・「共通善を目指し、生き方を見つめ直す回心が必要」ー菊地大司教、「すべての命を守る月間」の終わりに

2022年10月 1日 (土)週刊大司教第96回:年間第27主日

2022_09_21_00rca_0073 早いもので、今年もすでに終盤です。10月となりました。

 10月はロザリオの月です。教皇レオ13世によって、10月は聖母マリアにささげられた「ロザリオの月」と定められました。10月7日のロザリオの聖母の記念日は、1571年のレパントの海戦でのオスマン・トルコ軍に対する勝利が、ロザリオの祈りによってもたらされたとされていることに因んで定められています。

 歴史的背景が変わった現代社会にあっても、ロザリオは信仰を守り深めるための、ある意味、霊的な戦いの道具でもあります。現代社会にあっては、特に神の秩序の実現である平和の確立を願う私たちの思いを、ロザリオの祈りを通じて御父に届けたいと思います。一人でも、いつでも、またグループでも、10月にはロザリオの祈りを通じて聖母に取り次ぎを願うことを、心に留めましょう。

 ケルン教区の代表団が東京教区に滞在中です。長年にわたる両教区の「パートナーシップ」ですが、今回の訪問で、「パートナーシップ」という名称のふさわしいだけの関係が構築されているか、見直しをしたい、との提案が、代表団の担当者から表明されています。

 もちろんケルン教区という巨大な教区と、東京教区とでは、資金力は言うにおよばず、人的可能性でも大きな差がありますので、同じようなことはできませんが、単に「資金提供を受けてきた」という関係以上の絆を、どのように築き上げることができるのか、考えてみたいと思います。もちろん、両者で協力してきたミャンマーへの支援は、特に今のような状況下にあって、しっかりと継続していきたいと思います。

 以下、本日午後6時配信の、週刊大司教第96回、年間第27主日メッセージ原稿です。

【年間第27主日C(ビデオ配信メッセージ)週刊大司教第96回 2022年10月2日】

 9月の初めからこの一か月、私たちは教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」の精神に倣って、「すべての命を守る月間」を過ごしています。10月4日をもって今年の月間は終了します。「ラウダート・シ」に倣うということは、ともすれば、環境問題などの特定の課題に取り組むための啓発活動と考えられる嫌いがありますが、それ以上に、教皇フランシスコが呼びかけるように、これは回心への招きであり、「自然界を通して神の存在を感受するエコロジカルな霊性」の実践への招きです(今年の被造物を大切にする世界祈願日メッセージ)。

 教皇様は今年のメッセージにこう記しておられます。

 「私たちの過剰な消費主義の支配に、大地はうめき声を上げ、虐待と破壊に終止符を打つよう、私たちに懇願しています。ですから、叫びを上げているのはすべての被造物です。創造のわざにおいて、キリスト中心の対局にある『専制君主的な人間中心主義』に翻弄されることで、無数の種は死に絶え、それらによる神を讃える賛歌は永遠に失われてしまうのです」

 ルカ福音は、「務めに対して忠実で謙遜な僕」について語るイエスの言葉を記しています。なすべき務めを、すべて果たした時に、「私どもは取るに足りない僕です。しなければならないことをしただけです」と言うことこそが、忠実な僕のあるべき姿だ、と語るイエスは、これを通じて、「私たちがそれぞれの与えられた召し出しに忠実に生きることが、信仰生活において重要」であることを示唆します。

 「ラウダート・シ」において教皇フランシスコは、「神との関り、隣人との関り、大地との関りによって、人間の生が成り立っている」と記しています(66項)。その上で、「私たちは、ずうずうしくも神に取って代わり、造られたものとしての限界を認めることを拒むことで、創造主と人類と全被造界の間の調和を乱しました」と指摘されました。私たちは与えられたそれぞれの召し出しに忠実に生きる謙遜な僕になっているでしょうか。

 教皇様はさらに、「私たちが神にかたどって創造され大地への支配権を与えられたことが『他の被造物への専横な抑圧的支配を正当化する』との見方は、断固、退けなければなりません」と記されます。私たちには、「被造界を破壊する横暴な支配者」ではなく、「被造界を世話し、保護し、見守り、保存する善き管理者」として、与えられた務めを忠実に、謙遜に果たすことが求められています。

 私たちは、「話せず、語れず、声を届けられない」被造物、特に貧しい人々の叫びに、耳を傾けるよう招かれています。教皇は今年のメッセージに「気候危機にさらされることで貧しい人々は、ますます激化し頻発する干ばつ、洪水、ハリケーン、熱波の、最も深刻な影響を受けています。さらに、先住民族の兄弟姉妹が叫びを上げています。収奪的な経済的利益追求の結果、彼らの祖先の土地は四方八方から侵略され荒廃し、『天へと向かう嘆きの叫び』を上げています」と記し、社会の中心部から忘れ去られた人たちの声に耳を傾けることの重要性を強調されています。

 私たちの周囲には、どのような声が響いているでしょうか。社会や多数の人々の圧力によって、押し潰されてしまっている声はないでしょうか。「より豊かに、より容易に自己完成ができる」ように、共通善の実現を目指して、生き方を見つめ直す回心が必要です(「現代世界憲章」26項)

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2022年10月1日