・「主に”心の耳”を開いていただこう」菊地大司教年間第23主日メッセージ

2021年9月 4日 (土)週刊大司教第四十二回:年間第23主日

2021_08_14 東京は涼しい9月の始まりとなりました。年間第23主日、週刊大司教は第42回目となります。

 政治はめまぐるしく動こうとしていますが、その間の感染症対策は継続しています。東京教区では、主に東京都において毎日発表される検査の新規陽性者数、発症日別の感染者数、重症者数、死亡された方々などの数字を参考にしながら、対応を検討していますが、現時点では収まる方向へ向かいつつあると思われます。

 緊急事態宣言は、予定では9月12日までとなっていますが、その後に延長されるという話も伝わってまいります。教区としての公開ミサの自粛を12日以降、どのようにするのかについては、教区のホームページで公示しておりますので、参照ください。

 以下、本日9月4日(土)午後6時に配信した週刊大司教第42回目のメッセージ原稿です。

【年間第23主日B(ビデオ配信メッセージ)週刊大司教第42回 2021年9月5日】

イザヤ書は、「心を騒がせている者に言いなさい。『強くあれ、恐れるな… 神は来られ、あなたがたを救う』」(35章4節)という神の励ましの言葉を記しています。

 感染症の状況の中で、普段通りの生活がままならず、また心の頼りである教会にあってもその活動が制限される中で、私たちは先の見通せない不安の闇の中で、恐れを感じています。

 不安におののく者に対してイザヤは、神の奇跡的力の業を記し、その力が「荒れ野に水が湧き出でる」ように、不安におののく者に希望を生み出し、命が生かされる喜びを記します。

 マルコ福音は、このイザヤの予言の実現として、イエスがなさった奇跡の業を記しています。イエスは「エッファタ」の言葉を持って、耳を開き、口がきけるようにされた、と記されています。さまざまな困難を抱えて命を生きていた人に、希望と喜びを生み出した奇跡です。

 使徒ヤコブは、外面的要素で人を判断する行いを批判します。確かに私たちは、外に現れる目に見える要素で、他者を判断し、裁いてしまいます。使徒はそれに対して、人間の価値は、神がその人に与えた恵みによって、命が豊かに生かされていることにあるのだ、と指摘します。

 私たちは、命を生かされている喜びに、満ちあふれているでしょうか。そもそも、私たちの命は希望のうちに生かされているでしょうか。喜びに満たされ、希望に満ちあふれるためには、すべての恐れを払拭する神の言葉に聞き入らなくてはなりません。

 「恐れるな」と呼びかける神の声に、心の耳で聞き入っているでしょうか。私たちは、神の言葉を心に刻むために、「心の耳」を主イエスによって開いていただかなくてはなりません。

 「エッファタ」という言葉は、私たちすべてが必要とする神の慈しみの力に満ちた言葉であります。私たち一人ひとりの命が豊かに生かされるために、神の言葉を心にいただきたい。だからこそ、私たち一人ひとりには今日、主ご自身の「エッファタ」という力ある言葉が必要です。

 ところで、教皇フランシスコは2015年に回勅「ラウダート・シ」を発表され、教会が「共通の家」である地球環境のさまざまな課題に真摯に取り組むことの重要性を強調されました。その啓発と霊的な深まりのため、毎年9月1日を「被造物を大切にする世界祈願日」と定め、アシジのフランシスコの記念日である10月4日までを、被造物を保護するための祈りと行動の月間、「被造物の季節(Season of Creation)」としています。

 日本の教会も、2019年の教皇訪日に応える形で、この期間を「すべてのいのちを守るための月間」と定め、昨年からさまざまな呼びかけを行っています。

 教皇さまは「ラウダート・シ」において、「総合的エコロジー」という言葉をしばしば使われ、「環境への配慮とは、単に気候変動に対処しようとか、温暖化を食い止めようとかいう単独の課題への取り組みを意味するのではなく、全体としての「共に暮らす家」を大切にすることである」と強調されます。

 そのため、命に関わるさまざまな課題を総合的に考えなくてはならず、究極的には、「この世界で私たちは何のために生きるのか、私たちはなぜここにいるのか、私たちの働きとあらゆる取り組みの目標はいかなるものか、私たちは地球から何を望まれているのか、といった問い」(160項)に真摯に向き合うことが求められています。

 すべての命を大切にせよ、と命じられる神の言葉を心に刻むために、主の「エッファタ」という力強い言葉によって、心の耳を開いていただきましょう。神の言葉に心を向けましょう。

(編集「カトリック・あい」=表記は当用漢字表記で統一、聖書の引用な「聖書協会・共同訳」で統一しています)

 

 

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2021年9月4日