・教皇、米誌インタビューで、”中国問題”と”ロシアのウクライナ侵攻問題”で自身の立場説明(Crux)

(2022.11.28 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ 発– 教皇フランシスコは、28日公表されたイエズス会の雑誌Americaとのインタビューで、自身の中国に対する”対話路線”とウクライナ軍事侵略を続けるロシアへの”非難躊躇”を擁護する姿勢を示した。

 中国は先週、自国における司教任命に関するバチカンとの暫定合意を無視する形で、教皇が認めていない教区の補佐司教に、”地下教会”の司教を就任させた。これに対して、バチカンは26日に声明を発表し、このような中国側の行為は暫定合意と対話路線に反するものであり、長年にわたって現地当局が司教に逮捕・拘禁などさまざまな圧力を加えた結果もたらされたもの、と強く批判している。

 暫定合意は、その具体的な内容が4年たった今も明らかにされず、合意後に”地下教会”などへの弾圧を強める中国側に利用されている、との批判も関係者の間にある中での、今回の中国側の行為とバチカンの対応が注目を浴びている。

(このインタビューは22日に行われたもので、中国で、バチカンが認めていない教区、江西教区の”補佐司教就任式”が行われたのは2日後の24日。バチカンがそれに対する批判声明を出したのは、さらに2日後の26日であり、教皇の以下の発言はこうした”新事態”を踏まえての発言でないことに留意する必要がある=「カトリック・あい」)

 中国への対応について聞かれた教皇は、「それは、語るか、黙っているかの問題ではありません。そのような問いかけは現実的でない。問題は、対話をするか、しないか、であり、そのことについて対話することは可能です」とし、教皇ヨハネ・パウロ二世の下で1979年から1990年まで国務長官を務めたカサローリ枢機卿に言及した。

 枢機卿は共産圏に対する”東方政策”の立案者だったが、当時は「(ロシアなど共産圏の国々に)妥協しすぎだ」と批判する声が多かったが、そのソフト路線が「1989年のベルリンの壁崩壊まで教会が活動を続けるのに役立った」という歴史家の評価もある。

 教皇は「彼は、可能なことをした。ゆっくりと、共産圏だった国々でカトリックの集合体を再建することができました」と述べ、「対話は、最善の外交の道です」とし、中国との関係についても「私は対話の道を選びました。歩みは遅いし、失敗もあるし、成功もある。でも、それ以外の道を見つけることができないのです」と語った。

 また、ウクライナ軍事侵略に関してロシアやプーチン大統領に対する直接的な批判を避けているように見られることに関しては、「私がウクライナについて話すとき、殉教した人たちについて話します。殉教者がいるなら、彼らを殉教させる人がいる」とし、これらの残虐行為の責任を負っている軍隊について多くの情報を受け取っており、「一般的に戦争の残虐性」について批判している、と述べた。

 さらに、一般的に言って、「おそらく最も残酷なのは、チェチェン人やブリヤート人など、ロシアの伝統に属さない人々」だが、「ウクライナ侵略の責任を負っている勢力は『ロシア国』であることは、非常に明確です」と言明。「私が誰を非難しているのかはよく知られていますが、あえて名前を出す必要はありません。相手を特定して怒らせないように。それよりも一般化して非難をする形を取ります」と語った。

 戦争の責任者としてプーチンを直接、名指しすることを避けていることについては、「そうする必要がないので、しないのです… (彼が責任者であることは)すでに知られていることです」とし、「実名を挙げなくても、私の立場は誰でも知っています」と述べた。

 そして、バチカンの立場は、「平和を求め、理解を求めること。バチカンの外交はこの方向で進んでいます」と強調。軍事侵略を止めるために調停役を希望するバチカンの意思を繰り返した。

 このインタビューの中で教皇は、中国、ロシア・ウクライナ問題以外にも、米国社会ににおける二極化、人種差別、妊娠中絶、教会における信者と司教の信頼喪失など、幅広い問題に触れた。

 米国社会の二極化について、教皇は「二極化は、カトリック的ではありません。カトリックの教えの本質は”両方”です。二極化によって、分断的な考え方が生まれ、ある人には特権が与えられ、他の人は置き去りにされてしまいます。カトリックは、常に、違いを調和させる立場を取ります」と説明した。

 米国の司教会議に対する信頼の喪失について尋ねられたある調査では、信者のわずか 20% が「非常に信頼できる」と答えたという結果があるが、教皇は、「司教協議会と信者の関係に焦点を当てることは、誤解を招きます。司教協議会は司牧者ではない。司牧者は司教です。司教協議会だけに注目すると、司教の権威を損わせる危険があります」とし、司教協議会は司教たちの連帯を促進するという点で重要だが、「それぞれの司教が”羊の群れ”の司牧者なのです」と強調した。

 妊娠中絶については、「まだ生まれていない胎児が『生きている人間(living human being)』であることは、科学的にも議論の余地がありません。胎児を『人(person)』と呼ぶことは議論の余地がありますが」としたうえで、「中絶は犯罪であり、問題解決のために人間を排除してしまうことが正しいのでしょうか? 問題解決のために”殺し屋”を雇うのは正しいのでしょうか?」と問いかけられた。そして、中絶論争が問題になるのは、「『人を殺すこと』が政治問題に変わる時」、あるいは、「司牧者が『政治的カテゴリー』を使ってこの問題について話す時」だ、と指摘した。

 また、聖職者の性的虐待についても触れ、それが司教に対する訴えを含む場合には通常よりもさらに透明性が求められる、と述べた。米国社会に残る人種差別は「神に対する耐え難い罪」と批判。

 女性の司祭叙階については、「以前も申し上げたが、神学的な観点からは不可能」とする一方で、「教会の中で、女性が指導的立場や管理職に就くために、多くの場が作られる必要がある」ことを確認した。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年11月30日