♰「イエスのように逃避を強いられた人々に私たちがすべき10の行い」-9月の「世界移民・難民の日」の前に

(2020.5.15 バチカン放送)

 教皇フランシスコは15日、カトリック教会の「世界移民・難民の日」(9月27日)に先立つメッセージを発表された。

 第106回目となる今年の「世界移民・難民の日」のテーマは「Like Jesus Christ, forced to flee.Welcoming, protecting, promoting and integrating internally displaced persons(イエス・キリストのように逃避を強いられた人々。 国内避難民を進んで受け入れ、守り、励まし、共に歩む=「カトリック・あい」訳)」。

 教皇は、このメッセージを、紛争、貧困、気候変動によって国内で住まいを追われた何百万の男女、子供たちに捧げた。そして、窮状をさらに悪化させている新型コロナウイルスの大感染の中で、そうした危機の結果としての極度の危険、放棄、疎外、拒絶を体験している、全ての人々に注意を向けられた。

 幼子イエスが両親と共にエジプトに逃避された際に体験した避難民の状況に、教皇は「残念ながら、今日も多くの家族が直面しています」と指摘され、飢餓や戦争、極度の危険の中で、安全で尊厳ある生活を求めて避難民となった人々、その一人ひとりに、ヘロデの時代に逃避を余儀なくされたイエスの姿を重ねられた。

 そのうえで、教皇は、避難民たちの顔の中にイエスの御顔を認め、具体的に奉仕するために、2018年の「世界移民・難民の日」で示した「進んで受け入れる」「守る」「励ます」「融和する」という4つの行いに、今回、次のように、それぞれ2組の動詞からなる6つの行いを加えられた。

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【「理解する」ために「知る」】

 教皇は「知ることは、他者を理解する上で必要な第一歩です」とされ、エマオで弟子たちに自ら歩み寄り、旅を共にされたイエスのように、「移民・難民一人ひとりとの出会いによって、相手を知り、その背景を理解することができるのです」と説かれた。

【「奉仕する」ために「隣人となる」】

 道端の瀕死の負傷者を見て憐み、介抱した善きサマリア人のたとえを示され、「他者への怖れや偏見を超えて隣人となり、奉仕することの大切さ」を説かれた。そして、「隣人に寄り添い奉仕することは、時にリスクをも伴うこと」と語られ、新型ウイルスの大感染が続く中で献身的に働く多くの医師や看護師らを思い起こされた。

【「和解する」ために「耳を傾ける」】

 「和解と救いをもたらす愛は、相手に耳を傾けることから始まります」とされた教皇は、「今日の世界にはメッセージがあふれているのに、それに耳を傾ける姿勢が、人々から失われつつあります」と指摘、「耳を傾けることで、切り捨てられた人々や、自分自身、そして、慈しみ深い神と、和解するきっかけを得ることができるのです」と強調された。

【「成長する」ために「分かち合う」】

 「神は、私たちの地球の資源が、限られた人々のためにだけに恩恵をもたらすことを望まれません… 誰一人締め出すことなく、共に成長するために、分かち合うことを学ばねばなりません」とされたうえで、「今回の新型ウイルスの世界的な大感染は、私たちに、皆、同じ一つの船に乗り合わせているのだ、ということを、改めて気付かせました」とし、「真の成長のためには、イエスに5つのパンと2匹の魚を差し出した少年のように、持っているものを互いに分かち合わねばなりません」と説かれた。

【「伸ばす」ために「関係を持つ」】

 また、大感染は「私たちに共同責任の大切さを再認識させ、すべての人の貢献によってのみ、私たちが危機に立ち向かえることを教えた」とし、「すべての人が必要とされ、新しい形の受容と、兄弟愛、連帯が可能な世界を切り開く」ように促された。そして「『他の人たちに奉仕したい』という強い気持ちが、その人たちの持つ真の豊かさを見るのを妨げることがあります。私たちが助けようとする人々の持つ豊かさを伸ばしたい、と本当に思うなら、彼らとしっかりとした関係を持ち、彼らが自分の救いの主体者となるようにしなければなりません」と述べられた。

【「築く」ために「協力する」】

 現在の状況の中で、エゴイズムを排し、すべての人が協力する必要を強調。「人類の共通の家を守るために、国際的な協力と連帯、皆が参加できる地域の取り組みを確実にする努力」を強く求められた。

 最後に教皇は、難民・避難民、また試練を受けている人々を、エジプトへの避難において幼子イエスと聖母を守った聖ヨセフの保護に託して祈られた。

(編集「カトリック・あい」)

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2020年5月16日