・「人類は、神の慈しみへ向かわない限り、平和を得ない」ー菊地大司教の復活節第二主日メッセージ

2022年4月23日 (土) 週刊大司教第七十三回:復活節第二主日

2022_04_08_003-2 復活節第二主日です。

 復活節第二主日は「神の慈しみの主日」とされています。主の慈しみのメッセージはポーランドの聖ファウスティナ・コヴァルスカの受けた神の慈しみに関するメッセージに基づくもので、聖ファウスティナは聖ヨハネパウロ二世教皇によって、2000年に列聖されています。

 なお聖人の聖遺物が、東京カテドラル聖マリア大聖堂の右手に、聖ヨハネパウロ二世教皇の聖遺物とともに安置されています。聖堂右手のピエタ像の前です。

 以下、23日午後6時配信の週刊大司教第73回めのメッセージ原稿です。

【復活節第二主日C(ビデオ配信メッセージ)週刊大司教第73回 2022年4月24日)

 復活節第二主日は、教皇ヨハネパウロ二世によって、「神の慈しみの主日」と定められています。

 「人類は、信頼をもって私の慈しみへ向かわない限り、平和を得ないであろう」という聖ファウスティナが受けた主イエスの慈しみのメッセージに基づいて、神の慈しみに信頼し、その愛に身を委ね、私たち自身が受けた慈しみと愛を、今度は隣人に分かち合うを黙想する日であります。

 1980年に発表された回勅「慈しみ深い神」で、教皇はこう指摘されています。
「愛が自らを表す様態とか領域とが、聖書の言葉では「憐れみ・慈しみ」と呼ばれています」(慈しみ深い神3)

 その上で、「この『愛を信じる』とは、慈しみを信じることです。慈しみは愛になくてはならない広がりの中にあって、いわば愛の別名です」(「慈しみ深い神」7項)と言われます。

 「憐れみ深い人々は幸いである、その人たちは憐れみを受ける」という山上の垂訓の言葉を引用しながら、「人間は神の慈しみを受け取り経験するだけでなく、他の人に向かって、『慈しみをもつ』ように命じられている」と指摘される教皇は、人類の連帯を強調されました。

 慈しみに基づいた行動は、神からの一方通行ではなく、それを受ける私たちの霊的変革が求められるごとく、相互に作用するものだ、とも語られます。教皇は「人間的なものに対する深い尊敬の念をもって、相互の兄弟性の精神を持って、人と人との間の相互関係を形成していくために、慈しみは不可欠の要素となる」と指摘しています。正義には愛が不可欠であることを、愛と慈しみが介在して始めて相互の連帯が生まれることを強調するヨハネパウロ二世は、教会が「多くの要素を持った人間関係、社会関係の中に、正義だけでなく、福音の救世的メッセージを構成している『慈しみ深い愛』を持ち込む」ために働くよう求められました。(「慈しみ深い神」14項)

 教皇フランシスコの、東京ドームでの言葉を思い起こします。

 「傷をいやし、和解と赦しの道をつねに差し出す準備のある”野戦病院”となることです。キリスト者にとって、個々の人や状況を判断する唯一有効な基準は、神がご自分のすべての子どもたちに示しておられる、いつくしみという基準です」

 復活された主は、週の初めの日の夕方、ユダヤ人を恐れて隠れ鍵をかけていた弟子たちのもとへおいでになります。主は復活によって、死をもたらす悪に、神の愛と慈しみが打ち勝つことを示され、その上で、「平和があるように」、すなわち神の支配が弟子たちと常にあることを明確にして恐れを取り除きます。そして弟子たちを罪の赦しのために派遣されました。罪の赦し、すなわちイエスご自身がその公生活の中でしばしば行われたように、共同体の絆へと回復させるために、神の慈しみによって包み込む業を行うことであります。

 福音に記されたトマスと主との関係は、神の慈しみは完全な存在であり、常に私たちに向けられているのに、それを拒むのは人間の側の不信仰であることを浮き彫りにします。信じようとしないトマスを、それでもイエスは愛と慈しみで包み込もうとなさいます。放蕩息子の父親に通じる心です。

 この世界には、神の愛と慈しみが満ちあふれています。互いに連帯し、支え合い、賜物である命を尊重して生きるように、と私たちを招く、神の愛と慈しみに満ちあふれています。それを拒絶するのは、私たちの側の不信であり、怠慢であり、悪意であります。

(編集「カトリック・あい」=「いつくしみ⇒慈しみ」「いのち⇒命」「ゆるし⇒赦し」など表記を、本来の言葉の意味を表し、より文章を理解しやすく、読みやするため、ひらがなでなく、教科書や新聞などで一般的に使われている当用漢字を使用。たとえば、「慈しみ」の「慈」は、「心」と音符「茲(シ)」からできており、仏教用語。語源的には「友」「親しきもの」を意味する mitraという単語から派生したもので「真実の友情」「純粋の親愛の念」を意味しています=ブリタニカ国際大百科事典小項目事典)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年4月23日