・仏カトリック協議会会長「将来は女性の枢機卿、シノドス投票権もありうる」(La Croix)

(2020.7.10 LaCroix  Claire Lesegretain)

Head of French bishops foresees women cardinals in future

             仏カトリック司教協議会のエリック・ド・ムーラン会長 ( ©PHOTOPQR/LA DEPECHE DU MIDI/MaxPPP)

 仏カトリック司教協議会(CEF)会長のエリック・ド・ムーラン大司教(58)は、将来、枢機卿団に女性が登場することがありうる、との考えを明らかにした。

 ティヤール・ド・シャルダン協会の機関誌Noosphère,との長時間のビデオ・インタビューに答えた。インタビューは5月18日に行われたが、10日にその内容が公開されたもの。ムーラン会長は、約2年前に教皇フランシスコからランス大司教区長に任命され、会長としては3年の任期の最初の年を追えたばかり。

 インタビューで、まず、教会の統治について問われた会長は「人は、手を引かれねばならない子供のように振る舞うことができない」とし、「それが、過去に教会が機能したやり方でした」と述べた。

 そのうえで、「多くの人々が高等教育を受けるようになった現代社会ー信仰が選択されるか、自由に受け入れるかの社会ーでは、そのようなことは可能でない」と語った。

 カトリック教会の神学によれば、洗礼を受けた人は皆、「神の啓示の前に平等。司教と司祭たちが、一般信徒よりも、神についてよく学んでいるとも、神に近いとも言えない」のは真実であり、受洗した一般信徒全員の声は、キリスト教を受け入れようとした瞬間から、聖職者と同じだけ、数えられることができるのです」と説明。

 教会における女性の役割については、「適所適材が求められる教会の仕事で、今より重要な役割を果たすのを妨げるものは、何もありません」と述べ、さらに「教会組織が今よりも非中央集権化し、友愛的になっていくという条件付きで、女性助祭制度の復元に反対しない、と言明した。

*シノダリティと友愛

 また会長は、教会改革に課せられた課題を、「私たちがすべてのレベルでシノダリティ(協働制)を生きることであり、それは友愛に根ざしている必要があります… 私たちの各統治組織は、常に男性と女性、司祭と一般信徒がいる、堅い友愛によって結ばれたものにならねばなりません」と語り、「友愛に進展がないなら、叙階の問題について扱いの仕組みが今よりも煩雑になり、進展が妨げられてしまう恐れがある」と警告した。

 こうした困難があるものの、会長は「教皇職は、女性がいる枢機卿団によって選ばれた教皇によって担われることになる」と展望を描く一方、「まず、友愛で形作られた教会組織で男女が共に働くようにしなければ、そのような展望は無駄になるでしょう」と述べた。

 さらに、「完全なシノドス様式をとるためには、使徒的継承が男性に限定されるなら、女性の声が特別に今以上に聴かれる必要があります」と語り、最近のシノドス(全世界代表司教会議)には女性の参加も認められたが、投票権は与えられなかったことを指摘し、そうした女性の扱いは、理解できないと感じた、と振り返り、こう述べた。「司教だけに投票権があるのは、理にかなっているように思われるかも知れませんが、司祭や司祭叙階されていない修道士たちが投票することを許されたら… どうして、女性の修道女が投票を認めれれないのか、私には理解できません」「驚きで口がきけなくなります」。

 

*イスラム原理主義への懸念

  イスラム教のフランスなど欧州での急拡大について会長は、主として「(イスラム教徒の欧州における)人口増加によるもの」とし、「彼らにはたくさんの子供がおり、それは彼らにとって良いこと」とする一方、彼らは「長い間、大きな危機的状況に置かれており、その原因の一つは、イスラム運動を通じた政治化にある」と指摘した。

 会長は、フランスの神学者で枢機卿と務めたイエズス会士、アンリ・ドゥ・リュバック(1896-1991)の著作の研究で博士号を取得しているが、一連の著作の解釈がイスラム教にとってほとんど不可能に思われることを、とくに懸念している。「それがイスラム教の内部で起きるのは、避けられない。キリスト教や不可知論の起源が、イスラム学者によって扱われているにもかかわらず、です… 修養を積んだイスラム教徒がコーランの解釈に身を入れると、多くの教義、特にコーランの創造されざる特質ーイスラムにおける啓示の考えに大きな影響を与えるものーが損なわれる」と述べた。

 さらに、西欧諸国にいるイスラム教徒は「個人的な自由を体験しているが、イスラム教にそれを完全に考慮に入れる度量があるとは思えない… 個人の自由は、イスラム教が唱道する家族、社会、宗教の枠組みを侵食することしかできません… イスラム教が、彼らの自由の体験を受け入れるのは、とても難しいでしょう」と述べた。

 そして、そのような理由から、「”イスラム国”を建設しようとする病的誘惑以上のものが、カリフ制(預言者ムハンマドの代理として、イスラム共同体の行政を統括し、信徒にイスラムの義務を遵守させる役割をもつカリフを指導者とする制度)への回帰を招く」ことを恐れている、と述べた。

 

*国際ルールを守らない中国を批判

 ムーラン会長は、世界が現在直面しているさまざまな危機(金融、気候、COVID-19)から統治、民主主義と民族主義にいたる問題について率直かつ大胆に語ったが、その中で、中国問題についても言及した。

 (注:会長のインタビューは、香港に中国国家安全維持法が導入された6月30日より一か月以上も前に行われたため、この問題には触れられていないが)、中国が世界貿易機関(WTO)のルールに長い間従っていないことを取り上げ、「私たちは、中国がWTOのルールを尊重していないことを、ずっと以前から知っていました。国際機関は、それを問題にすべきだったのに、そうしませんでした」と語った。そして、「民族主義、国家主義の台頭を避けたいなら、国際的なルールの受け入れを認めた国が、ルールを尊重することが不可欠です」と強調した。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年7月12日