・「日本の教会のために全力を尽くしたい」菊地・東京大司教の新年メッセージ


東京教区のみなさん、主の降誕と新年のおよろこびを申し上げます。

大司教 タルチシオ 菊地 功

 東京教区のみなさん、主の降誕と新年のおよろこびを申し上げます。

「明けない夜はない」などと言われますが、この二年ほどの間、私たちは感染症によってもたらされた世界的規模の暗闇の中で彷徨ってきました。たびかさなる波の襲来や変異株の出現など、不安を増し加える出来事が相次ぐ中、徐々にウイルスの研究も進み、夜明けは近いと感じることができるようになりました。

 しかし、さまざまな形で影響を受けた世界では、感染症からだけではなく経済的にも、いのちが危機に直面し続けています。

 この二年間、教区からお願いしたさまざまな感染対策をご理解くださり、協力してくださっている皆様に、心から感謝申し上げます。自分の生命を守るためだけでなく、互いの生命を危険にさらさない行動は、隣人愛の選択であるとともに、神から与えられた賜物である生命を生きている私たちの努めでもあります。ミサの公開中止などは極力避けたいと思いますので、今後も状況を見極めながら、判断を続けます。感染対策の指針がしばしば変更となって混乱を招く場合もあり恐縮ですが、ご理解いただきますようにお願いいたします。新しい年になっても、今しばらくは慎重な対応が必要だと思われます。互いに支え合いながら、歩んで参りましょう。

 さて、教会は今、シノドスの歩みをともにしています。詩編100の3節に、「わたしたちは主のもの、その民、主に養われる羊の群れ」と記されていますが、洗礼によってキリストの体において一つに集められた私たちは、神に養われる羊の群れとして、神の民を形作っています。わたしたちはともに歩む共同体です。

 第二バチカン公会議の教会憲章は、教会が個人の信心の積み重ねであると同時に、一つの神の民であることを強調しました。教会憲章には、「しかし神は、人々を個別的に、まったく相互の関わりなしに聖化し救うのではなく、彼らを、真理に基づいて神を認め忠実に神に仕える一つの民として確立することを望んだ」(教会憲章9)と記されています。

 神の民を形作るわたしたち一人ひとりには、固有の役割が与えられています。共同体の交わりの中で、一人ひとりが自らに与えられた役割を自覚し、それを十全に果たすとき、神の民全体はこの世にあって、福音をあかしする存在となることができます。わたしが司教職のモットーとしている「多様性における一致」は、それぞれの役割を認識し、その役割を忠実に果たすところに多様性の意味があり、キリストの体をともに作り上げることに、一致があります。

 わたしたちの信仰は、共同体における「交わり」のうちにある信仰です。わたしたちの信仰は、キリストの体である共同体を通じて、キリストの体にあずかり、いのちを分かち合い、愛を共有する交わりのなかで、生きている信仰です。

 交わりによって深められたわたしたちの信仰は、私たち一人ひとりに行動を促します。「交わり」は互いの声に耳を傾ける「聞く」態度を生み出し、そこから「参加」を生み出します。一人ひとりが共同体の交わりにあって、与えられた賜物にふさわしい働きを自覚し、それを十全に果たしていくとき、神の民は福音をあかしする宣教する共同体となっていきます。ここにシノドスのテーマ、「ともに歩む教会のため-交わり、参加、そして宣教-」の意味があります。

 今回のシノドスの歩みを通じてわたしたちは、共同体における信仰の感覚をとおして、神の民であるという自覚を深めるように招かれています。確かに会議を開いて、設問に回答を見出していく作業は、何かを成し遂げたという実感を与えてくれます。ところが今回、教皇様は、会議をして結論を出すことよりも、「神の民」であることの自覚を共有するための学びや分かち合いの過程そのものが大切なのだと強調されます。

 教区担当者である小西神父が中心になって、さまざまな学びのためのビデオを作成しておりますので、是非ご覧いただき、その内容について、複数の方と心に浮かんだ思いを分かち合うことを、それぞれの小教区では続けていただければと思います。

 教会は社会の現実の苦しみ、特に今般のパンデミックによる痛みへの共感を持つように招かれています。社会にあって今を一生懸命に生きている人たち、すなわち貧しい人々との対話や連帯へと招かれています。いのちを生きる道や文化の多様性を尊重するように招かれています。

 シノドスの歩みに合わせて、東京教区では先に発表した宣教司牧方針を深めてまいります。宣教司牧方針は、私たちの教会が、「宣教する共同体、交わりの共同体、すべてのいのちを大切にする共同体」となることを目指しています。この実現のため、シノドスの歩みから私たちはさまざまな示唆をいただくことができます。

 宣教司牧方針を具体化して行くにあたって、この春には、東京教区のカリタス組織である「カリタス東京」が誕生します。教会にとって愛の奉仕の業は、福音宣教と祈りや典礼と並んで、欠かすことのできない本質的な要素です。同時に、現在の教区の体力の中で、広くさまざまな課題に取り組むためには、組織を集中させることが不可欠です。教区内ですでに活動しているさまざまな動きと連動しネットワークを強化しながら、教会の愛の奉仕の業を深めてまいります。

 教区カテキスタ養成を含めた生涯養成に関しては、コロナ禍で実施が滞ってしまったところがありますが、状況の緩和に合わせて、さらに充実させていくよう努めます。

 また、宣教協力体の見直し作業と、小教区規約の規範版の作成を、教区宣教司牧評議会に諮りながら、作業部会を設置して議論を深める予定でした。残念ながら宣教司牧評議会を開催することができずに一年が経過してしまいました。これも状況の緩和を見極めながら、早急に作業を再開する予定です。

 ところで、この2月からわたしは、日本カトリック司教協議会の会長に就任することになりました。任期は3年です。選出していただいた司教様方の期待に応え、日本の教会のために全力を尽くしたいと思います。また、先般わたしは、アジア司教協議会連盟の事務局長にも選出されました。アジア各国の司教協議会のこの連盟は、日々の実務を香港に駐在する事務局次長に委ねるものの、任期の2024年末まで、できる限り責務を忠実に果たしたいと思います。求められている責務を忠実に、ふさわしく果たすことができるように、皆様のお祈りによる支えを、心からお願いいたします。

 先般教皇様は、仙台司教として淳心会会員のエドガル・ガクタン師を任命されました。仙台教区の皆様にお祝いを申し上げると同時に、東京教区にとっては松原教会の主任司祭を失うことにもなりました。ガクタン被選司教のこれからの活躍の上に、神様の祝福を祈ります。

 なお、今年2022年の待降節第一主日から、日本語の典礼式文が変更となります。30年余にわたる翻訳作業と、試行錯誤と、典礼秘跡省との交渉の実りです。今後、式文以外のミサのさまざまな祈りの文章も新しくなっていきます。よりふさわしい典礼を行うことができるように、この際、典礼についても学びを深めていただきますようにお願いいたします。

 新しい年の初めにあたり、皆様の上に、全能の御父の豊かな祝福がありますように、お祈りいたします。

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2022年1月1日