポストに就くことができる、と明記したことだ。

 新憲章前文に、「すべてのキリスト教徒は、洗礼を受けることで、キリスト・イエスを通して神の愛に出会い、福音宣教の使徒となる。教皇庁の刷新では、このことを考慮に入れねばならない。したがって、教皇庁の改革においては、責任ある役割についても、一般信徒と女性に関与させる必要がある」としている。

 

*教皇庁の役割は、教皇と現地教会とに共に仕えること

 新憲章はまた、教皇庁の位置づけについて、教皇に仕え、普遍教会、つまり世界の司教たち、現地の教会のために働く存在であり、「教皇庁は、教皇と司教の間に自らを位置付けるのではなく、教皇、司教たち、それぞれの本来の役割にふさわしい方法で両方に仕える存在」と規定。もう一つの重要な点は、霊性に関するもので、教皇庁の成員は「宣教する使徒」でもある、としている。

 特にSynodality (共働性)は、教皇庁の通常の働き方として強調され、すでに既定のこととなっており、さらにいっそう進歩させるべきもの、と強調している。

*教皇庁での聖職者、修道者の任期は1期5年、再任も可

 このほか、新憲章では、国務省の「教皇の秘書役」としての役割を強調したうえで、これまで国務省にあった人事局を、財務事務局に移管。聖座財産事務局の仕事については、宗教事業協会(いわゆる「バチカン銀行」)の助けを通して職務を遂行すること、とされた。

 また、教皇庁での聖職者、修道者のポストの任期は、1期5年とし、再任を認め、退任後は、元の教区あるいは修道会に復帰する、と定めた。「教皇庁での5年の任期を終えた聖職者、奉献生活や使徒的生活の組織の会員は、奉献生活の会と使徒的生活の会の会員は、元の教区、小教区あるいは修道会、組織に復帰する。教皇庁の上司が適当と認めた場合、さらにもう1期5年務めることができる」としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2022年3月20日