・教皇、聖職者の性的虐待に対処する規範徹底へ改定自発教令を発出

(2023.3.25  Vatican News)

 教皇フランシスコが25日、2019 年5月に出された自発教令「Vos estis lux mundi (あなたがたは世の光)」の改訂版を発出された。4月30日に発効する。

 使徒的書簡の形で2019年5月に発出されたこの自発教令は、教会における信徒たちなどへの虐待や暴力に対処する手続きを明確にし、性的虐待などの通告を義務づけるなど、世界の司教たち、修道会総長たちのとるべき姿勢を徹底することを目的としていた。この4年間に行われた関連の制度改革と整合させ、対象をバチカンが承認した信徒の国際的な協会の指導者などに対象を広げ、未成年者および脆弱な成人に対する性的虐待を防止および対処するための教会の規範の徹底を図るのが狙いだ。

New norms for the whole Church against those who abuse or cover up

*一般信徒の国際的団体の指導者も規範の対象に

 改訂版で示された現行教令からの最も重要な変更は、「司教、修道会総長、および特定の教会または高位聖職者を担当する聖職者の責任」を規定した条項に関するもの。現行の書簡になかった「使徒座によって承認または設置された一般信徒の国際的な団体の長、あるいは長であった一般信徒は、ポスト在任中に行われた行為に対して[責任がある]」と明記した。

 また、2019年からこれまでに導入された関連の規範、制度改革と整合性を図るため、さまざまな修正がなされているが、その中には、自発教令「 Sacramentorum sanctitatis tutela(2021 年に修正された規範)」、教会法典の第 6 巻に加えられた変更(2021 年改定)、およびローマ教皇庁に関する新憲章「 Praedicate Evangelium (2022 年公布)が含まれている。

 

*「脆弱な成人」に対する虐待の報告の対象に

 また、現行教令の修正個所として注目すべき修正の 1 つは、規範に「脆弱な成人」を含めることに関するものだ。現行教令では、報告を上げるべき対象として、「未成年者または脆弱な人物との性行為」と表現していたが、これを、「未成年者、または習慣的に思考・判断能力が不完全な人、または脆弱な成人との間で犯された十戒のいましめに対する犯罪」としている。

 もう 1 つの変更点は、虐待の疑いについて報告した人物の保護に関するものだ。現行教令で「虐待の疑いを報告した人」に、沈黙を強制してはならない、としているが、「心を傷つけられたと訴えた人および目撃者であった人」に対象を広げた。一方で、「関係者全員の名声とプライバシーの正当な保護」と、有罪か否かの判断のために調査を受けている人々の「推定無罪」としての保護の要請を強調している。

 また、現行教令で、教区は、一般の人々が利用しやすい、虐待の訴えを受ける「安定したシステム」を運用しなければならない、としていたのを、「組織、あるいは事務局」を…と明確化。訴えられた虐待の案件の捜査は、虐待が起きたとされる場所を管轄する「司教あるいは直轄権を持つ聖職者の責任の下に」なされることも明記している。

 

 

*「職権乱用」による性的暴力、ハラスメントも対象

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2023年3月26日