・「慈しみの祈りと行為で暗黒に打ち勝とう」ーボー枢機卿が声明

Soldiers in military armoured vehicles in Myitkhina, MyanmarSoldiers in military armoured vehicles in Myitkhina, Myanmar  (AFP or licensors)

   ミャンマー・カトリック司教協議会の会長、チャールズ・ボー枢機卿は、11日の「主の慈しみの主日」にあたって声明を出し、非人道的で、残忍な、自己破壊の道を否定し、慈しみの振る舞いに徹するように、国民に訴えた。

 「血と涙」「暗黒」「悲しみの記憶」そして「子供たちを悼む母親たち」のただ中にある「真の十字架の道」ーこれが民主選挙で選ばれたアウンサン・スーチー政府を倒した2月1日の軍事クーデターから2か月以上を経たミャンマーについて、ボー枢機卿が表現した言葉だ。

 枢機卿は声明で、軍事クーデターと、それに抗議する人たちに対する治安部隊による血なまぐさい取り締まりが、新型コロナウイルスの感染が引き起こしたこの国の悲惨さに、さらに拍車をかけている現状を慨嘆した。

 政治犯支援協会(AAPP)が11日現在でまとめた数字によると、軍、警察の治安部隊によって殺された人は確認されただけで706人。実際にはこれよりはるかに多い死者が出ているとみられる。

*ミャンマーの人々は十字架の道を歩んでいる

 ボー枢機卿はメッセージで、教会が人々の苦闘に巻き込まれ、彼らの「血と涙」に寄り添っている、としたうえで、彼らに対して、 「あなたがたは本当に十字架の道行きを経験している… あなたがたの多くにとって、十字架の道行きの第13留ー聖母マリアがイエスの亡骸を抱いて悲嘆に暮れる場面ーが現実となった」と心からの同情を示した。

 そして、「聖母マリアのように、母親たちが、息子たち、娘たちが苦しみを受け、殺されるのを目の当たりにしてて、何百人もの母親が癒しがたい涙を流し、心を痛めるす国に、私たちは住んでいる」と述べ、イエスの御心からあふれる恵みが、悲しみに沈む全ての人を癒やしてくださるように、と祈った。

*カチン州のシスターの勇気ある行為を讃える

 枢機卿はまた、2月28日に北部カチン州の州都の街頭で、一人のシスターが治安部隊の前で跪き、平和的な抗議をしている人々に暴力を振るうのをやめるよう訴え、攻撃を思いとどまらせ、世界中で大きな反響を呼んだ出来事を思い起こし、「”邪悪の津波”を前にして、偉大な証しをしたのを、世界は畏敬の念をもって注視しました。私はシスターが示した愛の証しの行為を称賛します。それによってカトリック教会と修道生活が高く評価されました。暗闇の中から、偉大な力をもって周りを広く輝かせる率直な行為でした」と讃えた。

 170万の人口のほどんどがカトリックを含むキリスト教徒のカチン州では、教会を含む祈りの場所が、反政府勢力の破壊活動を阻止しようとする軍の攻撃と暴力にさらされており、特に、国境地域で、軍と反政府勢力の戦闘が激化。多くの難民が発生している。情報筋によると、州西部モニン市のバプテスト教会、カトリック教会、英国国教会が軒並み襲撃され、仏教寺院なども標的にされている。

*慈しみによって暗黒の時を乗り越える

 枢機卿は、ミャンマーの暗黒の時と苦難の解毒剤として、「善行、言葉、そして力強い祈り」を求めた。それはイエスが、聖ファウスティナ・コヴァルスカ(「神の慈しみ」運動の創始者で1938年に33歳でなくなったポーランドの修道女)に対して何回かの啓示されたものだが、「慈しみは善行から始まる。国民の多くが飢えに苦しんでいる今、これまで以上に、私たちの共同体社会は慈しみを必要としています。私たちは、もてる資源を分かち合う必要があります。どれほど貧しくても、何か分かち合えるーそれが神の慈しみのしるしです」と強調。

 「善い行いは今、どこでも必要。慈しみの主は私たちに、行いと一致しない信仰を持たないことを、私たちに思い起こさせます。私たちの周りの何千人もの人々ー国内の難民キャンプにいて、新型コロナや軍事クーデターの被害を受けている人たちを含めてーが苦しんでいます」と述べた枢機卿は、「恐れと不安、恐怖の中で生きている何百の人々も安らぎと慰めの言葉を必要としていますーイエスが『恐れるな。私はいつもあなたがたと共にいる』と言って、弟子たちを安心させたように」と語った。

 そして、「人々に極度の苦しみを味わわせている新型コロナウイルスの大感染と軍事クーデターの”二つの大きな山”を克服するためには(行為だけでなく)祈りも必要です… 信仰を持ち、絶えず祈りなさい」と信徒たちを促し、イエスが弟子たちに話された言葉を引用して、「もしあなたがたが、からし種ほどの信仰をもっているなら、山に『動け』と命じれば、山は動くでしょう」とした。

 声明の最後に枢機卿は、「残虐で非人間的、そして自滅の道をたどる代わりに、『イエスの光で、私たちはいかなる暗闇にも打ち勝つ』ことを確信したアッシジの聖フランシスコにならって、平和の道具となるように、信徒たちを強く促した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年4月13日